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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

『【民営企業家に聞く】中華圧鋳網CEO 周少傑』2024/4/19

<strong><font style="font-size:19px">日系企業と協力の新しい領域! </font></strong>

日系企業と協力の新しい領域!

<strong><font style="font-size:19px">——中華圧鋳網CEO 周少傑</font></strong>

——中華圧鋳網CEO 周少傑


 

周少傑
中華圧鋳網CEO
華東地区鋳造協会副秘書長
上海市自動車業協会自動車鋳造分科会副秘書長

金属素材業界の先物ビジネスに従事していた周氏は、2000年にアリババのウェブサイトで、ある企業がニッケル素材を探していることを知り、様々な努力の末、当時希少だったニッケル素材を無錫で探し出す。周氏はインターネットを通じて最初の成功を収め、企業経営の道を切り開いた。これまで20年以上にわたり、非鉄鋳造、自動車部品、完成車などの上下流企業のリソースマッチングサービスに深く関わってきた。

近年、中国の自動車業界、特に新エネルギーの分野は、世界的にも注目される急成長を遂げています。中国企業はこの成長の中核をなしており、地元市場の深い理解、迅速なイノベーション、そしてコスト効率の高い生産能力を強みとしています。中国企業の技術やイノベーションの現状とそれを実現する人材戦略、そして今後の成長の方向性を理解することは、自動車産業に関わる日系会員企業が、中国市場での事業を再発展させるうえで貴重な参考となるでしょう。

自動車部品鋳造の観点から、中国自動車業界の発展状況をお聞かせください。

自動車部品の鋳造業界は、 上流にあたるAエンドのダイカスト関連企業、Bエンドの鋳造部品企業、下流にあたるCエンドの完成車メーカーにより産業チェーンを形成しています。鋳造は大きく鉄金属鋳造と非鉄金属鋳造に分けられます。使用される材料により、鋳鋼、鋳鉄、非鉄金属及びその他の合金などに分類されます。製造方法は、永久鋳型鋳造、抜き型鋳造、ロストフォーム鋳造、金型鋳造、圧力金型鋳造、遠心鋳造、連続鋳造などに分類され、2023年の中国全体の鋳物生産量の約28.5%を自動車関連の鋳物が占めています。

高圧鋳造について話すと、2008年当時、中国のダイカスト関連企業で上場している企業はほとんどありませんでしたが、2024年現在、40社以上のダイカスト関連企業が上場しています。特に、新エネルギー車の普及は鋳造産業の発展を牽引しており、あるダイカスト関連企業では、売上高が10年前の1億元から昨年は40億元以上に急成長しています。自動車の軽量化と継続的な資本投資により、自動車部品は自動車産業の基盤となり、中国における自動車産業の生産規模の急速な拡大と発展を実現しています。

中国の鋳造技術の水準は? 自動車においてダイカストは主にどのような部品に使用されていますか?

中国には、鋳造材料と技術応用の分野における世界トップレベルの科学者がおり、企業は技術革新と低炭素化への投資を積極的に行っています。しかし、依然として米国や欧州、日本が鋳造技術において世界をリードしており、中国企業は、学習と改善の余地が多くあります。

従来型の自動車におけるダイカスト部品の用途は、主にエンジン、トランスミッション、駆動部品、シャーシなどに集中しています。新エネルギー車ではアルミ鋳造の割合が高く、部品点数が少なくなっています。さらに、多くの新エネルギー車がボディの一体化(ボディ、シャーシ、ドアをダイカストで一体形成する)を採用しています。


中国の鋳造業界における人材の状況は?

人材に関しては、工業大学等が中心となって多くの専門人材を育成していますが、業界全体ではより多くの人材を求めている状況が続いています。海外のハイエンド人材の採用も積極的に行われており、かなりの海外人材が中国企業で技術職として活躍しています。特に需要が高いのは35~45歳の経験豊富なプロ人材であり、人材面において日本や欧米との交流の余地は大きいと考えています。

海外人材は、中国企業の経営スタイルや企業文化に適応できているのでしょうか?

確かに、中国企業と外資企業では、経営スタイルや企業文化、働き方が異なり、ギャップを感じている海外人材は少なくないかも知れません。しかし、近年、民営企業の間では、海外留学や外資企業での勤務経験を持つ第二世代の経営者が増加しています。彼らは、経営スタイルや企業文化の変革に取り組んでおり、海外人材にとってもより魅力的で働きやすい環境になりつつあります。

給与待遇に関しては、民営企業は競争力のある給与待遇や福利厚生に積極的に投資しており、海外人材を惹きつけるだけの魅力があるといえるでしょう。

「中華圧鋳網」では、5月に安徽省で第3回中国国際自動車軽量アルミニウム・マグネシウム応用会議を開催されるそうです。

2022年に上海市安亭で第1回目の会議を開催し、2023年の第2回目の会議は鋳造企業の工場が多い江蘇省南通市で開催しました。第3回目となる今年は、新エネルギー車が急速に発展し、多くの鋳造関連企業が集まる安徽省合肥市で、安徽省自動車工程学会と共催します。多くの著名企業の経営者や技術専門家が参加する予定で、軽量アルミニウム・マグネシウム鋳造の発展と未来の動向について交流します。


中国の新エネルギー車の製品開発サイクルは非常に短く、一般的に新エネルギー車の開発から発売まで、3年程度といわれています。どのようにしてこのような短い開発サイクルを実現しているのでしょうか。

短いサイクルでの製品開発を実現するためには、1) 多額の研究開発費の投入、2) 政府からの支援、3) 海外人材の積極的な採用、4) OEMと部品メーカーによる共同開発、5) 海外で研究所を設立し、グローバルな研究開発体制の確立、6)市場の急速な需要の多様性など、様々な要素が組み合わることで、製品開発サイクルが短縮され、市場投入スピードを実現しています。

周氏から見た日系企業の優位性は何でしょうか?日系企業が中国企業と協力する際に克服すべき点は何でしょうか?

私から見た日系企業の強みは、その長い歴史にあります。日本の自動車企業は半世紀以上の歴史を有しており、長年の蓄積によるギャップを埋めるのは容易ではありません。日系企業の洗練された経営方式と人材育成のシステム、そして企業文化は多くの民営企業から常に尊敬され、賞賛されています。日系企業の高い技術力も中国企業にとって学ぶ価値があります。例えば、中国企業はトヨタ生産方式に強い関心を持っています。ある大手民営企業の経営者は、日本のダイカストマシンの購入を決断した理由について、日本の技術専門家によるトレーニングと指導を受け、多くの専門技術を学ぶことができ、ウィンウィンの協力関係を築けることを挙げていました。

情報交流、人材交流、商取引など、日系企業との協力の余地はたくさんあります。しかし、現在の中国では価格競争が厳しく、日系企業は利益を重視するあまり、多くの協力機会を逃しているように思います。合理的な利益の範囲内でビジネスや技術面での協力を進めるとよいでしょう。中国企業と日系企業の間には文化、経営、技術などに違いはありますが、日本が得意とする産業などの技術交流においては、協力を強化できる大きな可能性があります。未来に向けて中国企業と日系企業が共同で産業発展を促進できると信じています。


中智の感想:

改革開放から40年を経て、現在の中国企業と日系企業の協力モデルは質的な変化がみられます。単純な物品貿易や加工貿易から徐々に専門技術の融合、専門家人材の導入、企業文化の浸透、管理モデルの参考に至るまでのソフトパワーによる協力にアップグレードされつつあります。経営者の理念の共有と企業の総合的な魅力を基盤としてビジネス協力を発展させる時代が到来しています。このインタビューが、自動車業界と関わる日系企業会員の皆様のご参考となれば幸いです。

中智日本企業倶楽部・智櫻会では、「中国企業家に聞く」シリーズを通じて、会員企業と中国ローカル企業の交流を促進し、中日双方にとってウィンウィンの関係を実現できることを期待しています。

※「会社名、役職名はインタビュー記事発表時の名称です」