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【判例】職工代表大会は、労働者の労働関係を変更する権限を有するか? (2022年4月29日)

●案例:

1995年に某運送会社へ入社し、倉庫管理の業務に従事していた張氏は、2002年、会社側と期間の定めのない労働契約を締結した。2015年、会社側は株主総会の席において分社化を決定し、運送会社を存続させつつ一部事業を貿易会社(B社)として独立させた。その後会社側は、商工部にて両社の登記を行った。

2016年、運送会社は職工代表大会を開催し、審議の結果「分社後の労働関係調整に関する決議」を採択した。これにより運送会社の全ての従業員の労働関係は、貿易会社であるB社へ移管されることとなった。2017年、運送会社は張氏へ通知を送達し、貿易会社と労働契約を締結するよう求めたが、張氏は運送会社の倉庫管理員の職位がまだ撤廃されていないことを理由にこれを拒否した。

そこで運送会社は2018年末、張氏の同意を得ないまま張氏の社会保険を貿易会社へ移管し、貿易会社の口座より賃金を支払うよう変更を行った(この時、張氏の勤務場所や職位に変化は無かった)。結果、張氏と運送会社との間に労働紛争が発生し、張氏は仲裁庭へ仲裁を申し立て、運送会社の労働者としての地位確認を求める事態となった。

●争点

職工代表大会は、労働者の労働関係を変更する権限を有するか?

●判決:

労働人事仲裁委員会は、張氏の請求を認めた。

●分析:

この案件については二つの説があり、その一つは、労働契約法では使用単位と労働者の合意により労働契約の合意内容を変更できると規定しているが、労働契約の変更は使用単位と個々の労働者の合意に限らず、職工代表工会の決議によっても可能であるという見解である。職工代表大会は、全労働者から選出された職工代表で構成され、全労働者の意思を表し、大多数の労働者の利益を反映する。また、企業の主要な決定事項を審議し、行政指導を監督し、労働者の正当な権利と利益を保護する権利を有する。したがって、職工代表大会の決議も労働契約変更の法的形式である、というのがこの説である。

もう一つの説は、「労働契約法」第3条第1項によれば、労働契約の締結は、適法性、公正性、平等性、自発性をもって合意し、また誠実及び信用の原則に基づくものでなければならないとされていることから、労働契約の変更と労使関係の変更には、契約を締結した当事者双方の合意が必要であるとする。本案件において、会社側の「企業分離後の労働関係調整に関する決議」は職工代表会議で採決されたが、労働契約の対象者である張氏がこれを受け入れなかったことから、張氏と会社側は労働関係の変更について合意に至らなかったと言える。

我々は後者の説に賛同する。「『労働法』の実施徹底における若干問題に関する意見』第13条には、使用単位に分離・合併があった場合、分離・合併後の使用単位は、その実情に応じて、平等・自発・合意の原則に基づき、元の使用単位の労働者との労働契約を変更することができるとある。本案件においては、張氏本人が同意を拒否したため、労働契約の変更を成立させることができなかった。使用単位は、職工代表大会の決議を直接の根拠として、張氏の雇用関係が変わったと判断したが、これは法的根拠を欠く主張であると言えるのである。