ホーム > クローズアップ >HR人物インタビュー VOL.2 日中経済貿易センター  コンサルグループ部長 上海事務所所長 池田 稔 氏

「世界の市場」目指す日本企業を適確にサポートします


日中経済貿易センター
コンサルグループ部長 上海事務所所長
池田 稔 氏

 1954年から日中経済交流の架け橋として活動を続け、“最初に井戸を掘った”経済民間団体として広く知られる日中経済貿易センター。2003年には上海事務所を開設、中国進出を考える日本企業に現場の視点に立ったアドバイスをおくっている。日本企業の最近の進出状況を池田稔所長に聞いた。(聞き手:中智日本支社 HRM事業部)

 

―池田所長ご自身、中国との関わりは。

  「1982年、京都外大中国語学科に入ったのが関わりを持った最初ということになります。その後、85年から1年間、北京に留学(北京第二外国語学院)し、関わりがさらに深くなりました。留学で中国語を少しは話せるようになり、中国の事情も自分なりに分かってきました。これらを基礎にして、中国と接点を持ちながら社会に貢献できる仕事に就ければという思いが(日中経済貿易センターの)入所につながりました」

 

―日本企業の中国進出について、これまでの変化をどうご覧になっていますか。

  「1972年に日中国交回復があり、78年、鄧小平氏によって、それまでの自力更生から改革開放政策に転換しました。これが契機となり、外資の受入れ態勢が急速に整備され、世界の工場へと発展して行きました。安価で豊富な労働力を利用し、低コストで生産して海外に輸出するというのが主要な姿でした。これが大きく変わったのが2008年9月のリーマンショックでした」

 「日米欧の主要先進国がいずれも大きなダメージを受け、中国もさすがに影響は受けましたが、V字回復を遂げ、結果的に2009年は8.7%、2010年上半期は11.1%の成長を達成しました。これに注目した企業が中国政府の内需拡大策を背景に中国市場への取り組みに本腰を入れだしました。

 今までは事業計画書の末尾に書かれていた『中国市場の開拓』が、最初に記載されるようになったわけです。このような動きが顕在化してきたのがリーマンショック後、しばらくしてからのことです。『世界の工場』は、『世界の市場』へと大きく変わりました」

 

―業種別で見るとどのような変化がありますか。

  「私どもの上海事務所は2003年の開設ですが、その当時はまだメーカーさんが多く進出されていました。その翌年ごろから貿易会社の設立が増え始め、リーマン?ショック後、しばらくは落ちましたが、ここにきてサービス業を中国で展開したいという案件が増えてきました。必ずしも中国でものづくりをせずに、日本の優れた商品やサービスを売り込みたいと考える企業が多く見られます。この点で、対中投資は第二次産業から第三次産業に軸足が移りつつあります」

 

―商品やサービスを中国市場に売り込むに当って何が必要でしょうか。

  「しっかりとした市場調査です。特に中小企業の場合、コストをかけて市場調査を行うのは難しい面がありますが、リスクを取り除くという意味でも、我々のPRに聞こえるかも知れませんが、中国ビジネスのプロの意見をぜひ聞いて頂きたい」 「よくチャイナリスクといわれますが、私は、リスクは取り除けると思っています。事前に法律や商習慣などを調べることでリスクは減らすことが出来ます。

 ただし、そのために独自でできることには、ある種の限界があります。往々にして『落とし穴』は、一見しただけでは分かりにくいのですが、最初の入口を間違えると投資が破綻しかねない。中長期的展望に立って、最初の時点で我々のアドバイスを取り入れていただければと思います」

 

―世界の名だたるプレイヤーがひしめき合う中国。ここで勝ち抜くためには。

  「中国、取り分け、上海は野球でいうとメジャーリーグであり、そこに商品やサービスを売り込むわけです。私は『御社の商品、サービスはイチローですか?松井ですか?』とよく質問させていただきます。クルマでも日本車が日本国内と同じように中国で優位に立っているかというと、そうとは言えないのが現実です。

 上海は世界の競争の縮図です。世界で勝ち抜ける商品、サービスであるかどうか、ですね。とはいえ、日本の商品やサービスには優れたものが多いので、勝ち抜けるものはまだまだあると思います。その際、商品であれば『人・モノ・金』の3点セットが市場開拓に必要です。 いくらいいものでも営業マンがいないと売れないし、それを支える資力がないと続かない」

 

―次の第12次5ヵ年計画では所得倍増が盛り込まれるようですが、日本の商品やサービスの出番は増えていきますか。

  「そうなると競争力は高くなりそうです。為替の動きが気になるところですが、可処分所得が増えると日本の商品、サービスを求めやすくなる、そんな状況になりつつあると思います。今後、日本国内で完結していた企業が中国市場を目指してこられるわけですから、そうした企業に分かりやすく、適切なアドバイスをさせていただくのがこれからの我々の役割だと思います」

 

一般社団法人日中経済貿易センター
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