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【判例】使用者が私的に撮影した動画を、労働紛争の根拠とできるか?(2018年7月30日)

案例:

2014年11月1日、周氏は某家電会社で勤務を始めた。同社の規定には、「事務所、トイレ、生産現場、食堂、倉庫などの非喫煙区域で喫煙した従業員は、直接労働契約を解除する」とあった。

2018年2月、家電会社は日常の点呼中に周氏が生産現場のトイレでタバコを吸っているところを発見したため、すぐに動画を撮ってこれを証拠とし、周氏がトイレでタバコを吸った行為は大きな潜在的危険を孕んだ行為であり、重大な規律違反に該当するとして、周氏との労働契約を直接解除した。

周氏はこれを不服として、仲裁委員会へ違法な労働契約解除に対する損害賠償金の支払を求めた。

判決:

仲裁底は会社側へ、周氏に対し違法な労働契約解除に対する損害賠償を支払うよう命じた。

分析:

「最高人民法院労働争議案件審理における法適用に関する若干問題への解釈」第十三条には、使用者による免職、除名、辞退、労働契約の解除、労働報酬の削減、労働者の勤続限度の設定などにより労働紛争が発生したときは、使用者がその証明責任を負う、と記されている。

また、「最高人民法院民事訴訟における証拠に関する若干規定」第六十八条によれば、他人の合法的権益を侵害し、及び禁止性規定に抵触する方法で得た証拠は、案件における事実の根拠とみなさない」とある。

上述の規定を総合すると、本案権においては使用者に証明責任があり、また会社側が証拠として提出した動画はこの案件が事実であることを証するのに重要な意義があり、また会社側の提出した唯一の証拠であるけれども、この証拠は違法な手段をもって得たものである。このような状況下では、当然に事実の追求と手続きの正当性の間に衝突が生じる。

仲裁委は、会社側が提出した労働者がトイレでタバコを吸っていたとする証拠は、点呼中に周氏がトイレでタバコを吸っていたところを撮影した動画であった。この行為は確かに従業員を規範化する目的ではあるけれども、周氏のプライバシーを侵害したものであり、かつ証拠の取得方法も公序良俗に反するものであったから、本案件の事実を証する証拠とはならない、としている。

注意点:

従業員の規律違反行為に対し証拠を提出する際には、その合法性に留意すべきである。また、労働契約解除に至る規律違反の規定については、しっかり「情状」に鑑みたかも注意しなければならない。

本案件では、会社側は周氏が初めて、偶発的に行った喫煙行為に対し、安全を脅かすことにはならなかったにも関わらず、合理的な救済機会を与えぬまま、規定制度に則り直接的に周氏を解雇した。この処罰は苛烈に過ぎ情状に欠けるもので、法的リスクを負うだけでなく、調和の取れた労使関係の確立にも悪影響を及ぼすものであると言える。