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【判例】使用単位は労働者へ「年休を多く与え過ぎた」旨を主張することができるか?(2019年5月30日)

案例:

周氏は2015年3月11日、上海市内の某船舶会社で溶接工として従事していたが、2017年4月16日に一身上の都合により離職した。

会社側は、周氏が年休及び春節休暇を長期間取得し、勤務を再開してから間もなく離職したことから、会社側が手配した年休分の賃金XX元について返還すべきだと周氏へ主張し、最後の賃金(4月分)を支払う際にこれを控除した。周氏はこれを不服として、労働人事争議仲裁委員会へ仲裁を申し立て、会社側へ2017年3月と4月の賃金差額XX元の支払いを求めた。

仲裁庭は、「被申立人は、業務上の都合により、社内慣習及び周氏の勤続年数が20年を超えていたことを考慮して、2017年の春節に申立人へ連続22日間の休暇を与えた。うち7日が法定休暇であり、15日が年次有給休暇であった。被申立人は、申立人が2017年4月に離職したことから、2017年度における15日の年次有給休暇の取得条件を満たさないとの理由で、多すぎた年休分の賃金を返還すべきだとして申立人の賃金から該当額を控除しているが、これは妥当ではない。また、申立人は2017年初頭に自身の年次有給休暇を按配しているが、これは被申立人の主導で按配されたものであり、申立人に過失が認められないことから、賃金から当該金額を控除することは更に妥当性を欠くと言わざるをえない」との判断を下した。

争点:

使用単位が年初に手配した労働者の年休について、労働者が年度途中で離職した場合、使用単位は労働者へ年休を多く与えすぎたと主張することができるか?

判決:

仲裁庭は、「被申請者が年度初めに年間の有給休暇を手配したのは、企業の(労働者に対する)自主的使用権を体現したものであるから、被申請者は申請者の離職などにより年次有給休暇を消化できない可能性を予見すべきである。使用単位は労働者へ当年の年休を手配したが、年次有給休暇数を超えた日数を換算し控除することは当然にはできない。離職した労働者への年次有給休暇の換算については、『企業従業員年次有給休暇実施規則』第十二条に明確に規定されている(以下条文)。

『塩湯社と従業員の間で労働契約を解除し、又は終了するに当たり、当該年度に従業員に所定年次湯九休暇を消化させていない場合、従業員の当該年度の既に勤務した期間に基づいて未取得の所定年次有給休暇の日数を計算し、かつ未取得年次有給休暇賃金報酬を支払わなければならない。但し計算後1日に満たない部分については、未取得年次有給休暇賃金報酬を支払わない。計算方法は、(当該年度の当該使用者の下において経過した歴日数÷365日)×従業員本人が1年間に享受すべき年次休暇の日数-当該年度に付与した年次休暇の日数』となる。

使用単位は労働者の賃金を控除してはならず、被申請者が申請者の賃金から多く与えすぎたとする根拠も無い」として、申請者の主張を認め、被申請者へ控除した賃金を返還するよう命じる判決を下した。

分析:

年次有給休暇は労働者の法で定められた休暇である。国が年次有給休暇制度を定めた目的は、労働者へ必要なときにより良い休暇を与えることであり、この休暇は労働者が自由に休息・使用することができる時間である。労働者がより良く年休を享受できるように、「従業員年次有給休暇条例」には年次有給休暇について規定してある。

「職工年次有給休暇条例」第五条によると、使用単位は生産、業務の具体的な状況と従業員本人の意思を考慮して、年休を手配しなければならない、としている。このことから、使用単位は労働者へ年次有給休暇を手配する義務の主体であることが見て取れるから、使用単位は労働者の意見を総合的に考慮して、実際の生産需要や業務状況を予見しながら一自然年度内の年次有給休暇を手配することを求められているのである。

使用単位に年次有給休暇の手配についての発言権がある以上、使用単位が当年中に手配した消化すべき年休について、労働者は離職やその他の理由によって年休を全て享受できない可能性がある。使用単位が(本案件のような)手配を選択したということは、使用単位がこれに伴うリスクを受け入れたと見なすべきであり、労働者はこれについて何ら返還すべきものはない。これらを一言でまとめると、使用単位が労働者へ手配した年次有給休暇の休暇日数は「多くても還付されないが、少ないときは補償しなければならない」のが原則だ、という事となる。