【判例】労働者の喧嘩を理由とした労働契約の解除は合法と言えるか?(2022年3月30日)
●案例:
鉄鋼会社に勤める鄭氏は、労使双方で合意に達した労働契約において、会社側の就業規則を熟読した上で、これを順守すると確認していた。会社側の就業規則には、「業務時間中に騒ぎやもめ事、喧嘩などを行ったときは、罰金50元-200元を徴収した上で、状況を見て労働契約を即時解除する」とあった。
2020年3月、鄭氏は配車係の班長と口論となり、喧嘩に発展したが、警察の仲介により和解した。これを受けて会社側は2020年4月、就業規則違反として鄭氏より200元の罰金を徴収した上で、鄭氏との労働契約を解除した。鄭氏は当月中に労働仲裁を申し立て、会社側へ違法な労働契約解除による損害賠償金の支払いを求めた。
●争点:
本案件における鄭氏と配車係の班長との喧嘩は、重大な紀律違反による労働契約解除に該当するか?
●判決:
仲裁庭は、会社側の労働契約解除を「労働契約法」第三十九条の規定に反するとして、会社側へ損害賠償金の支払いを命じた。
●分析:
会社側の就業規則には「業務時間中に騒ぎやもめ事、喧嘩などを行ったときは、罰金50元-200元を徴収した上で、状況を見て労働契約を即時解除する」との規定があるが、労働契約の即時解除は最も酷い事例に対して適用されるべきものである。一般的に、労働契約の解除は使用単位が労働者の重大な紀律違反行為に対して下す最も重い措置であるから、最も悪質な事例に対して適用される。しかし、何をもって「酷い事例」とするかは、就業規則に記載されていないことから、会社の生産秩序や経営管理への悪影響、財産の喪失、及び社会的影響などの一般社会の認識をもって評価しなければならない。本案件において発生した鄭氏の喧嘩は、警察の仲介により和解を見ており、既に当事者双方で和解協議書を交わしている。この喧嘩が会社の生産秩序や経営管理、財産、及び社会的評価において悪影響を及ぼしたことを証明できるものは何もなく、また会社側も悪影響を証明する証拠を提出していないことから、鄭氏の行為は最も重大な紀律違反とは言えず、会社側が就業規則に基づき労働契約を解除することはできないのである。結果として会社側の労働契約解除は、「労働契約法」第三十九条の規定に反するとされ、会社側は法院より損害賠償金の支払いを命じられている。
総じて、使用単位は、規則によって労働者の職場での喧嘩や乱闘を禁止し、深刻な喧嘩や乱闘があった場合について使用単位による一方的な労働契約解除を定めることができるが、そのような規則や規定は十分な公平性と運用可能性を有していなければならない。使用単位は、労働者の行為が規則に違反するかどうかを慎重に判断し、規則を拡大適用して労働者の正当な権利と利益を損なわないよう注意しなければならないのである。