ホーム > クローズアップ > 聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第18回

聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第18回

『世達志不動産投資顧問(上海)有限公司  中野 晶仁 董事長兼総経理インタビュー!』2014/6/5


 
世達志不動産投資顧問(上海)有限公司
董事長兼総経理 中野 晶仁 氏

  ● 「女子」力開拓のパイオニアとして業界イメージを一新

  ● モチベーション管理と人事評価は「顧客本位」ベース

 

(弊社インタビュアー)(以下弊社)

売買や賃貸仲介、そして管理にいたるまで、不動産にかかわるワンストップサービスを手がけ、これを核に「総合生活文化企業」として、金融・出版・ホテル・高齢者支援など幅広く事業を展開するスターツグループ。創業45周年を迎え、海外ネットワークは20カ国31都市に拡大しています。その重要な海外拠点のひとつ、世達志不動産投資顧問(上海)有限公司(スターツ・上海)で陣頭指揮にあたるのが中野晶仁董事長兼総経理。グループが蓄積してきた人事施策のノウハウや、中国における今後の事業展望について語っていただきました。

 

◆◆◆  【不動産にかかわるワンストップサービスを展開】  ◆◆◆

(弊社)

上海に長期滞在する日本人の数や対中投資の減少が大きく報じられています。業績への影響はありましたでしょうか?

(中野 董事長兼総経理)

サービスオフィス事業においては日系企業向けに特化している為、稼働率の面で逆風となりました。1昨年まで48室すべて満室だったのが、一時期は入居室数が40を割り込んだのです。最近ようやく挽回してきたものの、若干空室が残ったまま今日に至っています。

ただし、「利便性・安心・ゆとり」をモットーとしたビジネスモデルとして確立しているとはいえ、弊社にとってサービスオフィス事業が稼ぎ頭になっているわけではありません。むしろ他の事業を展開していくためのプラットフォームといってよいでしょう。日系企業海外進出の支援として、駐在員用住宅の賃貸仲介・サブリース、オフィス・工場・倉庫・店舗の賃貸仲介、社宅管理代行、投資用不動産の売買仲介、不動産のコンサルティングなど、不動産にかかわるさまざまなサービスをワンストップで提供していくことが当社のミッションなのです。

昨今の「チャイナ+1」のトレンドに伴う不動産コンサルティングも行なっています。たとえば物件販売で得た資金を東南アジアへ投資するなど、新規ビジネスを開拓していくための機会づくりをサポートさせていただいています。

(弊社)

近年、重点的に取り組まれている事業としてはどんなものがありますか。

(中野 董事長兼総経理)

日本本社を経由した受託となりますが、社宅管理業務のアウトソーシングがあります。背景には、コンプライアンス確保を求める顧客企業の事情があります。これまで総務人事担当者が担ってきた新規契約に伴う手続きや入居期間中の賃料支払い、あるいは相談の受付、更新契約の管理や解約、さらには退去にともなう手続などを弊社が代行するのです。これによって、お客様の業務負担軽減のみならず、中国で散見される社宅規定の不遵守やリベート授受などの不正行為の防止にも役立っています。

じつは不動産サービスを手がける日本独資の会社は中国でも数が限られており、確実性と信頼性という点で安心して弊社をご用命頂けるのではないかと思います。

 

◆◆◆  【あなどれないインセンティブ制度の「負」の側面】  ◆◆◆

(弊社)

日本本社やグループ企業に目を向けると、さらに広範な分野で興味深い取り組みをされているようですね。

(中野 董事長兼総経理)

グループの新卒採用者は今年230名に及びますが、従業員総数でざっと6000名。企業数はというと60社もあり、少々多すぎるという印象を持たれるかも知れません。それぞれの領域で創業の精神を持って業界10位以内に入るというのが各社が設立当初に掲げる目標となります。

(弊社)

グループ全体の社風を見ても異風を放っている印象があります。

(中野 董事長兼総経理)

たしかにそうかも知れません。制度面でひとつ特徴的な例をいいますと、創業時から歩合制を導入しないなど、不動産業界でも珍しい措置をとっています。短期的に売上目標を達成しようとする場合、高いインセンティブを設けることは効果的かもしれませんが、弊害もまたあなどれないのです。仕事の目的がお金優先に傾きがちな歩合制度ではなく、クライアント志向に立ったものを築いていくことが大切なのではないでしょうか。

むろん中国では部分的にインセンティブ制度の導入が必要との判断から、売上目標を達成した従業員を表彰したり、成績の推移をグラフで明示するような試みなどを実施しています。しかし、それもあくまで達成感を得られる程度のものにとどめているのが実情です。

なお、いまのところ社員の業績評価の目安は、賞与において8割、昇給と昇格において5割。顧客本位の価値観にもとづき、会社方針やチームワークを重視しながら制度改革を試みていくのが望ましいと思っています。

(弊社)

メリットとデメリットを見極めたうえで制度導入が必要なのですね。

(中野 董事長兼総経理)

スターツグループならではの様々な活動もあります。

例えば、スターツ・グループでは海外を含めたグループ間人事が頻繁にあります。
又、キャリア・アップ・シートで「海外で働きたい」等の自己アピールができるようにしています。
グループ決起大会やグループ方針発表・表彰・パーティーなどで、多くの現地法人やナショナル・スタッフに参加してもらうことで交流を深めています。

スターツグループでは経営合理化によるリストラは行わないなど確かなポリシーのもとで人事施策が行われてきました。結果として、あらゆる人材が個性・能力・人柄が適材適所で力を発揮できることが社風にもなり、離職率も低くおさまっています。

(弊社)

上海法人の情況はいかがでしょうか。人事施策や社員との親睦向上策で何か工夫はされていますか。

(中野 董事長兼総経理)

そうですね、当社は若い社員が多く30代が中心ですが、月例会議では全員が発表する機会を設けたり、週一回の責任者ミーティングでナショナルスタッフ幹部のコンセンサスを得るなどの活動を定常化しています。

最近の人事施策としては、賞与・昇給に関しては評価基準や評価結果は開示し、評価結果時は個人面談を実施するなど公平性、納得性を高め、課題目標を明確にすることでモチベーションアップを図っています。査定シートや評価方法に工夫を施し能力アップ、STEPアップが実現するようにしています。

設立10周年を迎えた、昨年の10月には「スターツ上海WAY」と題し、社員全員で理念と今後5年後を見据えたビジョンを作成しました。

当社の業務は季節変動要因の大きい労働集約型の職種で、3月4月の異動シーズンには土日出勤が多いのも特徴です。その為、閑散期には集中して代休取得(長期休暇)を推奨するなどの工夫を行なっています。

我々の事業は、現在は日系企業・日本人向けの不動産サービスの提供が中心ですが、最終目標は日本国内のサービスを上海で提供する事です。

社員との交流面でも、ナショナルスタッフを含め社員の結婚式にはどんなに遠方でも参加するなど私自身もふだんから交流に努めており、 月一回は会社全体で食事会を催しています。お店の選定は、「美食」情報通の社員がつねに情報をチェックしているようです(笑)。

そのほか社内旅行も実施しています。今年は千島湖観光の予定です。もし業績目標をクリアできたら、是非沖縄旅行を実現したいと思っています。日本への研修制度以外に社員たちに日本を肌で感じ、理解してもらう機会を設けたいという気持ちがあるからです。

 

◆◆◆  【「多様性」ある人材活用の時代へ】  ◆◆◆

(弊社)

海外拠点で陣頭指揮をとるうえで重要なことは何でしょうか。

(中野 董事長兼総経理)

コミュニケーションではないでしょうか。サービスや業務に対する日本人の要求度はやはり高いものですから、それをどのようにナショナルスタッフに伝達し、彼らとの信頼関係を築き、理念を共有していくかが課題だと思います。

弊社グループでは、かつてリクルーティングにおいて、協調性・主体性など仕事に臨む姿勢をまず最重視し、未経験の新卒者ばかりを採用した時代がありましたが、いまでは多様性を求める時代となり、海外人材育成を目的にグループで外国人人材を積極的に採用しているのは特徴的なことかと思います。

そんな人材のグローバル化の過程で、中国事業においても日本で採用した外国籍の人材を現地に送るケースもでてきました。現在、上海で働く駐在員の一人は台湾籍です。ナショナルスタッフとのブリッジ役という点でも大変心強い存在となっています。

(弊社)

社員の男女の内訳はどのようになっていますか。女性の活用という点で、グループは先進的な試みをされてきたというイメージがあります。

(中野 董事長兼総経理)

スターツ上海は駐在員をふくめ総勢25名の体制です。女性が6割を占めています。もともとピタットハウスをはじめとして、男性が主体となってきた不動産業界に新風を吹き込み、女性社員の比率が高いのがグループの特徴です。インド法人やシンガポール法人の責任者は女性が担当している他にも多数の女性の活躍がみられ、今後も女性のマネージャー、経営者がどんどん輩出してくるかと思います。

 

◆◆◆  【日中関係の促進と平和を見つめたCSR活動】  ◆◆◆

(弊社)

ところで、スポーツの冠大会をはじめ御社グループの名前を目にする機会が少なくありません。最近では、卓球の伊藤美誠選手の活躍に熱視線が集まっているようですね。

(中野 董事長兼総経理)

グループのCSRへの取り組みは多方面に渡ります。協賛イベントの代表的な事例としては、東京マラソンやシニアゴルフトーナメント、全日本大学女子駅伝などが挙げられるでしょうか。そのほか卓球日本代表チームのオフィシャルパートナーや新日本フィルハーモーニー交響楽団への支援もしています。

また、中国においては、2008年には「武漢国際マラソン大会」を日中特別合同協賛で開催しています。武漢市とのご縁は日中友好の民間交流の促進、そして平和への願いを込めて創業者の村石が8000本の桜を同市に寄贈し、戦争孤児の方3名と共に植樹式を行い、平和記念碑を建立させていただいたことから始まりました。

社員の人材育成活動においても、グループはスポーツを重視した取り組みをしてきたといえます。社員数がまだ200名しかいなかった1989年に、研修棟・宿泊棟・スポーツ施設からなるスターツ総合研修センターを茨城県のつくばみらい市に設立したほどです。

 

◆◆◆  【業界のパイオニアとして新たなステージへ】  ◆◆◆

(弊社)

中国ビジネスも転換期を迎えている企業が多いかと思います。この趨勢を御社はどのように受けとめていらっしゃいますか。

(中野 董事長兼総経理)

弊社の上海事業は今後も拡大を続けていきます。5年後にスタッフ数を100名に拡大することも視野に入れています。むろん日本企業だけをターゲットとした市場は頭打ちとなっていますから、むしろ地場のマーケットに入っていけるようにサービスの幅を増やしていきたいと思っています。又、そうせざるを得ない情勢にいま直面しているのだと受け止めています。

具体的な展開としては、今夏中に日本のコールセンター事業と連携し、夜間休日を含めた24時間対応で入居者からの緊急の連絡を受け付けるサービスを展開していきます。日本人が受け付けることで、より安心感を与えることができるのではないでしょうか。

また、上海の富裕層向けに不動産投資セミナーを8月に実施します。 日本国内または東南アジアやハワイ、オーストラリアなどにおける投資用不動産販売に関する情報を発信していくなどの仕掛けをしていきます。

上海法人は昨年10月で設立10周年、グループは今年3月で設立45周年を迎えています。1983年にハワイで和風レストラン事業を展開したのを皮切りに、グループの海外拠点は現在31を数えますが、これを50まで増やすことがひとつのマイルストーンとなります。それゆえ、近い将来、中国でも内陸部に新たな拠点を設けていく可能性があります。不動産サービスのパイオニア として、どこにも負けないサービスの提供を目指していきたいと思います。(了)

 

------------------------------------------------------------------------------------

 【中野晶仁(なかの・まさひと) 氏のプロフィール】

 世達志不動産投資顧問(上海)有限公司(スターツ・上海) 董事長兼総経理 。千葉県出身。
1984年、千曲不動産株式会社(現スターツコーポレーション)入社。日本国内の不動産仲介・開発・管理を手がける。2005年、スターツデベロップメント株式会社取締役、07年、スターツコーポレートサービス株式会社取締役、12年、同常務取締役を経て、13年より現職。
上海日本商工クラブの副理事長(サービス部会長)、渉外委員会委員長。

 

------------------------------------------------------------------------------------

 【世達志不動産投資顧問(上海)有限公司 様 会社情報】

世達志不動産投資顧問(上海)有限公司
200032 上海市徐汇区肇嘉浜路789号均瑶国际广场6F
Tel; (86)21-6125-6888
Fax: (86)21-6125-6868
http://www.starts.co.jp/shanghai/

 

世達志不動産投資顧問(上海)有限公司  中野董事長兼総経理 1
世達志不動産投資顧問(上海)有限公司
中野董事長兼総経理様1

世達志不動産投資顧問(上海)有限公司  中野董事長兼総経理 2
世達志不動産投資顧問(上海)有限公司
中野董事長兼総経理様2