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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第22回

『上海樱花文化用品有限公司  南本 龍作 総経理 インタビュー!』2014/11/20


 
上海樱花文化用品有限公司
南本 龍作 総経理


  ● 自分の言葉で社員と交流

  ● 「明るく夢のある会社」をスローガンに「3M」活動を推進

 

(弊社インタビュアー)(以下弊社)

1921年の創業から一世紀近く、クレパス、クレヨンなどの絵画用品をはじめ、布にも書きやすいマーカーなどの筆記用具と、教育・文化に貢献する事を社是に掲げ、教育現場に適した材料を研究開発し、最適な商品を世の中に提供し続けているサクラクレパス。その中国における生産拠点である上海樱花文化用品有限公司の総経理に今年の5月に就任し、徹底した現地化や、工場の制度改革に取り組んでおられる南本総経理をインタビューしました。

 

◆◆◆  【93年の歴史を誇る老舗企業】  ◆◆◆

(弊社)

はじめに、サクラクレパスの名前の由来からお聞かせ下さい。

(南本総経理)

弊社の歴史は、1921年に日本クレヨン商会が設立され、同年9月にサクラクレヨン商会に改称されたことに始まり、1926年に、世界で初めてクレパスを発明します。その後1970年には社名をサクラクレパスに改称し、現在に至ります。国花である“さくら”の名称と図柄を製品や社名に冠したのは、最高品質の製品を提供することによって、教育・文化に貢献し、国の繁栄とともにあゆむことを企業理念としたからです。   

(弊社)

御社の代表的な製品と言えば、クレパスですが、クレパスとクレヨンではどこに違いがあるのでしょうか。

(南本総経理)

社名にもしているクレパスですが、クレヨンとの違いについて説明しますと、クレヨンは硬く、線を描くのに優れています。そこで、クレヨンは線でしか表現できない幼稚園児が使うのに適しています。ところが、小学生くらいになると、線だけでは物足りなくなり、色を塗りたくなりますが、クレヨンだと硬すぎて面を塗るには向いていません。それに対してクレパスは、クレヨンより柔らかいので、面を塗るのに優れています。

(弊社)

1921年から数えて、今年で創業93年を迎えますが、これほど長く企業が続いてきた秘訣は何だと思われますか。

(南本総経理)

やはり、子供の教育に携わっているなかで、どうすれば子供たちがより良く使えるか、商品の研究を地道に行い、子供にあった商品を提供し続けてきた事でしょうか。1926年に世界に先駆けてクレパスを発明したことに始まり、1959年には油性マーカーの「サクラカラーインキ」、1969年には、幼稚園や学校で使う衣服に名前を書く必要から、布生地に書けて洗濯しても落ちにくいマーカーの「マイネーム」、そして1973年には「クーピーペンシル」と常に子どもたちや教育現場のニーズに応えるような、新しい製品を開発し続けています。そのほかに、人材面で言うと、社員一人ひとりを大切にしているという事があると思います。

(弊社)

日本では少子化が進んでいますが、その影響は受けていますか。

(南本総経理)

ご指摘の通り、日本では少子化の影響で、市場が縮小してきています。やはり、長く経営を続けていくためには、どの様に売上げを拡大していくかが課題となります。一つは、海外のマーケットを開拓すること。もう一つは、今まで培ってきた技術やノウハウを他の分野に応用する事でしょうか。

(弊社)

技術やノウハウの他分野への応用とは、具体的にどの様なものがあるでしょうか。

(南本総経理)

例えば、絵具などの描画材の技術を工業用や医療用、マニキュアなどの材料として活用を行っています。とくに色彩技術の蓄積が医学分野における「滅菌インジケーターインキ」の開発に結びつき、当社の事業分野は、さらに広がり充実をしております。

(弊社)

現地法人についてお聞かせ下さい。

(南本総経理)

1993年に現地法人を設立しました。これは、会長の方針により、こちらで市場が出来てから進出するのではなく、将来、市場が出来る事を見据えて比較的早い時期に進出を決断したと聞いています。現在、従業員は約220名で、男女比は男性が2割、女性が8割となっています。中国工場で生産している製品は、クレヨン、クレパス、インク関係、絵具、画筆など、多品種少量生産で行っています。化粧品のようなケースに入った固形の水彩顔料も生産しており、最近販売が伸びています。製品は、日本向けが75%、中国国内向けが25%となっています。日本向けには、日本を中継地として欧米に輸出する製品も含まれています。

 

◆◆◆  【公用語は中国語、徹底した現地化を実現】  ◆◆◆

(弊社)

南本総経理のこれまでの経歴をお聞かせ下さい。

(南本総経理)

大学卒業後、某電機メーカーに就職しました。そこでは購買部を17年、生産管理を2年、製造を2年経験し、ひと通り工場の事は理解できるという事で2002年に江蘇省無錫の工場へ工場長として赴任しました。そこでは文化の違いや、ちょうど日中間の政治問題が悪化している時期でもあり様々な苦労がありました。その後、日本に戻り、中国の物流改革に携わっていましたが、その業務も落ち着いた事もあり、今年の3月にサクラクレパスに転職し、5月から現地法人の総経理に就任しました。

(弊社)

日本人は総経理1名だけだと聞いていますが、たった1名で220名の中国人従業員を管理するのは、大変なご苦労があるのではないでしょうか。

(南本総経理)

工場長と管理部長がしっかりしているので、大きな苦労はないですね(笑)。どの会社もゆくゆくは日本人1名だけにしたいと考えているのではないでしょうか。そういう意味では、理想的な会社の姿ではないかと思います。

(弊社)

日本人総経理1名で、うまく管理するための秘訣はありますか。

(南本総経理)

10数年中国と関わりながら働いてきた経験があったからこそ、可能な部分もあるかと思いますが、やはり現地の社員たちとの交流がとても大切だと感じています。

(弊社)

具体的には、どの様に社員たちと交流を図っていますか。

(南本総経理)

一つめは、毎日朝礼を行うことです。その際、月曜日はどの部署、火曜日はどの部署という様に、毎日違う部署の朝礼に顔を出して従業員と顔を合わせるようにしています。二つめは、朝会です。9時から部門の責任者を集め、前日の問題点や困っている事の報告や指導を立ったまま行います。立ったまま行うのは、座るとどうしても会議が長くなるので、端的に効率よく行うためです。三つめは、午後から行う各現場の巡回です。これは、各部門の当初目標が順調に進捗しているか、又朝会で報告があった各部門の問題点の改善や対策が指導したとおり順調に進んでいるか確認をするために行っています。ひとつの「見える化活動」ですね。大きくこの三つを毎日行うことで、交流しています。そして、交流するためには、私が中国語を使うという事がスタートになります。したがって、朝礼や朝会はすべて中国語で行っています。

(弊社)

社内交流を全て中国語でされるとは、中国語が堪能なのですね。

(南本総経理)

いえいえ、とても堪能といえるレベルではありません。(笑)

(弊社)

通訳を通さずに、中国語で直接伝える事にこだわる理由は何でしょうか。

(南本総経理)

無錫の工場で工場長として赴任していた時期に、中国語を一生懸命勉強しようと思いました。その当時、通訳が3名就いていましたが、通訳の言葉には喜怒哀楽がないので、言葉に表情が無く、なかなか従業員にニュアンスが伝わらない。通訳の上手な中国語より、自分が直接に下手な中国語で伝えた方が、相手に伝わると感じました。とはいうものの、下手な中国語なので、どうしても、日本語が理解できる中国人のほうがよい。そこで、制度として、この会社特有の日本語手当てを創設しました。

(弊社)

具体的にどの様な制度でしょうか。

(南本総経理)

筆記テストと面接を行うのですが、問題は全て私が作ります。普通の日本語検定とは全く異なり、この会社で働く上で役に立つ実践的な日本語をテストし、手当てを付けます。日本語のテストを行うことの、もう一つの効果は、自分が外国語を学ぶと外国人の気持ちが理解できるようになり、下手な中国語でも一生懸命聞こうという態度や、外国人に対してゆっくり中国語を話すなどの配慮をする事ができるようになります。つまり日本語を勉強する事で、和の文化や、他人へ配慮する事も理解するようになります。

(弊社)

御社は、社員の教育にとても力を入れておられます。弊社が毎月開催している会員向けのセミナーにも積極的にご参加頂き、有難うございます。少しでも社員の方の能力や意識の向上にお役にたてれば光栄です。

(南本総経理)

実は、朝会や見える化活動も教育の一種だと考えています。みんながどの様な管理をしたらいいのか、ある問題についてどう考えたらいいのか、具体的に一緒に考えるよい機会になります。勉強して知識をつけても、それを実行できるかどうかは別問題です。知識はあっても、自ら実行できる人が少ない。いざ自分の業務に活かす事ができない。このような問題をどうやってカバーするか考えたときに、違った視点を学ぶ意味でも、定期的に外部の講師から研修を受け、そこで得た知識を朝会や見える化活動の中で実際の業務に置き換える方法が有効ではないかと思います。

 

◆◆◆  【3M活動で、工場改革に取り組む】  ◆◆◆

(弊社)

近年、急激な円安や人件費などのコスト上昇から工場を東南アジアや中国の内陸部に移転する動きがありますが、御社はどの様に考えているでしょうか。

(南本総経理)

東南アジアに進出するかどうかは別の問題として、中国市場を拡大していく意味でも現地生産を続けたいと考えています。しかしながら、毎年10%近く人件費が上昇していく中、このままでは生産が難しくなることが予想されます。そこで、原料の現地調達の比率を現在より増やして為替のリスクを下げることや、今年からSF(シャンハイファクトリー)改革に取り組んでいます。

(弊社)

SF改革とはどの様なものでしょうか。

(南本総経理)

まず、総経理就任の初日に「明るく夢のある会社」をスローガンとして掲げ、3M活動を方針とする事を、全て中国語で発表しました。3Mとは、①魅力ある工場、②見える工場、③見せる工場の頭文字から名付けています。具体的には、①魅力ある工場とは、会社として利益の出せる工場にする、利益がでれば社員にも還元できるということ。②見える工場というのは、今日の生産は遅れているかどうか、問題があるかどうか、聞かなくてもわかるように、「見える化」しましょうという事です。③見せる工場とは、お客様が来られた時に、見てもらえるような環境を整える事です。例えば、きれいに清掃したり、守衛室を整備したり、職場環境を変更するということです。このように会社らしく、当たり前のことを当たり前にしていこうという活動です。

 

◆◆◆  【中国の教育・文化に貢献】  ◆◆◆

(弊社)

「教育・文化に貢献する」という経営理念のもと、日本では美術展の主催や協賛をされたり、ぬり絵教室を開催されるなど、さまざまな文化活動を行っています。中国では、この様な活動はされているのでしょうか。

(南本総経理)

青少年活動の施設である「青少年宮」を通じて、サクラ杯の開催や、画家に画材を提供するなどしています。今後は、小学生の工場見学など、絵を描く楽しさや製品の事を子供たちにもっと知ってもらう活動をしていきたいと考えています。

(弊社)

最後に、今後の展望についてお聞かせ下さい。

(南本総経理)

中国では、毎年約20%の成長率で伸びているので、今後もこの勢いを維持していきたいですね。そのためには、貿易会社と工場が協力して、中国向けの商品開発にも力を入れていきたいと考えています。

(弊社)

本日は、お忙しい中、長時間のインタビューにご協力頂き、有難うございました。

 

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 【南本 龍作(みなみもと りゅうさく) 氏のプロフィール】

 上海樱花文化用品有限公司  総経理
1981年関西学院大学商学部卒業、1981年某電機メーカー入社。購買17年間、生産管理課長2年間、製造部長2年を経験した後、2002年から中国無錫工場長に就任。3年経過後、物流部長として、中国の事情を熟知していることにより中国物流改革で大きな成果をあげる。2014年3月サクラクレパスに転職。同年5月上海櫻花文化用品有限公司の総経理に就任し現在に至る。

 

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 【上海樱花文化用品有限公司 様 会社情報】

上海樱花文化用品有限公司
上海市闵行区黎安路1603号
Tel(021)6488‐0278
FAX(021)6492‐6177
http://www.craypas.cn

 

上海樱花文化用品有限公司  南本 龍作 総経理1
上海樱花文化用品有限公司 南本 龍作 総経理1

上海樱花文化用品有限公司  南本 龍作 総経理2
上海樱花文化用品有限公司 南本 龍作 総経理2