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【判例】 試用期間中に4回遅刻したことを理由とした、妊娠中の労働者の解雇は合法となるか?(2019年4月29日)

案例:

関氏は2016年7月11日広州市内の某服飾会社へ入社し、商品主管職に就いていた。労働契約の期間は2016年7月11日から2019年7月11日まで、試用期間は2016年7月11日から2017年1月10日までとなっており、双方間で「試用期間採用条件説明書」を交わしていた。

「試用期間採用条件説明書」には、「以下の状況にあるときは、会社は採用条件を満たさないと見なし、関氏との労働契約を解除する権利を有するものとする……(10)試用期間内に法に定めない理由により累計2日以上休暇を取ったとき、または3度以上遅刻したとき、または無断欠勤をしたとき……」とあった。

2016年12月6日、会社側は関氏へ「試用期間満了証明書」を発行し、関氏へ試用期間の勤務状況及び資料を総合的に調査判断した結果、正式採用の条件を満たさないことを告知した上で、2016年12月6日の試用期間満了をもって労働関係を解消した。このとき、関氏は妊娠していた。

2016年12月8日、関氏は広州市労働人事争議仲裁委員会へ仲裁を申し立て、会社側へ労働契約に基づく労働関係の履行と職務、業務内容、賃金(7500元/月)の原状回復を求めた。

2017年1月16日、広州市労働人事仲裁委員会は、関氏の仲裁請求を棄却した。関氏はこれを不服として、法院へ提訴した。

関氏は、「妊娠していることを会社側へあらかじめ告知している状況下にあって、会社側が2016年12月6日に突然試用期間において正式採用の条件を満たさなかったことを理由として労働関係を解消したことは、「労働法」及び「女職工労働特別規定」第五条に反する。また、遅刻した時間はわずか数分で、業務に支障をきたしていないにも関わらず、会社側は(大幅な)遅刻と同じ(厳しい)処罰を与えた。また、社内にはより酷い遅刻を何度も繰り返している従業員がおり、公平性を欠く」と主張した。

判決:

一審は、「試用期間満了証明書」には関氏の署名があり、職位にそぐわない状況(正式採用の条件)を約定してあるから、会社側はこれを管理の依拠とすることができる。関氏には「試用期間満了証明書」10項に定める状況、すなわち3度以上の遅刻があった事実があり、ゆえに会社側が双方間の労働契約を解除したことは『中華人民共和国労働契約法』第三十九条の規定により合法である」として、関氏が求める労働契約の継続履行及び待遇、賃金の原状回復について、事実証拠及び法的根拠を欠くとして訴えを退けた。

また、「本案件は30日前までの書面による労働契約解除の予告が必要な状況になく、また会社側は妊娠、出産を理由として労働契約を解除したのではないから、『中華人民共和国労働法』第二十六条及び『女職工労働特別規定』第五条は適用されない」とした。

一審判決後、関氏はこれを不服として広州市中院へ控訴した。

二審は、「『中華人民共和国労働契約法』第四十二条には、『使用者は、女性の職工が妊娠、出産、授乳期にあるときは、第四十条、第四十一条に基づき労働契約を解除してはならない」と定められているが、『中華人民共和国労働契約法』第三十九条には、『使用者は、試用期間内の労働者について採用条件に適合しないことが証明されたときは、労働契約を解除できる』とある。ゆえに、本案労働争議の争点は会社側が試用期間の採用条件を満たさなかったことを理由とした労働契約の解除が合法か否かという点であり、会社側が関氏との労働契約を解除する際に関氏が妊娠していたか否かは本案件の争点とはならない。

関氏は勤怠記録から、2016年9月10日までに4度遅刻しているから、会社側の定める試用期間内の採用条件を満たしておらず、会社側による労働契約解除は違法とはならない」として、関氏の控訴を棄却した。

分析:

本案件において、試用期間内に4度遅刻しただけで当該従業員との労働契約を解除する、というのは確かに苛烈に過ぎるが、詳細を見ると会社側は違法行為を行っていないことがわかる。

「労働契約法」第三十九条には、「労働者が下記の状況にあるときは、使用者は労働契約を解除することができる(一)試用期間中に労働者が採用条件を満たさないと証明されたとき」とある。すなわち、従業員が正式採用条件を満たさないときは、会社側は合法的に労働契約を解除できる、ということである。

このことから、予め従業員と約定した具体的な採用条件が大変重要になることがわかる。道理は至極簡単だが、もし採用条件すら定めていない場合、当該従業員が採用条件を満たさないことをどのように証明すればよいだろうか?

以下に「試用期間内に採用条件を満たさなかったことによる解雇」における留意点を挙げたい。

1、約定された試用期間が合法であること。すなわち、「労働契約期間が3ヶ月以上1年未満のときは1ヶ月を、1年以上3年未満のときは2ヶ月を、3年以上もしくは期間の定めがないときは6ヶ月を超えてはならない」のである。

2、労働者が採用条件を満たすか否かの認定について、試用期間中の認定基準が試用期間満了後に認定基準を下回ること。

労働者が採用条件を満たない状況としては主に以下の状況が挙げられる。

(1)労働者が誠実信用の原則に反し、虚偽の学歴証明、身分証、戸籍謄本など個人を証明する重要な書類について偽る、または履歴、知識、技能、業績、健康など個人の状況を証明する書類について重大な相違があるなど、自身の基本的状況について詐称または隠匿し労働契約の履行に影響を及ぼしたとき。

(2)試用期間内に業務上の失策があり、これが労働法に定める規定や試用単位の規定制度及び双方間で約定した労働契約に照らして妥当であるとき。

(3)その他双方間で約定した使用単位の考課による採用条件を満たさないとき。

3、当該労働者が採用条件を満たさないときは、使用者はこれを証明しなければならない。実務においては次の2点を見る必要がある。一、採用条件について使用単位と約定してあるか。二、使用単位の当該労働者に対する記録及び評価が客観的なものであるか否か

本案件において、双方間で約定された「試用期間採用条件説明書」には「試用期間内に法に定めない理由により累計2日以上休暇を取ったとき、または3度以上遅刻したとき、または無断欠勤をしたとき」と明記されていたため、会社側の労働契約解除は合法であるとされたのである。