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【判例】労働者が職責に堪えないか否かを判断する際の要件とは何か? (2021年12月29日)

●案例:

王氏は2005年1月某自動車会社へ入社した後、期間の定めのない労働契約を締結した。2020年1月、会社側は職制改善評価活動 (組織構造の見直しと配置転換)を策定し、実施に踏み切った。この活動の対象者はCL/GL/TL(X含む)各職級において能力の向上が望まれる下位25%の従業員であった(王氏もこの中に含まれていた)。この方策は従業員代表大会にて公示され、説明がなされた。それによると、

(1)具体的な評価方法は、筆記試験(20%)+360度評価(80%)-減点分。360度評価とは上司(40%)、部下(20%)、同僚(20%)の評価である。

(2)評価結果は、職責に堪える(80-100点)、やや職責に堪える(60-79点)、職責に堪えない(0-59点)の三種類。職責に堪えない従業員は、降格もしくは減給とする。

王氏はこの活動に参加し、2月18日に筆記試験を終えた。評価の結果、王氏の成績は筆記試験7点、360度評価点数は42.9点で、合計49.3点であった。王氏はこれを不服として評価のやり直しを求めたが、会社側の紀律委員会はやり直しを認めず、評価結果が確定した。

2020年4月、王氏は「職責に堪えない」ことを理由として、降格及び減給処分となった。王氏はこれを不服として労働争議仲裁委員会へ申し立てたが、仲裁委はこれを棄却したため、更に法院へ提訴したが、一審、二審ともに王氏の訴えを退けた。

●分析:

一、 従業員が「職責に堪えない」と認められる要件とは何か?

法律上の規定では、労働契約で約定した業務を遂行できないこと、または同種の業務や職位に必要な業務量をこなせないこと、「職責に堪えない」と定義している。職種や業務内容は業種ごとに異なるため、実際には、評価結果と評価基準を総合して職責に堪えるか否かを判断する事が一般的である。本案件の会社側が採用した最適配置の方法は、評価と査定を組み合わせた効果的な方法であり、同時に評価基準や査定結果のマネジメントにおける適用を明確にしている。そのため、職責に堪えない労働者に対する後のマネジメントの根拠とすることができるのである。

二、考課及び評価制度を従業員に適用させるための要件は?

現行法及び司法実務では、従業員の利益に密接に関わる雇用制度について「民主的手続き」「法的内容」「公示」の3条件を満たさなければならないと明確に定めている。この要件を満たしていない制度は、従業員に対して法的効力を持たず、紛争解決において仲裁委員会や法院の支持を得ることが困難となる。

本案件に話を戻すと、法院は、会社側が上記の3つの要件を満たしていると判断しており、一審は具体的に次のような判決を下した。

「まず、職務改善評価活動は……職工代表大会で十分に討議され民主的に評決されている。使用単位は、労働者の利益に切実に関わる問題について、民主的に合意し公的に説明する手続きを行っているから、職務改善評価活動の実施は合法的に行われたと言える。

次に、職務改善評価活動の考課内容について、筆記試験の選択問題は……考課内容は妥当である。360度評価においては、各従業員スに対し多角的視点から総合的評価を下しており、評価内容は……業務の範囲を超えておらず……合理的な範疇にあると言える。」

総じて、会社側職務改善評価活動の実施に当たって合法的手続きを取っており、また評価の内容は合理的であるから、法律の規定に反しておらず、合法かつ有効である。」

三、考課及び評価の結果がどのように活用されているか?

使用単位にとって、客観的な生産・経営上の必要性に応じて、従業員の考課及び評価制度を実施することは、人的資源の合理的配分を実現し、企業の競争力を向上させる有効な手段である。では、これらの目的を達成するために、使用単位は従業員の考課及び評価制度をどのように活用すればよいだろうか。従業員の考課及び評価制度の運用の成否は、使用単位による従業員の考課及び評価制度が、使用単位のその他の管理制度と連動した効率的なマネジメントを実現しているか否かにかかっている。考課及び評価は、具体的に以下の3点において活用できる。

1、人材配置の最適化。会社側は考課後に職責に堪えない従業員に対し、話し合いによる労働契約の満了を検討することができる。会社側は契約更新をしないか、合意の上で契約を解除することを検討し、または配置転換を行うことができる。本案件において会社側は、王氏を降格処分としたが、これは経営自主権の行使の範囲であると認められるため、法律の規定に違反しない。したがって、会社側の職制改善評価活動は、人材配置の最適化という目的を達成したことになる。また、配置転換後の考課においても職責に堪えない場合は、労働契約の解除を検討することも可能である。

2、人材の育成。会社側は、考課結果を通じて、各従業員の現在の業務における長所と短所を把握した上で、従業員の長所の可能性を継続的に伸ばし、また短所を随時修正することができる。また、会社側は従業員全体の業績を分析することで、現在不足している点や成長の方向性を随時改善することができ、またその後の会社の業績評価や研修・能力開発の実施が容易となるのである。

3、モチベーションの向上。考課及び評価制度の結果を従業員の報酬制度と連動させ、年末ボーナスや昇進・昇給と密接にリンクさせることにより、従業員のモチベーションを更に刺激し、インセンティブによる奨励効果を十分に発揮させることができる。