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【判例】忌引き休暇の期限を過ぎても職場復帰しない従業員の解雇は合法か?(2021年5月30日)

●案例:

江蘇省南通の如皋市出身の賈氏は、2018年12月、南京市内のクレジットカード債権回収会社へ入社した。2019年2月26日夜、賈氏はWechat上で上司に対し、父の祖母(曾祖母)が亡くなったことを理由として休暇の取得を申し出たが、上司は1日間の休暇しか認めず、戻ってこない場合は離職手続きを取ると返信した。2月28日午前、上司は賈氏へ電話し、賈氏がまだ如皋市で葬儀を執り行っていることを知ると、「2日後に出社しなかった場合は退職扱いとする」旨Eメールで通達した。賈氏はこれについて、「社内規定では1ヶ月間に3日連続して無断欠勤して初めて退職扱いとなる」から、使用単位の行為は違法な労働契約解除であると主張している。

●分析:

一、忌引き休暇と私用休暇

忌引き休暇は、従業員の配偶者及び直系親族が亡くなったとき法に基づいて取得できる休暇である。これについて「国営企業職工の慶弔休暇及び旅程休暇問題に関する通知」では、「職工の直系親族(父母、配偶者及び子女)が死亡したときは、具体的な状況に基づき、本単位の行政事務責任者の許可を得て、事情を斟酌し1日から3日の忌引き休暇を与える」と定めている。

我が国の歴史的慣習から見ると、孫は祖父母が亡くなった際葬儀に参列する親族の範疇に入っている。ゆえに実務上、多くの使用単位では祖父母が亡くなった従業員の忌引き休暇取得を認めているが、一部には父方、母方の祖父母が亡くなった従業員へ1−2日の忌引き休暇のみを許可している使用単位も存在しているが、もし当該従業員が現地出身者ではなく遠隔地の出身者であった場合は、「国営企業職工の慶弔休暇及び旅程休暇問題に関する通知」に基づき、旅程の遠近に合わせて旅程休暇を付与し、忌引き休暇期間と合わせてその間の賃金を支払わなければならない。

このように、忌引き休暇は有給休暇の範疇に入るが、私用休暇の場合は有給休暇とならない。例えば「江蘇省賃金支払条例」第二十六条では、「労働者が以下の状況の一つに該当するときは、私用単位はその期間の賃金を支払わないものとする(一)私用で休暇を取得するとき……私用休暇の(許可)日数は各私用単位の規定制度に各々定めるものとする。従業員は特別な事情による私用休暇を申請することができるが、これを批准する権利は使用単位が有する。使用単位は私用休暇の具体的な内容に鑑みこれを批准するか否か決定することができる。従業員が休暇を申請するときは、使用単位の規定制度に基づいて申請手続きを行わなければならない」とされている。

二、使用単位における規定制度の合法性と合理性

使用単位の規定制度とは、使用単位が民主的手続きによって制定し、合法的な内容でかつ法に基づき公示された、労働者の日常的管理を行い使用単位の正常な運営秩序を維持するための文書を言う。使用単位の規定制度とは使用単位内部の「法律」であり、使用単位による管理権や契約解除権の重要な根拠となるものである。但し重大な規定制度違反になるか否かの判断については、使用単位の自主的経営権が保障されているものの「労働者の労働する権利の尊重」という一定の制限があり、規定制度の合法性のみならず合理性を判断しなければならない。すなわち、合法的かつ有効な規定制度のみが人民法院による労働争議案件の裁判において証拠となるのである。「最高人民法院労働争議案件審理における法適用に関する若干問題の解釈」第十九条には「使用単位が『労働法』第四条の規定に基づき民主的手続をもって定めた規定制度で、国家の法律、行政法規に違反せず、かつ労働者周知示されたものについては、人民法院の労働争議案件における証拠とすることができる」とある。

使用単位の規定制度は、(1)民主的手続きを踏んでいること(2)合法的な内容であること(3)労働者へ周知されていること、の3つの要件を具えていなければならない。これらの要件を満たして初めて、労働者を制約し、審査判断の根拠とすることができるのである。使用単位が労働者の利益に直接関わる規定制度を定めるときは、規定制度が国家の法律、行政法規及び政策規定に違反しないように、民主的手続きをもって制定し、労働者へ周知または告知しなければならない。この要件を満たさなければ、労働者を制約することも処罰することもできないのである。

規定制度の合法性の他に、規定制度の内容が合理的であるか否かも重要な問題の一つである。合理性があるとは、社会通念上妥当であると判断、認知される事を指す。例えば、一回の遅刻を重大な規律違反とするのは、合理的であるとは言えないだろう。より具体的な例を挙げると、従業員がスマホゲームに興じていた場合でも、それが業務に影響を与えず、重大な影響を及ぼすものでなければ、これを以て労働契約を解除するのは違法となる。但しこのケースにおいて、何度も同じような違反行為があり、注意によっても改善の見込みがないときは、規定制度に基づき労働契約を解除することができる。また、運転手の職位にある者が運転中にスマホゲームに興じた場合も、(重大な影響を及ぼすことから)労働契約解除との対象となるであろう。

三、何日間の無断欠勤があれば労働契約の解除が可能になるか

従業員の直系親族が死亡し、葬儀等のために帰郷した従業員が、特別な事情により1−3日の忌引き休暇を過ぎても職場へ復帰できないときは、一般的には超過期間を私用休暇として取り扱う。従業員が理由なく職場復帰せず、かつ使用単位からの呼びかけを拒否して初めて、使用単位は無断欠勤による重大な規律違反として当該従業員との労働契約を解除できるのである。

それでは、具体的に何日間の無断欠勤があれば労働契約を解除することができるのか?

無断欠勤による労働契約解除の最も早い法的根拠は「企業職工賞罰条例(『労働契約法』施行に伴い2008年1月15日廃止)」第十八条の「職工が正当な理由なく無断欠勤を繰り返し、教育を施しても改善せず、無断欠勤の日数が連続して15日以上もしくは一年以内の累計日数が30日以上に及ぶときは、企業は当該職工を除名する権利を有する」というものである。

「企業職工賞罰条例」廃止後、労働に関するどの法律法規、規定制度、文書も「何日間の無断欠勤があれば労働契約を解除できるか」について規定していないが、司法実務においては、使用単位が連続3−5日の無断欠勤をもって労働契約を解除するとしたとき(場合によっては連続2日であっても)は合法とされている。但し、1日の無断欠勤で労働契約を解除して合法とされたケースは今のところ存在していない。

四、賈氏の労働契約解除は合法か

以上の分析から、以下の結論が導き出せる。

1、賈氏は父の祖母(曾祖母)が亡くなったことを受けて帰省していることから、配偶者及び直系親族の死亡ではないため、忌引き休暇には該当しない。

2、賈氏は帰省後1日間死亡後の事務手続きを行っている。

3、賈氏が予定の期日内に戻らなかったことについて、会社側は無断欠勤とすることができる(私用休暇として許可を得た時間についても、許可を与えないことができた)。

4、しかし半日及び1日の無断欠勤を重大な規律違反とすることは合理性を欠く。

5、従って会社側の労働契約解除は違法となる。