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【判例】使用単位は、在宅勤務中の職場離脱を理由として、労働者との労働契約を解除できるか? (2022年1月25日)

●案例:

新鋭公司はコロナウイルスの影響を受けて、2020年2月から4月までの間、全従業員を在宅勤務とした。在宅勤務中は「飛書」という業務連絡用のソフトを使ってコミュニケーションを取り、業務を進めていた。

4月23日、新鋭公司は従業員の楊氏について、会社側のマネジメントに幾度も従わなかったことを理由として、重大な労働紀律違反により労働契約を解除した。楊氏は会社側へ違法な労働契約解除に対する損害賠償金の支払いを求めるべく仲裁を申し立て、仲裁庭は会社側の契約解除が違法であることを認めた。

会社側はこれを不服として、法院へ提訴し、会社側の違法な労働契約解除にかかる損害賠償金216000元の支払い取り消しを求めた。

会社側は、「当社は防疫のために疫病の流行期間を在宅勤務とし、業務連絡用ソフト『飛書』を使って業務を進めていた。楊氏の上司は2020年2月26日、3月19日、4月8日に『飛書』にて楊氏へ連絡を取ったが、楊氏は丸四日間返答しなかった。そこで当社は一度目の書面による警告を行い、勤務期間中は「飛書」にて規定の時間内に返信すること、規定の時間を過ぎた場合は無断欠勤とみなし、二度目の書面による警告があった場合は解雇も辞さないと伝えた。しかし楊氏はその後4月14日、4月15日も3時間以上に渡って直属の上司へ業務連絡を行わなかったため、二度目の書面による警告を発したが、その直後の4月22日、楊氏はまたも3時間以上に渡って業務連絡を行わなかったことから、当社は楊氏に対し書面で労働契約解除通知を発した。当社の労働契約解除は合法なものである」と主張した。

これに対して被告の楊氏は、「一、在宅勤務期間には業務連絡ツールとして「飛書」を使用していたが、会社側の発した一度目の書面による警告は『飛書』の利用を強調したものであり、社内の規定制度に関するものではない。二、『飛書』にて返信しなかったのは業務に取り組んでいたからである。三、会社側は『飛書』にて返信しなかった事が業務へ重大な影響を及ぼすことを証明していない」と反論した。

●判決:

法院は、「労働者は、労働紀律及び職業道徳を順守しなければならない。また、使用単位には従業員の使用管理権があり、労働者は労働契約が存続している間使用単位の法に基づく管理に従って、勤務時間内は労働を提供しなければならない。本案件において会社側は、新型コロナウイルス肺炎からの防疫期間、従業員へ在宅勤務を按排し正常時と同じ賃金を支払っているが、この防疫のための行為は肯定されて然るべきである。在宅勤務は、従業員が事務所へ集まる正常な状況と異なり、物理的な距離がある事から、業務の遂行及びコミュニケーションに一定の影響がある。このような状況下にあって、会社側が従業員へ『飛書』にて連絡を取り合うこと、また規定時間内に連絡するよう求めることは、何ら不当ではない。

楊氏は2020年2月26日から4月22日までの間、会社側より三度に渡り書面による警告を受け、また業務紀律に関する注意を受けているにも関わらず、会社側の適時連絡に応じず、またこのことについての合理的な説明もなされなかった。会社側の三度の書面による警告を無視した行為は重大な労働紀律違反に該当することから、会社側の労働契約解除は不当なものとは認められない」として、違法な労働契約解除による楊氏への損害賠償金の支払いを取り消した。

判決後、楊氏は控訴したが、二審は原審を支持した。

●分析:

労働における任務を全うし、労働紀律と職業道徳を順守することは、労働法が労働者に求める最も基本的な要求である。たとえ会社側の規則制度に明確な規定がなく、労働契約にも明記されていないとしても、労働者に労働紀律や職業道徳に対する重大な違反行為があったときは、使用単位は労働者との労働契約を解除できる。本案件が発生した当時は、新型コロナウイルスが流行した時期であり、コロナウイルスの流行によって業務効率や事務処理など様々な面で変化が生じ、必然的に使用単位のマネジメントを調整せざるを得なくなっていた。このような場合、労働者は合理的な範囲内で、使用単位による調整を受け入れなければならない。

本案件において楊氏は、自宅勤務期間中も会社側の管理に従い、労働規律を順守し、適時に仕事を完了させることを期待されていた。しかし、在宅勤務の期間中、楊氏は会社側の業務連絡へ応じないことを何度も繰り返し、長時間にわたり労働者の基本的な労働義務に違反する行為を行った。

楊氏は会社側の複数回の警告にも関わらず、依然として会社の管理規則を厳格に遵守し真面目に職務を遂行することができなかった。楊氏の行動は職業倫理と労働規律に著しく違反しており、会社側との間に確立された労働契約の目的を毀損せしめたため、法院は会社側の楊氏との労働契約解除を妥当であると結論付けたのである