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【熱中症について】駐在会員向けの健康ヘルスケアコーナー(2021年7月14日)

  

7月も第三週を迎え、日中の暑さが35℃を超える日が出てきました。中国のカレンダーを見ると、7月11日は初伏とあり、日本の暑中見舞いの言葉にも使う『三伏の候』に入ったことがわかります。

毎年、夏至から3回目の庚の日(かのえの日)を初伏、4回目の庚の日を中伏、立秋以降の最初の庚の日を末伏として、これらを合わせて三伏としています。2021年の今年は、6月22日の夏至の後、7月11日が初伏、7月21日が中伏、8月10日が末伏となっています。

中国では一般に『熱在三伏』 という言葉があるように、三伏の期間の約1ヶ月は夏の暑さが最も盛んで酷暑の時期にあたります。

三伏の時期は、寒・湿・熱に注意

三伏の時期は、一般に気温と湿度が高い状態が続くため、エアコンの効きすぎた部屋に留まり体が冷えすぎたり、冷たい飲料や食べ物を食べ過ぎて胃腸を冷やし過ぎたりする傾向があるため、中国伝統医学では体内に寒さと湿気(寒湿の邪気)を多く取り込むことを防止する養生法が多く説かれます。三伏の灸なども寒さと湿の邪気を追い出すためのこの時期特有の伝統療法の一つです。

一方でこの三伏の時期に最も注意するべきは“暑熱”です。夏は暑いものとはいえ、過剰な暑さは体に影響を及ぼします。熱中症とは熱に“中(あた)る”ことによってもたらされた症状全般をさします。英語でも“Heat Stroke(熱に打たれる)”と表現します。

熱中症はなぜ起こる?

運動や長時間の作業で体温が上昇すると、通常体の反応として体温を低下させるために皮膚表面の血流を増加させ熱を放散させ、同時に皮膚発汗を促し汗が蒸発するときの気化熱の作用により体温を低下させます。

しかし長時間高温の環境で運動や作業を継続すると発汗により体内の水分量が低下する脱水を起こし、また電解質が不足することで体内のバランスが崩れ、発汗機能が低下して体温を低下させることができなくなります。

熱中症の症状と重症度

熱中症という言葉自体には馴染みがありますが、具体的な症状や重症度の分類についてはあまり周知されていません。夏の戸外での活動時など、周囲の人が熱中症の症状を呈した時に、重症度の分類を知っておくことは危険度を判断するためにとても大切です。日本の環境省の熱中症予防サイトで紹介される熱中症の重症度分類を参考に一度しっかりと理解しましょう。

(参照:環境省熱中症予防情報サイトhttps://www.wbgt.env.go.jp/pdf/envman/2-1.pdf)

  

熱中症の重症度による対応

I度 :現場での応急処置で対応できる軽症。

II度 :病院への搬送を必要とする中等症。

III度:入院して集中治療の必要性のある重症。

現場でまず最初に確認するべきことは、症状のある人の意識がしっかりあり、受け答えが出来るかどうかです。受け答えがはっきりせず、意識がおかしい場合には、II度以上と判断し、早急に救急対応のできる病院への搬送が必要です。軽症のI度と判断出来る場合は、速やかに涼しい場所に移して体を冷やし、補水を行う必要があります。I度の軽症と判断し現場で様子を見る場合も、必ず誰かが付き添い、症状が悪化しないか観察する必要があります。

熱中症(軽度)の現場対応のポイント

軽症と判断し現場で熱中症の対応をする時のポイントを見てみましょう。(参考:環境省熱中症予防情報サイトhttps://www.wbgt.env.go.jp/pdf/envman/2-3.pdf)

①涼しい場所へ移動させる。

風通しのよい日陰、空調の効いている室内に移動させましょう。

②脱衣と冷却

衣服を脱がせ、体表面から熱の放散を助けます。ベルトやネクタイ、下着はゆるめて風通しを良くしてください。

皮膚に直接水をかけて、うちわや扇風機などで風をあて体を冷やします。シャツや下着の上から水をかけることも可能です。

アイスパックなどがあれば、それを頸部の前両脇、脇の下、鼠径部(大腿の付け根の前面)に当てて皮膚直下に走行する血管内の血液を直接冷却することも有効です。

体温の冷却はなるべく早く行う必要があります。重症者を救命できるかどうかは、いかに早く体温を下げることができるかにかかっています。

救急車搬送の要請をする場合も、到着前から冷却を開始することが必要です。

③水分・塩分の補給

冷たい水を持たせて、自分で飲んでもらう。

冷たい飲み物は胃の内面から体の熱を低下させます。同時に脱水状態の改善にもなります。

大量の発汗があった場合には汗で失われた塩分も適切に補える経口補水液やスポーツドリンクなどが最適です。食塩水(水1ℓに1 ~ 2gの食塩)も有効です。

応答が明瞭で、意識がはっきりしている場合、経口で冷やした水分を適宜摂取してもらう。

呼び掛けや刺激に対する反応がおかしい、応答がない( 意識障害がある)場合には液体が気道に流れ込む誤嚥の危険性があります。

吐き気を訴える、あるいは嘔吐するという症状は、すでに胃腸の動きが鈍っている状態ですので、経口で補水を促すのではなく、病院での点滴が必要です。

④医療機関への搬送

自力で水分の摂取ができないときは、点滴で水分を補う必要があります。緊急で医療機関に搬送することが最優先の対処方法となります。

  

熱中症の予防をするには

熱中症は気をつければ予防できる症状の一つです。以下の点に注意して、発症に注意しましょう。

①暑さを避ける。

暑い日中の戸外の運動や作業を避ける。直射日光を避け、日陰での行動を心がける。運動時は帽子をかぶる。日傘を利用するなど。

②こまめの水分補給を心がける

喉が渇いたと感じる前に適宜補水をする。

運動前から少しずつ水分を取り、こまめに休憩をとって給水の時間を設ける。

コーヒや緑茶など利尿作用のある飲み物は避ける。アルコールにも利尿作用があり、戸外の運動時などはアルコール摂取後の運動はさける。

発汗により失われる電解質を補給するため、スポーツ飲料などを適宜取り入れる。

③通気の良い服装を着用

汗を吸収速乾性のある生地のものや、通気の良い衣類を身に付けるように心がける。

④暑さに慣れる体力作り

暑い季節が本番になる前から、日常から汗をかく習慣を身に付け、体温の上昇と体温を低下させる体の機能を活発にさせておくことも大切です。普段運動をしない人は、少しずつ体への負荷を増やし暑い環境での運動や活動になれることも予防法のひとつとなります。

お子さんとの外出時は熱中症に注意

子供は汗腺の発達が未熟で、体温の調整機能が大人に比べて未熟です。これからの暑い時期にお子さんと外出する時は、こまめに補水を促し、涼しい服装を心がけ、体温の上昇を防ぐように気をつけてあげましょう。上海市内は木陰が多いとはいえ、歩道からの照り返しによる熱の影響は小さくありません。身長の低いお子さんや、ベビーカーにのる乳幼児のお子さんと外出するときは、注意が必要です。

暑さを管理し、上海の三伏の季節を楽しもう

上海の夏は暑いとはいえ、毎年この時期は巡ってきます。暑さに負けない体力をつけながら、同時に熱中症の予防を心がけ、上海の夏を前向きに楽しみましょう。

地下鉄やバス、タクシーを駆使して気になるテーマの美術館を訪ねたり、夕方に郊外の水郷を訪ねたり、上海には夏であっても楽しめるスポットがたくさんあります。

サッカーやテニスなど戸外のスポーツを楽しむ時も、熱中症を理解し備えをした上で楽しめば不安になる必要はありません。

ただし、万が一に備え緊急で受診できる最寄りの病院の情報を確認することを忘れないようにしましょう。加入の医療保険カードや証券を携帯し、かかりつけの病院の診療時間やアクセスが確認できていれば安心です。

  

中智日本企業倶楽部 智櫻会

中智日本企業倶楽部 智櫻会

2021.7.14

2021.7.14