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【「体の故障とその予防」について】駐在会員向けの健康ヘルスケアコーナー(2021年9月24日)

  

9月も下旬を迎え、ゴルフシーズンへの気持ちが高まる時期となってきました。

今月は、嘉会国際病院の整形外科(骨科)外来を担当する徐亮先生にゴルフプレーに伴い発生しやすい体の故障とその予防、シーズン始めに心がけるべきポイントについてアドバイスをしてもらいます。

  

Image : www.chicagosuburbanfamily.com

■ゴルフ愛好家に多く見られる体の故障にはどのような部位にどのような症状が多いのでしょうか?■

腰、肘、手首、首の順に多い印象があります。

サッカーやラグビーといったコンタクトスポーツ特有の骨折や捻挫といった外傷がゴルフでは少ない反面、筋肉や腱の炎症による痛みが多く見られます。

腰には、筋肉/筋膜性の腰痛から、腰椎の骨と関節に問題があるもの、神経痛や筋力の低下を招く軽度から重度のヘルニアなど様々な状態を認めます。40代以降の方には症状として自覚が無くても加齢に伴う変形性腰椎症が多くの場合に認められ、原因が明らかな腰痛でなければ、複合的な関節や筋肉の状態が原因であることが多いようです。

肘はゴルファー肘としてよく知られる、肘の内側の痛みが訴えとして多く見られます。グリップを握り手首を巻き込む動作に使われる筋肉は肘の内側の出っ張り(内側上顆)に付着していて、グリップの握り方やインパクトの時の衝撃の繰り返しなどから徐々に付着部に疲労が蓄積し、炎症を起こすようになります。

  

Image: wentworthfallscountryclub.wordpress.com

  

Image:www.pogophysio.com.au

手首もグリップを握った際に伸びる親指が手首に繋がる部位の筋腱、あるいは小指側の手首の付け根にある骨の出っ張りの周辺に痛みを訴えるケースが多いようです。インパクトの後に手首を曲げる角度が強くなる左側の手首に痛みが多い傾向があります。

首は後頭部から肩にかけての筋肉で筋緊張性の痛みや筋膜の炎症による痛み、加齢に伴う変形性頚椎症やさらに頚椎ヘルニアに至るまで様々な痛みが見られます。

■それぞれの故障が発生する理由は何でしょうか。■

ゴルフの動作の特徴は、①脊椎を回転軸にして捻(ひね)る動作を繰り返すこと、②捻る動作の左右差が大きいこと、③動作が常に一方向であること、です。

腰や背中、首の痛みの原因は、この捻る動作とプレイヤーの主軸である脊椎とそれらを支える筋肉の状態との関係から発生していると言えます。40代以上の人の腰椎にはほぼ何かしらの加齢に伴う変形性の腰椎症を認めると説明しましたが、変形性の腰椎症は椎体関節の可動性の低下や椎間板の変性、周囲の筋群の柔軟性の低下を招きます。アドレスの際の前かがみで背中を軽く反らす姿勢は静的な状態で既に腰部への負担が非常に大きく、さらにクラブをスイングする動的な過程の中で、インパクトの際に腰への負担は急激に高まります。一説にラグビーやアメリカンフットボールなどのタックルの時の衝撃と同程度の負荷が腰に瞬間的にかかると言われています。

  

Image: centralorthopedicgroup.com

後頭部から頸部にかけての痛みは、前かがみの状態で常に首をもたげること、胸から腰にかけての捻り動作とは逆に、頭部を支える頸部周囲の筋群が停止しながら引っ張られるストレスを繰り返されることにより起こります。筋肉組織自体や筋膜、腱の疲労とそれが過度になった時の炎症として理解できます。

肘や手首の痛みも、同じ動作を繰り返すことと瞬間的に過剰な衝撃が一定の部位に集中することで発生します。瞬間的な過剰な衝撃とはインパクトのその瞬間に一定の部位に余計な力が集中する状態をさします。ダウンスイングからインパクト、フォロースルーに至る一連の流れの中で、体幹の捻りと両腕のダウンスイングから生まれる力が腕、手首、グリップ、シャフトを通してクラブヘッドがボールを打撃するその一点にスムーズに伝わらない場合、余分なエネルギーは手首関節の靭帯や肘の筋肉の付着部に衝撃となります。手元が狂い地面を叩く“ダフる”動きも、衝撃が関節や腱に跳ね返る原因の一つです。

■これらの体の痛みや故障の防止に気をつけるべきことは?■

腰や背中、首周りの筋肉の柔軟性を十分に高めることが何より大切です。ゴルフプレーの為だけに限らず、日常生活あるいは10年後20年後の体の動きを維持する上でも必要なことです。

そして自分の筋力や関節の状態を把握し、それにあったフォーム、グリップの握り方、スイングを習得することです。その意味で初心者の方々は上級者やスクールの指導者からコーチングを受けることをお勧めします。

そして練習やプレーの前は十分なストレッチを心がけ、終わったあとには筋肉や関節を十分に休ませることです。

多くのゴルフプレイヤーがすでに十分に理解していることばかりですが、社交的なスポーツだけにプレー前や後にこれらの時間を確保できている方は少ないかもしれません。

■シーズン始めに気をつけるべきアドバイスはありますか?■

短時間の練習から少しずつ慣らし、筋肉の柔軟性と筋力を上げていきましょう。来週末にシーズン最初のラウンドに誘われたとしても、前の週末に疲労するほどに打ち込んでしまっては筋肉は疲労するだけです。短時間の練習を分散させて継続し、フォームとスイングを安定させましょう。

■整形外科医師からみて、スコアーを伸ばすためのポイントはありますか?■

腰・骨盤を安定させる下肢の筋力を補強することが鍵ではないかと思います。特に大腿の前面(大腿四頭筋)と後面(二頭筋いわゆるハムストリング)の大きな筋群は腰を下部で支えて安定させる作用があります。上半身を捻りスイングの力を安定して生み出すには常に骨盤の位置を安定させる必要があります。骨盤を下から支えるのはこの下肢の筋群です。

どこでもできる下肢の筋肉のトレーニングの代表は、スクワッドです。正しいスクワッドを行うことで下肢と体幹を安定させる筋力が手に入ります。是非試してみてください。

  

Image: kenvalrehab.com

  

  

中智日本企業倶楽部 智櫻会

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2021.9.24

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