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【判例】「連座制」を定めた規定は合法か?(2019年2月27日)

案例:

布氏は某日用品会社の販売員であり、鐘氏はその直接管理者である。2015年10月、会社側は布氏が勝手に値上げして顧客へ物品を販売し、その差益を自分のものとし、取り決められたインセンティブ外の利益を得ていたことを知った。この行為は帳簿上では確認できなかったが、顧客からの通報によって発覚した。

会社側はこの行為を重大な就業規則違反として、これに基づき布氏との労働契約を解除した。

しかし会社側は同時に、民主的な手続きによって定められた社内規定である「中間以下の管理職に対する問責規則」中の、「従業員が重大な規定制度違反により離職したときは、会社はその直接的管理者を解雇する権利を有し、また経済補償金を支払わないものとする」との規定に基づき、布氏の直接管理者であった鐘氏との労働契約を解除した。

鐘氏はこの約款は違法であり、これに基づく労働契約の解除は違法であるとして、会社側へ労働契約解除にかかる経済補償金の支払いを求めた。

判決:

仲裁委は鐘氏の主張を認めた。

分析:

「労働契約法」第四条には、「使用単位が労働報酬、勤務時間、休憩休暇、労働安全衛生、保険福利、従業員研修、労働規律及び労働目標管理等労働者の密接な利益に直接関わる規則制度又は重要事項を制定、改正又は決定する場合は、従業員代表大会又は従業員全体で討議し、方案及び意見を提出し、労働組合又は従業員の代表と平等な協議を経て確定しなければならない。規則制度及び重要事項決定の手続きが適切ではないときは、労働組合及び労働者は使用単位に対しにこれを提起、協議し、改正する権利を有する。使用単位は、労働者の密接な利益に直接関わる規則制度及び重要事項の決定を公示または労働者へ周知しなければならない」とある。

また、最高人民法院「労働争議案件審議における法適用に関する若干問題の解釈」第十九条では、「使用単位が『労働法』第四条の規定に基づき、民主的手続きを経て定めた規章制度で、国家による法律、行政法規及び政策規定に反せず、また労働者へ周知されているときは、人民法院はこれを労働争議案件の審議において証拠として認める」とされている。

ゆえに、規章制度が合法であるということは、その制度の内容や形式において瑕疵が存在しないことを意味する。すなわち、民主的手続きを経て定められ周知されており、かつ国家の定める法律、国務院の定める行政法規及びその他の政策規定に違反していない、ということである。ここで言う「違反していない」には2つの意味が含まれる——強行規定に反していないこと、そして法律の立法趣旨に反していないこと、この2つは、どちらも欠かすことができない。

本案件中の「中間以下の管理職に対する問責規則」は、民主的手続きを経て定められかつ労働者に周知されており、一見すると合法的なように見える。

しかし、その内容を見てみよう。責任主義、刑罰比例の原則は我が国における法律の基本的精神であるが、当該規則制度では上級職にある者が部下の過失を見過ごした場合、部下のミスについて連帯責任を負うとされている。しかしある事案について上級職が下級職と一緒に責任を問われ、部下の過ちに対し上級職が無限に責任を負ういわゆる「連座制」が、現代法の観念から逸脱することは明らかである。ゆえに、本案件中の規則制度にはその合法性に問題があると言え、鐘氏との労働契約解除は違法となる。

もし鐘氏の上級主管としての管理に問題があり、それが布氏の違反行為を招き会社へ損害を与えたのならば、鐘氏はこれに対する責任を負わなければならない。しかし、会社側が上級主管へ毎回商品販売価格を確認するよう求めるのは無理があるため、この場合鐘氏は、注意義務違反の責任を負うのが妥当であろう。