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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第21回

『上海一実貿易有限公司  吉田 寛 董事長・総経理 インタビュー!』2014/9/22


 
上海一実貿易有限公司
吉田 寛 董事長・総経理


  ● 「商社は人なり」人材の育成が飛躍のカギ

  ● 真のグローバル化に対応した構造改革に取り組む

 

(弊社インタビュアー)(以下弊社)

エネルギー資源開発や石油・石油化学関連・エレクトロニクス・プラスチック・医療品、自然環境・宇宙、空港関連設備など多岐な分野に渡る商材を取り扱う第一実業株式会社。その上海法人である上海一実貿易有限公司では、表面実装機を中心とした電子関連を主力に、自動車業界向け各種加工機、自動機組立ラインやプラスチック成形機、自動車関連のプラスチック、化学、メディカル関連など幅広く取り扱っています。グローバル化の進展に伴う急激な経営環境の変化に対応すべく、構造改革に取り組む海外拠点の中でも先頭を走る存在です。上海にて構造改革の陣頭指揮を執る吉田寛総経理にインタビューしました。

 

◆◆◆  【機械専門商社としてアジアを軸にグローバルに展開】  ◆◆◆

(弊社)

御社は機械専門商社としてご活躍されています。

(吉田 董事長・総経理)

アメリカ、ヨーロッパも順調に売り上げを伸ばしていますが、その中で中国を含むアジア地域が急速に成長していますので、特にグループとしても力を入れています。 上海一実貿易有限公司についていいますと、1997年に現地法人を設立し、現在約150名のスタッフが在籍しています。
売上金額は130億円、売上げ構成をみますと、電子関連が60%、自動車関連が30%、残りの10%が化学やメディカル、環境エネルギー関連等となっています。最近では自動車関連の伸びが大きくなっていますね。

 

◆◆◆  【グローバル人材の育成に注力】  ◆◆◆

(弊社)

昨今では駐在員を削減する企業が増えている中で、御社は6人に1人が駐在員という行動的な組織作りをされています。

(吉田 董事長・総経理)

日本の商社なので、どこかで日本が匂わないとダメなんですね。お客様が日系企業であったり、日系メーカーの現地法人であったり、日本人相手の仕事がどこかであります。また、商社は情報活動が大切で、「商社は人なり」と言われるように、人と人との繋がりがそのまま商売に繋がる業界です。特に中国はそれが顕著です。どうしても、日本人は日本人同士繋がりますし、中国人は中国人同士繋がります。弊社は日系企業なので、やはり日本人との繋がりが多くなります。一般的にメーカー系は現地化志向が強いですが、商業系のスタッフには日本人が多く、例えば銀行さんは多いですよね。また、日系の場合、マザー工場は日本にあるので、どうしても日本との連携が多く、こちらの人間が日本のマザー工場に訪問して交渉することも必要になります。そこで、どうしても日本人が必要になります。

(弊社)

御社では多くの日本人駐在員が活躍されていますが、どのようにグローバル人材を育てているのでしょうか?

(吉田 董事長・総経理)

海外研修制度とジョブローテーション制度を採用しています。4年前から海外研修制度を始めまして、これは社員の能力開発や将来の海外駐在員の育成等を目的として、海外拠点において一定期間の実務経験を可能にする制度です。当社でも現在2名の若手社員が研修に来ています。ジョブローテーション制度とは、新入社員が2年間日本で勤務したのち、早期に幅広い業務知識を習得させることを目的として、国内外を含めた職務配置転換を実施する制度です。これらの教育システムを組み合わせる事により、グローバルニーズに対応した人材育成に取り組んでいます。

(弊社)

社員の採用は新卒採用と中途採用のどちらが多くなっていますか?

(吉田 董事長・総経理)

日本側は新卒採用が多いですが、中途採用も積極的に行っています。中国では即戦力を重視しているので特に中途採用が多いですね。

(弊社)

御社はグループで一千人を超える社員が在籍しており、事業拡大に伴うグローバル化により、性別、国籍、社会的背景の異なる人材を積極的に採用しています。そのような中で、ナショナルスタッフに企業文化を理解させ根付かせることが課題となるように思いますが?

(吉田 董事長・総経理)

海外のナショナルスタッフのうちマネージャークラスの人材を集め、日本へ派遣して研修を行っています。ナショナルスタッフ一人ひとりに弊社の企業文化や企業活動の方向性を浸透させることで、グループの一体感や組織の中で働く意識を促進させることができると考えています。

 

◆◆◆  【新しい人事制度への挑戦】  ◆◆◆

(弊社)

御社は、1962年の台湾を皮切りに、1985年の香港、1993年には上海へ進出し(1997年に現地法人設立)、2000年代に入ってからは天津、蘇州、広州、シンセンと半世紀以上にわたり、中国関連のビジネスを展開されていますが、その中で人事面のご苦労も色々あったのではないでしょうか?

(吉田 董事長・総経理)

おかげさまで、当社は設立してから今年の10月で17周年を迎えます。
1997年の設立以来、中国の経済成長と供に売上げは順調に伸びてきましたが、今後も同じペースで市場が拡大していくことは難しいと考えます。それに対して、人件費は早いペースでの上昇が続いている事や、労務派遣の規制強化により、直接雇用を増やす必要があるなど、経営を取りまく環境の変化はますます速くなってきているように感じます。

(弊社)

その中で見えてきた課題はありますか?

(吉田 董事長・総経理)

グループ全体の取り組みについて言いますと、更なる業務を拡大していくために、情報をいかに早く伝えて共有するかが重要になります。そこで来年から、日本国内では地域軸体制から事業軸体制へ切り替えていくことを予定しています。これにより、それぞれの事業が意思決定と経営資源の最適化をグローバルかつスピーディに行い、事業拡大と収益力強化を図ってまいります。ただし海外の場合は、現地法人ごとの採算も考えないといけないので、事業軸体制だけではなく、マトリクスを組んで業務を進めていくことを考えなければなりませんね。

(弊社)

上海法人としての課題はどうでしょうか?

(吉田 董事長・総経理)

やはり人事制度の見直しとナショナルスタッフの教育でしょうか。特に中国では、ナショナルスタッフに活躍してもらわないと経営が成り立ちませんからね。

(弊社)

日系企業全体にいえますが、人事に関して今一番の課題は、2008年の労働契約法施行により、労働者保護が強化された事に始まり、一人っ子政策の緩和や労務派遣の規制強化による直接雇用を中心とした雇用体制への移行など労働条件を左右する環境の変化への対応であり、総合的に人事制度を見直す時期にきているのではないかと思います。

(吉田 董事長・総経理)

今までは本社の制度をベースとした人事制度を運用してきましたが、だんだんと現地の実情と合わなくなってきているというのが正直なところです。こんなところは中智さんの力を借りたいところですね。

(弊社)

この点でお力添えできれば光栄です。どの点に制度上の課題を感じますか?

(吉田 董事長・総経理)

中国では、営業職にインセンティブ制度を設けることが一般的で、ボーナスは売上げに応じて決まるようになっています。この制度のおかげで、社員のやる気を引き出して頑張りに繋がるという良い面はあるのですが、マイナス面もあります。

(弊社)

具体的にいいますと?

(吉田 董事長・総経理)

インセンティブを強調しすぎることで、売り易くインセンティブを得やすい商品の販売ばかりに力を入れがちになる事が心配です。専門商社といえども、売れるからといってひとつの商品ばかり売るのでは問題です。お客様のニーズに応えて幅広く商品を取り扱う必要があります。また会社は常に、事業領域を拡大、開発していく必要もあります。専門性の追求と新規開発のバランスを取れるような仕組み作りが難しいですね。

(弊社)

その点については、開発のインセンティブを上げるなど、人事制度を工夫することで対応は可能です。
教育面での課題はどうでしょうか?

(吉田 董事長・総経理)

当社は中途採用が多く、また社員数もどんどん増えてきていることから、教育制度をしっかりやっていく必要性を感じています。専門知識はもちろんですが、日系企業としてのマナーや企業文化という基本的な部分もしっかり教えていく研修制度の整備が必要です。

(弊社)

弊社は、業績管理や目標管理、日系企業のマナー、営業スタイルなどの一日や半日単位の企業研修を行っていますので、ぜひ積極的にご利用頂ければ幸いです。

(弊社)

ところで10月に上海で、人事の会議を開催されるそうですが?

(吉田 董事長・総経理)

中国、アセアン、欧、米の4拠点にある現法の人事担当者を集めた会議を日本第一実業の管理部門主催で上海で開催する予定です。賃金などコストの上昇という問題は中国に限らず他の地域でも抱えている問題であり、国や地域が異なっていても似たような課題に直面している傾向に気がつきました。そこで、いちどグループ全体でどの様な問題を抱えているかについて情報を共有する目的で開催することになりました。

(弊社)

欧米、中国、日本などの壁を越えたグローバル視点の人事制度の体制作りに大いに期待しています。

 

◆◆◆  【中国でも「社会の繁栄に寄与する」企業でありたい】  ◆◆◆

(弊社)

御社では「社会の繁栄に寄与する」という経営理念のもと、CSR活動に積極的に取り組んでおられます。

(吉田 董事長・総経理)

中国で商売をしているので、この中国の地でのCSR活動も重要な課題として取り組んでいます。
社員みんなで品物を持ち寄ってフリーマーケットに出店し、売上げをCSR活動の資金に充てています。
具体的な活動としましては、定期的に老人ホームへ慰問に行き、毎回異なった内容のイベントを開催しております。例えば、中国の漫才、春節前の餅つきなど、この前はレストラン仕立てで、社員の得意料理を振る舞いました。私は残念ながら仕事の都合で参加できなかったのですが、事前にハヤシライスを作って差し入れたところ、有難いことに完食して頂いたそうです。

 

◆◆◆  【“知る人ぞ知る”業界の雄を目指して】  ◆◆◆

(弊社)

最後に、今後の展望についてお聞かせ下さい。

(吉田 董事長・総経理)

中国は、まだまだ市場として伸びていくと考えています。ただ、今の状況を考えると、新しい分野、例えば医療機器やメディカル関連材料、新素材の方向へ追求していく事が必要と考えています。ただそれは、現在の重点事業や、中国での経営環境とのバランスを踏まえた検討が必要と考えています。
又もう一つの視点は、中国製品の日本又は第三国への紹介・供給です。中国の技術レベルも向上しており、品質と価格でニーズとマッチしたものも色々出てきています。中国現地での地の利を活かしたグローバル調達も今後の展望と考えています。
DJKの事業は、いわゆるBtoB型であり、一般消費者に名前の知れたBtoC型とは異なるところがあります。それだからこそ、業界の中で“知る人ぞ知る”業界の雄として活躍していきたいと考えています。私どもの専門である設備機械に関しては、「一実」に問い合わせれば間違いない、その丁寧さに自信があります。 (了)

 

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 【吉田寛(よしだ・ひろし) 氏のプロフィール】

 上海一実貿易有限公司 董事長・総経理
大阪府出身。1975年兵庫県立大学(旧姫路工業大学)卒業後、第一実業株式会社に入社。入社後は大阪支店の化学機械部門へ配属。その後、化学機械部部長、大阪事業本部取締役副本部長を歴任し、2011年4月より取締役兼執行役員、上海一実貿易有限公司董事長兼総経理として上海に赴任、現在に至る。

 

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 【上海一実貿易有限公司 様 会社情報】

上海一実貿易有限公司
上海市長寧区遵義路107号 安泰大楼1302‐06室
Tel(021)6237‐5800
FAX(021)6237‐5288
http://www.djk.co.jp/
http://www.djksh.com/

 

上海一実貿易有限公司  吉田寛 董事長・総経理1
上海一実貿易有限公司 吉田寛 董事長・総経理1

上海一実貿易有限公司  吉田寛 董事長・総経理2
上海一実貿易有限公司 吉田寛 董事長・総経理2

  
インタビュー参加の枝崎様
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インタビュー参加の管理部  王 长玮様
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