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【判例】競合避止契約を締結した労働者が「派遣社員として」競合他社で競合する業務に従事した場合は、競合避止義務違反となるか?(2022年8月31日)

●案例:

魯氏は2017年10月15日に化学工業会社に入社し、資材エンジニア職に従事していた。2017年4月18日、労使双方は協業避止契約を締結し、魯氏が退社理由の如何にかかわらず2年間会社側の商業・技術的秘密を競合他社や他の単位・個人に漏洩・譲渡しないこと、会社側と同一の製品の生産・操業・技術に単独または他社と共同で従事しないことを定めた。その後2019年9月、会社側は魯氏との労働契約を解除し、協業避止に対する経済補償金を毎月支払った。

2019年11月15日、魯氏は人材サービス会社とチーフエンジニアの職位で労働契約を締結し、以降人材サービス会社は魯氏へ賃金を支払い、社会保険料を負担した。人材サービス会社は、プラスチック会社と人材アウトソーシング契約を結び、人材サービス会社がプラスチック会社へ技術者を派遣することで合意した。その後、人材サービス会社はプラスチック会社へ魯氏を派遣し、その会社で働くことになった。

これについて会社側は魯氏が競業避止義務に違反したと考え、2020年8月労働紛争仲裁を申請し、魯氏に対し競業避止義務違反に対する損害賠償金を支払うよう求めた。審理において、魯氏が勤めるプラスチック会社は、会社側と競合関係にあることが判明した。 仲裁委員会は、最終的に会社側の主張を認めた。

●争点:

協業避止契約を締結した労働者が、労働者派遣や技術のアウトソーシングサービスを通じて、新しい単位で元の雇用主と同種の事業に従事した場合は、競業避止義務契約に違反するとみなされるか?

●分析:

労働契約法第23条は、「使用単位は労働者との労働契約において、使用単位の商業上の秘密および知的財産権に関する守秘義務を定めることができる。使用単位は守秘義務を負う労働者に対し、労働契約または守秘義務契約において競業避止条項を定めることができ、労働契約の解除または終了後の競業避止期間中、当該労働者へ毎月経済補償金を支払うことを約定することができる」と定められている。この場合において、もし労働者が競業避止義務契約に違反したときは、労働者は契約に基づき使用単位へ損害賠償金を支払わなければならない。

本案件において、会社側の上級技術職にあった魯氏は、会社側が魯氏へ経済補償金を支払った後、当然に競業避止義務を履行すべきであった。魯氏が労働契約を締結したのは確かに人材サービス会社であり、人材サービス会社が魯氏の賃金と社会保険料を支払う形となっていたが、魯氏は実質的に、会社側と競合関係にあるプラスチック会社へ派遣という形で、プラスチック会社の業務に従事していたのである。そのため、魯氏は競業避止義務違反により、会社側に対して損害賠償を支払うこととなった。

使用単位が労働契約中において締結する競業避止義務は、労働者の離職後の職業選択の範囲に適切かつ合理的な制限を加えることにより、使用単位の技術的秘密や営業情報を保護することを目的とするものである。したがって、労働者が特定の雇用形態を取っていることを理由としてこの保護を制限すべきではない。

しかし実態として、使用単位の中にはアウトソーシングや労働者派遣を利用して新規採用者の競業避止義務を回避する動きがあることも事実である。このことから、仲裁委員会や法院は、雇用形態にとらわれず、労働者が従事する業務が元の使用単位と同種の事業の一部であるかどうかを審議し、最終的に労働者が競業避止義務に違反した否かを判断しているのである。