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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第16回

『新日鉄住金軟件(上海)有限公司    東條 晃己 董事 总经理インタビュー!』  2014年4月11日


 
新日鉄住金軟件(上海)有限公司
董事 总经理 東條 晃己 氏

  ● 転機を迎えるオフショア開発 「先発優位」で“勝機”を

  ● 人材流出リスクにも効用? 拡大する「ネットワーク」に期待

 

(弊社インタビュアー)(以下弊社)

チャイナ・プラスワンの時代といわれるなか、中国オフショア開発市場が大きな転機を迎えています。新日鉄住金軟件(上海)有限公司では、為替リスクや人材費の高騰への対策を講じつつ、主力事業の軸足をSI関連へと移しはじめるなど変革の最中にあります。技術と言語双方に長けたより高度な人材を確保し育成するための取り組みや人材リスクへの対処方法等について、同公司の東條晃己董事 総経理に語っていただきました。

 

◆◆◆  【「ユーザー系」の枠を超えた事業展開】  ◆◆◆

(弊社)

御社グループの本体では、開発からシステム設計、運用保守に至るまでトータルなソリューションを提供されています。

 

(東條総经理)

弊社はこれまで事業統合や合併を経て今日に至っていますが、黎明期に遡るとメインフレーム全盛の時代にあたります。年中無休で安定的かつ確実に鉄鋼の生産と品質管理を可能にするシステムを構築していくことが主たるミッションでした。

そうした意味で、SI(システムインテグレーション)企業のなかでも、弊社はいわゆる「ユーザ系」と呼ばれる部類に属しています。しかし、ソリューションビジネスを本格化していくなか、いまでは親会社向けのビジネスは全体の2割程度となっています。

 

(弊社)

新日鉄住金グループ自体が「鉄鋼」の領域に限らないさまざまな事業を展開されてきたという印象があります。

 

(東條総经理)

そうですね。変わりどころでは、チョウザメの養殖やNASAと提携したテーマパークの運営などを手がけていた時期もありました。私も新規事業を担当する部門に所属し、さまざまなプロジェクトに関わってきました。事業統合により弊社の前身である新日鉄ソリューションズが設立した2001年以降は専門性の強い人材に統一されていきますが、かつては多岐の分野を出自とした、バラエティーに富んだ顔ぶれが集まっていたような気がします。

いまでは想像がつかないかも知れませんが、製鉄所の新入社員歓迎会では一升瓶のお酒をヘルメットに注ぎ、一気飲みをするような慣習さえありました(笑)。システムエンジニアが酒豪というのは想像しがたいことでしょうが、弊社はそんな特殊なカラーを備えたSI企業だといえます。

(弊社)

改革開放初期における「宝山鋼鉄」プロジェクトなども関係し、中国での御社の知名度は高いのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。

 

(東條総经理)

日系企業とのビジネスに携わる方々にはある程度馴染みがあるかも知れませんね。ただ一般の方にとってはそうとはいえないかも知れません。

弊社(中国法人)が上海に設立されたのは2002年のことです。以来、ニーズが旺盛だったオフショア開発とSI事業をを両輪とした経営を続け、製造、金融、流通、アパレルなどのお客様を主にサポートさせていただいております。

ただ、ここ数年は業績こそ順調な伸びを見せてきたものの、昨今では人件費が高騰を続けており、また為替が円安にシフトしたことなどで、中国でのオフショア開発については大きな転換期を迎えています。そこで現地企業をターゲットとしたビジネス、とくに日系企業の中国法人をサポートしていくSIビジネスにより一層注力していく必要に迫られているといえます。このため業務アプリケーションからインフラまでトータルなサポート体制の構築、拠点の拡大、クラウドサービス開始などの施策を進めています。

 

(弊社)

こちらで顧客開拓を進めていくなかで、ローカル系企業と競合することはありませんか。

 

(東條総经理)

単純な価格競争ともなれば、まったくローカル系には歯が立ちません。彼らの見積額は私たちの半額の水準になることも珍しくないからです。それゆえ、弊社では、業務とITに精通した人材、技術力、提案の内容や品質、方法論や管理手法といった付加価値をお客様にアピールしていくことが重要と考えています。実際には、IT企画など上流のノウハウを求める中国企業のお客様からの引き合いも出てきており、私たちはそこに商機を見だしています。

 

◆◆◆  【バイリンガルSEを確保するハードル】  ◆◆◆

(弊社)

事業体制の変革期にあって、より高度な人材を確保していく必要がありそうです。

 

(東條総经理)

採用、そして育成していかなければならないのは、いわゆる企画、コンサル系SEといわれる人材ですね。まずは、お客様の管理者層に対してビジネス、IT両面でコミュニケーションができる経験、知見が必要になってきます。

これらのハードルをクリアしているという点で、帰国組を中心とした30歳前後のキャリア人材は即戦力として貴重です。一方、新卒者を雇う場合は、日本語人材に技術研修を施すか、あるいは技術人材に日本語のトレーニングを積ませていくかのどちらかの選択になるでしょう。今年は新人を8名、キャリア人材を10名採用いたしましたが、日本語に精通した技術人材自体がもともと少ないというのが実態であり、社内の研修制度をより充実していくことが求められます。

 

(弊社)

インターン生の受け入れについてはいかがでしょうか。

 

(東條総经理)

若い世代の人は入社してもすぐ辞めていくケースが増える傾向にあるため、人材評価の機会が得られるという点でインターン制度のメリットは小さくないと思っています。今年も始めていますが、インターン生の受け入れ体制は今後も確保しておくつもりです。

 

(弊社)

新卒採用の段階から手塩にかけて育成していった人材がジョブホッピングして抜けていくのは大きなダメージではないでしょうか。

 

(東條総经理)

おかげさまで雇用状況については安定している方です。設立時のメンバーが幹部層を占めるようになってきており、まさに現地化を推進するプロセスにあるといえます。日本的な組織マネジメントの手法ではありますが、部下のキャリアパスに配慮し、意欲を高めさせ、ロイヤリティーを浸透させていくことができるリーダー層を育成し、権限を移譲していくことが、組織力を高め、引いてはお客様により高い評価をしてもらうことに繋がっていくのだといえます。

 

◆◆◆  【人材流出も転じて事業チャンスに!?】  ◆◆◆

(弊社)

引き続き人材をめぐる経営リスクについてお伺いいたします。労務トラブルに遭遇することはありませんか。

 

(東條総经理)

幸いにしてトラブルに発展したケースは経験していません。しかし、人材が他社の引き抜きにあったり、人材流出による情報漏えいといったリスクは弊社も無関係ではいられませんので常に対策を講じておく必要がありそうです。

ただ、有能な人材が離職したいと言い出してきたとき、人事政策面で公平感を損なわないように配慮しなければならないと考えています。離職希望者から極端な給与アップなどの要求を受けても、そう安々と応じるわけにはいかないのです。

競合企業に転職しないように入社時に誓約させることも、せいぜい心理的な抑止力となるぐらいかなと思います。一時的、短期的な待遇面の良さに目を奪われず、長期的な視点で弊社で働くことのメリットを理解してもらうよう真摯に話し合いをすることが重要と考えています。

 

(弊社)

しかし、リスク防止策には配慮していく必要があります。

 

(東條総经理)

おっしゃるように、情報セキュリティーの問題もあります。もっとも、そのリスクは人材流出時というよりも、日頃から存在しているものです。情報漏えいには物理的な側面と人的なものがありますが、社員の行動習慣に起因するものも少なくありません。当社では日本の本社と同様の規定やマニュアルの整備、社内研修やe-Learning受講など、情報セキュリティー教育は徹底しています。

 

(弊社)

さまざまなリスクに遭遇しながら、より良い経営の舵取りをしていくために心がけていることはありますか。

 

(東條総经理)

相談に乗ってもらえる協力者を確保することではないでしょうか。弊社は中国企業の資本参加も仰いでいます。その会社の中国人総経理とは折々会って情報交換を行っており、経営面でのアドバイスを受けることもしばしばです。と同時に、有益な人的ネットワークをもち、それを活かしていくことの意義を思い知らされます。

そう考えてみると、人材流出も決して悲観的な要素ばかりではないかも知れません。中国には紹介や口コミによって顧客を得たり、事業が広がっていく風土があるのは興味深いことです。やむを得ず離職した人材を通じて新たな人的ネットワークが形成される可能性があるかもしれません。

 

◆◆◆  【「先発優位」でノウハウ活用へ】  ◆◆◆

(弊社)

日中関係に激震が走ったほか、新日本製鉄と住友金属との合併(2012年10月)があったりと、近年は経営環境をめぐり目まぐるしい変動がありました。ご苦労も多かったのではないでしょうか。

 

(東條総经理)

上海赴任となって2年弱ですが、まさしく激動の2年間だったと思います。それでも成果はありました。若干時期を遅らせることになったものの、昨年は総領事も来賓に迎え、中国法人設立10周年を祝う式典も催しました。また、2013年度の売上は1億元を超え、これまではまずまずの実績を残せたという手応えがあります。

 

(弊社)

東南アジアやインド等の市場が活況を見せていますが、今後の展望はいかがでしょうか。

 

(東條総经理)

中国でのシステム開発の経験やノウハウには優位性があります。昨年はシンガポールに続きタイにも弊社グループの新たな法人が設立されましたが、日本本社からのバックアップとともに、弊社からもSEを派遣するなどしてフォロー、サポートに当たっています。

お客様のグローバル展開が益々加速されるなかで、日本本社やグループ間での連携の機会がますます多くなっていくことが期待できると思います。さらに我々中国法人の持つノウハウを中国発モデルとして輸出していくことも十分に可能性があると考えています。

 

(弊社)

御社もまた無事に10周年をクリアしましたから、次の目標はとりあえず15周年のセレモニーですね(笑)。

 

(東條総经理)

社員の平均年齢はざっと30歳。若さがみなぎっています。こちらに赴任して間もないときは、なんだか職場全体がキャアキャアと声が鳴り響いているようで少し驚いたものです。しかし、業務が繁忙となれば、見事に集中力を発揮してくれているところを見ると、責任をもってやり抜くという側面が強いと頼もしく思いました。その代わり、プロジェクトが一山越したとなれば、職場は退勤時間を過ぎたとたんに、さぁーと引けて誰もいなくなってしまいます。

 

(弊社)

日本のようなフィジカルプレゼンスがないということですね。

 

(東條総经理)

ひとこと声をかけてくれればいいのに、私だけひとりでオフィスにポツリと取り残されてしまったこともありました(笑)。それでも、メリハリをもって仕事に取り組む体制であるのは大変喜ばしいことですね。(了)

 

 

 【東條 晃己(とうじょう・あきみ) 氏のプロフィール】

 新日鉄住金軟件(上海)有限公司(NSSOL上海)董事・総経理。 1989年、新日本製鐵(現新日鉄住金)入社。現NSSOL(新日鉄住金ソリューションズ)の前身である新規事業部門に配属。主として製造業向けの営業および新規事業企画に従事する。2012年7月より上海に駐在、現在に至る。

 

 【新日鉄住金軟件(上海)有限公司 様 会社情報】

新日鉄住金軟件(上海)有限公司
上海市淮海中路775号 新華聯大厦西館15階 ZIP:200020
Tel: 021-6473-9299  Fax: 021-6472-5867
http://www.nssol-sh.com/

 

新日鉄住金軟件(上海)有限公司 東條総经理様1
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新日鉄住金軟件(上海)有限公司 東條総经理様2
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