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【判例】使用者は二度の競業避止協議違反を理由として、労働者へ二度違約金を支払わせることができるか?(2018年5月30日)

案例:

鐘氏は2011年8月22日上海A電子有限公司(以下A公司)に入社し、営業職に赴任した。労使双方は労働契約及び秘密保持、競業避止契約に署名し、鐘氏は自身が離職した日から起算して2年間、競業避止義務を履行することで合意した。競業避止補償金は契約によって每月1000元と定められ、鐘氏の在職期間中にその全部または一部を支払うこととなっており、鐘氏はこれを確認した上で署名した。また、同契約には、鐘氏が在職している間にA公司が競業避止補償金を全額支払い終えたときは、A公司は鐘氏の離職後に競業避止補償金を支払わなくてよいと定められていた。

2012年1月17日、鐘氏は競業避止補償金13000元を受け取り、これを確認した。2013年2月5日、鐘氏は競業避止補償金7000元を受け取り、これを確認した。2013年5月23日、鐘氏は一身上の都合により、A公司へ辞意を表し、辞表を提出した。鐘氏は2013年5月23日以前に、山東省済南市にB公司を設立し、同社の法定代表者に就いていた。

2014年3月29日、鐘氏はC公司を登記し、同社の法定代表者となった。2013年11月6日、A公司は上海市某区の労働人事争議仲裁委員会へ仲裁を申し立て、鐘氏に対し競業避止義務の継続履行と、競業避止に対する違約金500,000元の支払いを求めた。仲裁委員会はこれを認め、鐘氏へ双方が署名した競業避止契約を2015年1月23日まで継続して履行し、A公司へ競業避止契約の違約金100,000元を支払うよう命じた(この裁決は既に発効している)。

2014年7月10日、A公司は鐘氏の競業避止義務継続履行について、上海市某区労働人事仲裁委員会へ再び同じ内容の仲裁を申し立て、仲裁委員会は鐘氏へA公司に対し違約金100,000元の支払いを命じた。鐘氏はこれを不服として、上海市某区人民法院へ提訴した。

労働者側は、「競業避止補償金の支払は労働契約の解除以降になされるべきであり、労働者と使用者が自発的に在職期間に(補償金を)支払うと約定してはならない。私は離職後に競業避止補償金を受け取っていないから、競業避止契約を履行する必要はない」と主張した。

使用者側は、「在職期間中の競業避止補償金の支払いは、労働契約において双方合意により定めたものであり、会社は既に競業避止補償金を支払ったのだから、労働者は競業避止違反に対し相応の責任を取るべきである」と主張した。

争点:

労働者が二度競業避止契約に違反したときは、二度とも違約金を支払わなければならないか?

判決:

法院は審議の結果、「使用者と労働者は労働契約において、使用者の商業的秘密及び知的財産権に関する秘密保持契約を約定することができる。秘密保持義務を負った労働者について、使用者は、秘密保持契約中に競業避止約款を盛り込み、労働契約の解除及び終了後も、競業避止期限内に労働者へ経済補償金を支払う(事によって競業避止義務を履行させる)ことができる。労働者が競業避止義務に反したときは、約定された内容に応じ使用者へ違約金を支払わなければならない。

鐘氏は入職当日にA公司と秘密保持、競業避止契約を締結している。その後、鐘氏はA公司に対しこの契約を解除する旨を通知していないから、鐘氏は秘密保持、競業避止契約を履行する義務を有する。しかしながら鐘氏は辞意を表す前に、上海市外にてA公司の同業他社に該当する法人を設立し、その法定代表人となっている。A公司はこれをもって仲裁を申し立てたものであり、『鐘氏はA公司へ違約金100,000元を支払え』との裁決は既に発効している。

2014年3月29日、鐘氏は南京市で更にA公司との同業他社に該当する法人を設立し、その法定代理人となっている。鐘氏は双方で合意した競業避止契約に再び違反したものであるから、その行為は非常に悪質なものであると言え、A公司の主張は法的根拠を有する」とした上で、違約金の額を計200,000元と酌量した。

分析:

この案件は、競業避止に関する紛争の典型例である。まず、競業避止補償金の支払いについて、法律では労働契約の解除及び終了後毎月支払うものと明記されており、また「競業避止協議(契約)」において、労使双方で具体的な支払い方法、時間、金額を定めることができる。使用者としては、もし使用者が労働契約解除後に毎月競業避止補償金を支払わなかった場合、労働者は競業避止協議を解除することができるという点に注意しなければならない。また、当方としては当然勧められるものではないが、もし労働契約期間中に報酬の一部として競業避止補償金を支払う場合は、使用者はこれを約款として明記すれば、労働者の事後否認を防ぐことができる。

次に、会社側が労働者の違約行為を知った後でも、その権利は遡及して保護される。本案件において、労働者側は使用者と競合他社関係にある法人を二社設立している。使用者の(B公司を設立した際の)一度目の仲裁申し立てがあった時、労働者側は違約金を納めたものの、労働者側が(C公司を設立し)再び競業避止契約に反したため、使用者は再び違約金の支払いを求めたものであるから、法院はこれを認めたのである。

最後に、労働者が競業避止協議に反して使用者へ違約金を支払ったあと、使用者が競業避止義務の継続履行を求めたときは、労働者は「競業避止協議(契約)」を解除することはできない事となっている。