【判例】締結された契約が「広告代理契約」であっても、労働関係は成立し得るか?(2022年7月29日)
●案例:
2021年4月、アンカー業務に従事していた王氏は、某社と1年間の芸能契約を締結し、プラットフォームライブ、Tiktokアカウント等で会社側のEコマース事業の広告代理を受託することで合意した。
この契約では、王氏は毎日少なくとも8時間以上、会社側が手配した配信内容と形式に基づいたライブ配信を行うものとされており、会社側は王氏へ毎月3000元の基本給+歩合給を支払うと定めていた。しかし、販売収入の不振により、2021年5月から8月までの間、王氏には基本給も歩合給も支払われなかった。
同年8月、王氏は会社が労働報酬を全額支払わなかったことを理由として離職を申し出、会社側へ労働報酬と労働契約解除の経済補償金を合意通りに支払うよう求めた。これに対して会社側は、王氏が事前に契約を解除しており、両者の間に労働関係が存在しないことを理由として、上記の支払いを拒否した。そのため王氏は、同社との労働関係の存在確認と労働報酬および経済補償金の支払いを仲裁庭に申し立てた。
●裁決:
労働人事仲裁委員会は、王氏の訴えを認めた。
●分析:
「労働関係の成立にかかわる事項に関する通知」は、労働関係成立の要件として、使用単位と労働者が法律に定める主体資格を有していること、使用単位が法律に基づき制定した労働規則が労働者に適用されること、労働者が使用単位の労働管理の対象となり、使用者が手配した有給労働に従事すること、労働者が提供する労働が使用単位の業務に不可欠であることを定めている。
本案件において、王氏は会社側と書面による雇用契約を締結していなかったものの、実際の業務プロセスや王氏の勤務場所、勤務時間、業務内容、使用形態を見ると、王氏の業務は実態として会社側の規則に従って会社側が手配、管理したものであった。従って、王氏の提供する業務は会社の業務に属するものであり、両者の間に労働関係が成立していると判断されたのである。
また、本案件において王氏は、会社側が労働報酬を全額、期限内に支払わなかったことを理由として労働関係を終了させている。このことから会社側は、「労働契約法」第三十八条、第四十六条により経済補償金及び労働報酬を支払わなければならないこととなる。