ホーム > HRニュース > 中国HRニュース> 【判例】病気休暇中に旅行し写真をアップロードした従業員を解雇できるか?(2018年7月30日)

【判例】病気休暇中に旅行し写真をアップロードした従業員を解雇できるか?(2018年7月30日)

案例:

宋氏は2012年7月19日上海市内の某社に入社し、2017年2月16日より病気休暇を取っていた。病名は腰痛、ヘルニア、リウマチなどの整形外科系疾患となっていた。

2017年4月26日、会社側は彼女が提出した病気休暇の証明書と実際の健康状況が異なっており、不誠実な詐欺行為による重大な規律違反があったとして、彼女との労働契約を解除した。宋氏はこれを不服として、上海浦東法院へ起訴した。

審議において、被告(会社側)は証拠として宋氏のWechatのコピー及び証書を提出し、彼女が2016年3月に労災が発生してから2017年4月26日に労働契約を解除するまでの間、頻繁に物味遊山に出かけており、病気休暇の証明書と実際の健康状態が一致していないと主張した。また、休暇期間の行為を友人たちに見せびらかすのは、会社の経営管理にも悪影響を及ぼすとした。

判决:

法院は審理の結果、宋氏に重大な規律違反があり、労働契約の解除に異論の余地はないとして、原告の違法な労働契約解除に対する損害賠償金請求を棄却した。

分析:

病気休暇中の従業員が旅行に出かけ会社を解雇される光景は、今に始まったものではない。

休憩や休暇は労働者の権利ではあるけれども、休暇取得を欲張ると、得るものよりも失うものの方が大きくなってしまう。休暇を取得する際には、以下の点に注意されたい。

01.誠心誠実が肝心、職場で嘘の休暇を取ってはならない

労働者が取得できる休暇には、出勤日に定められた休暇、毎週定められた休日、法定祝日、その他親族訪問休暇や年次有給休暇、病気休暇、私用による休暇などがある。

勤め人は一般的に忙しく、偶発的な出来事で何日も休まなければならなくなったり、長く休みたく思うことがままある。その為に嘘の理由で休みを取得したり、ついには病気を捏造して休暇を取得するケースも現れるのである。

実際のところ、このような会社の規定制度を無視した「詐欺的休暇」は決して取得すべきではない。一旦使用単位にばれたが最後、食い扶持を確保するのは困難となるであろう。

休暇を取得する際に注意すべきは、使用単位へ「休暇願い」を提出しないのは不誠実な行為であり、これが表面化すると、解雇のリスクを背負うだけでなく、刑事的責任を追求される可能性も出て来るのである。

病気休暇中の従業員は病状の如何に関わらず、原則的に外出外遊をしてはならない。もし外出外遊が必要なときは、使用単位へ説明し了解を得る必要がある。

外出外遊の他に、兼職も病気休暇中の従業員が慎まなければならない行為である。もし病気休暇中の従業員が兼職し収入を得ていたときは、使用単位は規定制度に則ってその従業員を処理することになる。また、自己都合による休暇取得の場合でも、嘘の理由を捏造しないようにしなければならない。

現在、「労働契約法」は労働者の権利の保障と保護を強める方向で動いているが、一部労働者には権利の濫用が見られる。

実際に、使用単位と労働者の相互信用こそが調和の取れた労働関係の基礎となっているのである。勤め人である以上、Webサイト上に乱立する「休暇攻略法」などを用いて、信用も品格も失い、「身から出た錆」のような結果を招くような真似をしてはならない。

02.休假の前には、しっかり手続きを取る

休暇の取得は使用単位の各部署(の業務)に関係する。従業員に言わせれば、繁忙期であっても休暇の取得は免れ得ないものなのだろうが、休暇を取得する際には必ず正式な手続きを踏まなければならない。

病気休暇を取得する際にはそれに関する——医師の発行する正式な診断書及び病気休暇に関する証明書を用意しなければならない。一般的には、病気休暇の証明書には患者の氏名、診療科、診断結果及び休暇日数が着されており、かつ医師の署名及び病院の捺印がなければならない。

私用での休暇には、賃金が支払われない。特殊な状況にあって、その職位を離れなければならないときでも、その許可を出すのは使用単位側なのである。

使用単位は従業員の具体的な休暇事由をもとに許可を下す。休暇を申請する際には、必ず使用単位の規定制度に基づいた手続きを取り、自己の判断で勝手に休暇を取ってはならない。

また、有給休暇や婚姻休暇取得のときは使用単位と話し合って決定できるが、病気休暇は使用単位が批准できないものなのである。

もし従業員が手続きを取らず勝手に職位を離れたり、許可を得ず本来の休暇期間を超えて休んだときは、無断欠勤と見なされるので、使用単位は欠勤中の賃金を支払わなくても差し支えない。

03.休暇後の賃金計算に注意

「働かずとも賃金を得られる」のは、労働法が労働者に対して定める休暇に関する一種の権益保護だと言えるが、これは特定の状況下にあってのみ適用される。

法定祝日(元旦、春節、清明節、労働節、端午節、中秋節、国慶節)は賃金が発生する休暇である。また、有給休暇、婚姻(葬儀)休暇、男性従業員の(配偶者の出産に対する)看護休暇もまた、賃金が発生する。

また、労災が認められた従業員は、 停工留薪期 の間は以前と変わらない待遇が受けられ、月単位で手当が支払われる。

従業員が病気もしくは業務によらない負傷により療養している間、使用単位は労働契約を解除できず、また法に基づき病気休暇手当ないし疾病救済費を支払わなければならない(この額は当地の最低賃金を下回っても良いが、最低賃金額の80%を下回ってはならない)。

出産期にある女性従業員に対して支払われる生育手当は、生育保険に加入している者に対し、その使用単位の昨年度平均賃金を基準として生育保険基金より支払われる。その従業員が生育保険に加入していないときは、産休前の賃金を基準として使用単位がこれを支払うこととなる。

注意:私用での休暇では賃金は発生せず、休暇は日及び時間単位で算定される。休暇の場合の一日の賃金控除額は、月基本賃金/21.75日で求める。時間単位で算定するときは、月基本賃金/21.75日/8時間となる。

休暇を取った従業員の賃金を算定するときは、間違いのないよう適時確認をしなければならない。

04休暇の申請の際には、その根拠を保持しておかなければならない。

従業員本人による休暇はもちろん、急用及び急病により自身で休暇の申請ができず同僚が代わりに手続きをした場合でも、出来る限り書面による休暇申請手続きを行い、これをコピーして保存すべきである。これにより休暇申請の証拠が無い、休暇が無断欠勤扱いされる、といったことを理由として業務や賃金などに重大な影響が出る事態を避けることができる。

労働争議が発生した場合は、休暇申請書などの証拠が権利保護のために重要な役割を果たすのである。