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【判例】女性従業員の定年退職年齢は50歳か、55歳か?(2019年12月27日)

案例:

1999年1月、李氏は湖北証券上海営業部に入社した(湖北証券は2000年2月に長江証券と名前を変え、2007年12月、長江証券は長江証券股份有限公司として登記された)。

2004年9月、李氏は長江証券と2004年2月1日からの期間の定めのない労働契約に署名した。その後2001年1月から2005年7月までの間、李氏は長江証券上海営業部にて総務部経理職、行政部経理職を務めたあと、2005年8月より長江証券有限公司上海代表処行政経理を、2015年1月より長江証券総経理助理職を歴任した。しかし2017年4月、李氏は病気による休暇に入り、後任への引き継ぎを行った直後に離職した。

2018年8月7日、長江証券は李氏へ労働契約終了通知を発行した。そこには、李氏が定年退職延期の末2017年7月31日に法定退職年齢に達したこと、これは会社側が法に基づきその権利を行使したものであるから、これに配慮しなかったときは李氏の定年退職後の待遇に悪影響を及ぼす可能性があることが記されていた。

李氏は自身が管理職にあり、法定退職年齢に達していないため、解雇制限期間は長江証券が医療費を支払うものだと考えていた。そこで李氏は、上海氏黄浦区労働人事争議仲裁委員会に仲裁を申し立てたが、申立人が法定退職年齢を超えていることを理由として受理されなかったため、黄浦区法院へ提訴し、長江証券へ違法な労働契約の終了に対する損害賠償金75.47万元と、2018年9月から2019年5月までの賃金13万元ならびに医療費0.3万元の支払いを求めるとともに、長江証券股份有限公司上海福州路証券営業部に対し上記について連帯責任を負うよう求めた。

しかし黄浦区法院は李氏の提訴を退けたため、李氏はこれを不服として控訴したが、2019年10月31日、上海市第二中級人民法院は原判決を維持した。

分析

「労働契約法実施条例」第二十一条には、労働者が法定退職年齢に達したときは、労働契約を終了すると規定されている。国が定める現行の法定退職年齢は、法で定める正常な退職年齢を言い、「労働和社会保障部辯公庁 企業職工『法定退職年齢』の定義に関する返答」(労社庁函2001第125号)及び国発(78)104号文、国辯発(1999)10号文、労社部発(1999)8号文、社労庁函(2001)125号文等では、労働者の法定退職年齢を「男性満60歳、女性満50歳、女性幹部55歳」と定めている。

しかし二十世紀の90年代初頭に全国で全労働者への労働契約締結制度が実施されてからは、幹部と工人(※一般職の意)の敷居がなくなり、全員が企業の従業員として取り扱われることとなった(※90年代以前は、幹部と工人で従業員の取扱いが異なっていた)。企業とその従業員は平等かつ自発的な話し合いによる一致を基礎として労働契約を締結し、労働関係を確立するようになったのである。労働契約制が実施された後、企業は幹部と工人を区別することなく、企業内部で管理職や一般職、技術職など、生産経営活動の必要に応じて職位を定めることができるようになった。これは、企業の経営自治権を体現したものである。

「上海市保険管理局 本市職工退職手続の審査手続に関する若干問題の規定」(沪社保業-1996第76号)通知では、「…女性職工が満50歳に達し(管理職及び技術職に従事するときは満55歳)、退職の要件を満たしたときは、関連規定に基づき退職の手続きを行う…」と規定されている。

労働争議実務においては、例えば労働契約終了を巡り解雇制限について争う場合に(労働契約法には、「労働者が使用単位で連続して満15年勤務し、かつ法定退職年齢まで5年に満たないときは、当該労働者との労働契約を解除してはならない」という解雇制限規定がある)、労働者が自身の法定退職年齢を55歳と主張しているにも関わらず、使用単位が当該労働者の法定退職年齢を50歳と主張するケース(あるいはその逆のケース)が発生し得る。

沪社保業-1996第76号文などの上海市社会保険機構の発する退職手続きに関する規範文書は、上海市の退職手続きを制定、調整するためのローカル規定であり、その中で管理職または技術職にある女性従業員については定年を55歳とする旨明確に規定されている。これは同市の退職手続きにおいて適用されるべきものである。

実務において、女性従業員の定年及び職位の性質について、すなわち当該女性従業員が管理職や技術職であるか否かについては、使用単位が確認し立証する責任を負う。

社会保険機構に届け出があったときは、条件に合致する労働者の法定退職年齢を延長することができ、延長期間は定年を過ぎていないものとして扱われる。また特別な規定があればその規定に従う。

本案件において、長江証券公司は「長江証券股份有限公司職位管理暫定規則」を提出し、李氏が管理職ではないことを証明している。この文書に対して李氏がその真実性を否定したとしても、李氏は従事していた職位が管理職であったことを証明できていない。李氏は保険衛生士技師二級証書、保安員一級証書及び長江証券有限公司上海代表処が2016年4月に発行した証明書を証拠として提出したが、保安員は技術職の範疇に入るものではない。仮に労働者が技術資格を持っていたとしても、それはあくまでその技術に関する職位に就けることを証明するものであり、技術職に属していたことを証明するものではないのである。

労働者が技術職にあるか否かは、労働者の業務内容によって決まるものであり、学歴や専門技術の証明書によって管理職及び技術職に従事していたか否かが判断されることはない。李氏の歴任した経理職及び総経理助理職は管理職ではないから、法院は李氏の主張する損害賠償金及び医療費の支払い請求を棄却したのである。