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【判例】労働者は、使用者へ申し出た退職申請を撤回することはできるか?(2019年2月27日)

【判決要旨】

労働者は一方的に労働契約を解除する権利を有する。労働契約の一方的解除権は形成権の範疇であり、労働者が使用単位へ退職を申し出、使用単位がこれを受け取った段階で即労働契約解除の法的効果が発生する。労働者が使用単位へ退職を申し出た後、使用単位の決済が降りる前にこれを撤回しようとしても、労働契約解除の意思表示にかかる法的効力は無効とはならない。

【案例】

陳氏は2016年3月8日、正大公司へ退職を申し出たが、2016年3月25日に退職の撤回を申請し、2016年4月7日以降は出勤しなかった。

その後、陳氏は正大公司へ賃金と職位配置を求めたが、会社側はこれに同意せず、2016年7月25日書簡にて「双方間の労働関係は陳氏の退職申し出により2016年4月8日に解除されている」と返答した。

その後双方間に争いが発生し、陳氏は「正大公司は退職の申し出を承認しておらず、離職前30日以内に退職を撤回しているから、一方的な契約解除は効力を生ぜず双方感の労働契約はまだ解除されていない。正大公司の書簡による労働契約解除は違法で、その損害を賠償すべきだ」と主張した。

【判決】

北京市東城区人民法院は、「陳氏は2016年3月8日会社側へ退職を申し出、一方的に労働契約解除の意思を示しており、かつ会社側がこれを受け取っているため、陳氏の退職の申し出を撤回することはできない」として、双方間の労働契約は陳氏が離職した2016年4月7日をもって解除されているとの判断を下した。

これに対して陳氏は控訴したが、北京市第二中級人民法院は、「陳氏が2016年3月8日正大公司へ退職を申し出た行為は、労働者が一方的に労働契約を解除する権利を行使したものであり、これは使用単位の同意を構成要件としないため、使用単位が退職の申し出を受けた後に退職を撤回することはできない」として、陳氏の訴えを退けた。

【解説】

1. 労働者が労働契約を一方的に解除する権利は、形成権に属する。

「労働契約法」第三十七条には、労働者は30日前に(試用期間の場合は3日前に)書面により使用単位へ通知すれば、労働契約を解除できる、とある。この条項は労働者へ一方的に労働契約を解除できる権利を付与したものであり、この権利は使用単位の承認を必要としない、典型的な形成権である。

2. 同条に言う「30日前」「3日前」(の予告)とは、従業員が労使双方で署名した労働契約の履行に付随する義務である。この「30日前」「3日前」(の予告)は、使用単位の正常な経営上の必要性に応じて定められたものであり、使用単位が人員を補充するための法により定められた緩衝期間であると言える。

3. 労働者が「労働契約法」第三十七条に基づき一方的に労働契約を解除する権利を行使した場合、使用単位へ通知した段階で即時に法的効果が発生するため、これを撤回することはできないのである。