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【判例】高級管理者には必ず裁量労働制を適用しなければならないか?(2020年06月29日)

案例:

王氏は2013年1月18日、上海市内の某社へ入社し、企画部の経理職を担当していた。基本賃金は月8000元であった。同社では指紋認証による勤怠管理を行っており、王氏の勤務時間は午前9時から午後5時までとなっていた。

2013年1月18日から2013年12月31日までの間、王氏の休日出勤を含む時間外労働時間は計186.5時間に上っていたが、会社側は王氏へ時間外手当を支払っていなかった。王氏は2014年4月13日に離職した後、同年6月、労働人事仲裁委員会へ仲裁を申し立て、会社側へ2013年1月18日から2013年12月31日までの休日出勤含む時間外労働の賃金68597.7元及びその25%の金額に当たる時間外手当17150元の支払いを求めた。

会社側は、「(会社側は)労働行政部門の許可をもとに、高級管理者について裁量労働制を採用しているが、王氏は部門経理の職に就いているため、高級管理者に属する。また、王氏との労働契約にも王氏へ裁量労働制を適用すると記載されている。会社の職位の設定は自主決定権の範囲内であるから、法院にはこの職位が高級管理者なのか一般的な従業員なのかを確定する権限が無い」との見方を示した。これに対して王氏は、「自分自身は一般的管理者なので、裁量労働制は適用されない」と主張した。

争点:

高級管理者には必ず裁量労働制を適用しなければならないか?

判決:

二審は、「会社側は、王氏が従事していた企画職が高級管理者に属しており、被控訴人(王氏)を高級管理者だとみなしている。しかし、どのような過程で王氏を招聘したにせよ、また企画職がどのような立ち位置だったにせよ、日常の管理体制を見るに、いずれも会社法で定める高級管理者規定に反している。ゆえに、王氏は高級管理者であるから裁量労働制が適用されるという会社側の主張は控訴理由となり得ず、法院はこの主張を採用しない」として、会社側の控訴を棄却した。

分析:

元労働部が規定した「企業の裁量労働制及び総合労働時間制実施に関する批准規則」によれば、裁量労働制が適用される職種は主に以下の三種である。

(1)企業内の高級管理者、外勤者、営業販売従事者、当直者の一部、及びその他業務上の原因により標準労働時間を推し量ることができない職工

(2)企業内の長距離運輸従事者、タクシードライバー及び鉄道、港湾、倉庫業務における荷役の一部及び業務の特殊性により機械を作動させなければならない職工

(3)その他生産、業務の特殊性による需要及び職責の範囲を鑑みて、裁量労働制を適用すべき職工。

このことから、「企業内の高級管理者」には裁量労働制を適用できることとなる。しかしいかなる労働法規にも、「企業内の高級管理者」について何ら定義がなされていない。現行の法律法規を俯瞰しても、ただ「中華人民共和国公司法」第二百一十六条に「高級管理者とは、会社の経理、副経理、財務責任者、上場企業の董事会秘書及び会社の規定するその他の者を言う」とあるのみである。但しこれについても、「企業の裁量労働制及び総合労働時間制実施に関する批准規則」にある高級管理者は「中華人民共和国公司法」で厳格に定められた高級管理者と同一なのか、それとも別個の定義がなされているのか、未だ定かではない。

本案件は個別案件で、しかも上海市で発生した案件ではあるが、使用単位からすると注目に値する案件である。本案件における高級管理者の定義について、上海市法院は特別に厳格な態度で臨んでおり、会社側の自主的な高級管理者の定義について否定的な態度を見せている。会社側が高級管理職の職位を設けるときは、できる限り「会社法」の規定に則ってこれを行うべきである。また、経営管理と当該職位の職能が実情とマッチするよう、慎重に職位を配置しなければならない。