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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第23回

『上海大和衡器有限公司  廖 有鈞 総経理 インタビュー!』2015/1/23


 
上海大和衡器有限公司
廖 有鈞 総経理


  ●  技術開発こそ最良の人件費対策

  ●  中国のニーズに合わせた製品開発

 

(弊社インタビュアー)(以下弊社)

1945年に川西機械製作所の製衡部が、大和製衝株式会社として独立。はかり専門メーカーとして、家庭で使うヘルスメーターや料理用の計量はかりなどの普通はかり、産業の発展とともにトラックの重量計測や製鉄所、発電所で使用する計量器などの工業用はかり、食品や医薬品、飼料などの定量充填に使うような自動はかりを『三本柱』とし、あらゆる分野の計量ニーズに応える製品を扱う。その大和グループ唯一の海外生産拠点である上海大和衡器有限公司の総経理として中国市場に合った製品開発や従業員の安定化・活性化に取り組んでおられる廖 有鈞総経理をインタビューしました。

 

◆◆◆  【創業以来、一本筋の通ったはかり専門メーカー】  ◆◆◆

(弊社)

はじめに、御社のご紹介をお願いします。

(廖 総経理)

当社は川西機械製作所の製衝部として発足し、45年に製衝部が大和製衝株式会社として独立し発足以来、一貫してはかり専門メーカーとして歩んで参りました。新しい計量機器とそのシステム開発によって社会に貢献する一方、家庭における健康管理 関連機器の技術革新に取り組み、生活の近代化と合理化に専心してまいりました。その間、常に「技術のヤマト」を自らに課すとともに、「私たちは、お客様から満足される製品を提供します」という姿勢を品質方針に掲げております。   

(弊社)

川西機械製作所の時代から数えると、95年の歴史があります。ここまで企業が長く続いてきた秘訣は何だと思われますか。

(廖 総経理)

時代のニーズに合ったものを作り続けてきたからだと思います。家庭で使うヘルスメータや料理用の計量はかりから、産業の発展とともにトラックの重量計測や、製鉄所、発電所で使用する計量機など工業用はかりの開発を進め、今はお菓子などの食品や医薬品、飼料などの定量充填に使うような自動はかりへとシフトしてきています。

(弊社)

御社は、「信頼・技術・創造」を社是とされています。

(廖 総経理)

弊社ははかりを扱うメーカーですから、製品に対する信頼が大切なことは言うまでもありません。そのためには、会社に対する信頼、従業員に対する信頼なくして製品に対して信頼して頂く事はできません。そして技術がないと、メーカーとして成り立ちません。創造については、今の時代、他社のコピーをするだけでは生き残る事は難しくなっています。時代のニーズに合った新しい製品を生み出し続けるために大切です。

(香西 副総経理)

本社の社長は今でも、率先して技術開発を行っており、社内で一番多く特許を取得しています。全社を挙げて新しい技術を開発するため、毎年、本社主導でビジネス企画を実施しており、その中で中国向けの新技術、新製品も開発しています。上海では、『名牌産品』と『高新技術企業』の看板も取得しました。

 

◆◆◆  【中国市場のニーズに合わせた製品開発】  ◆◆◆

(弊社)

現地法人についてお聞かせ下さい。

(廖 総経理)

1990年に中国国有企業と合弁で現地法人である上海大和衡器有限公司(以下、上海大和)を設立しました。現在、従業員は約250名、駐在員は5名となっています。上海大和は唯一の海外生産拠点であり、販売は、中国国内向けが55%、日本を含む海外向けが45%となっており、輸出は全て日本の本社を通して行っています。中国へ進出した当初は、家庭や一般商店向けの普通はかりの生産から開始し、その後中国の経済発展に合わせて工業用はかりへとシフトしています。昨今の食品安全意識の高まりや、人件費の高騰から、食品の自動充填包装を行う自動はかりの需要も伸びてきています。

(弊社)

日中合弁企業ならではの難しさやご苦労はありましたか。

(廖 総経理)

現地法人を設立した90年から98年にかけて、合弁相手の中国国有企業がマジョリティーを取得し、中国企業の主導で普通はかり、小型はかりなどを中心に生産していました。  98年以降は、増資を行い日本大和がマジョリティーを取得し、ちょうど同じ時期に陸家嘴から現在の場所に工場を移転しました。日本大和がマジョリティーを取得してからの2、3年間は日中間の経営理念の違いからギクシャクがありましたね。具体的には、中国企業はトップダウンの経営となる傾向が強く、この点、ボトムアップを中心とする日本的な経営との間で多少の摩擦がありました。その後、合弁相手の国有企業が民営化され、2008年からは、中国側の株式持ち分が国有資産管理委員会に移されるに至り、現在は実質的に日本側が経営を行っています。

(弊社)

御社では、中国ローカル企業のお客様も比較的多いと聞いています。中国で受け入れられる為の工夫などがあればお聞かせ下さい。

(廖 総経理)

上海大和の技術は、基本的に本社の技術を持ってきていますが、しかし日本とは違う中国市場特有のニーズがありますので、そのまま持ってきてもニーズに合わない部分があります。従って、現地法人でも開発を行っており、中国政府から高新技術企業として十数年間連続で認定を頂き、また上海の有名ブランド商標の認定も取得しています。このような弊社のはかりへの信頼から、例えば宝山製鉄所では、使用しているはかり全体の8割に弊社の製品を使用して頂いています。

(弊社)

日本にはない中国特有のニーズから生まれた製品としては、どの様なものがありますか。

(廖 総経理)

面白い製品をご紹介しますと、トウモロコシの種子の数を数えて袋に充填する装置があります。中国はトウモロコシの生産量でアメリカに次ぐ世界第二位を誇ります。中国ではトウモロコシの種子を農家に販売する際、種子の数量で販売するのですが、たとえば一袋八千粒で販売する場合、八千粒よりも少ないと、農家からクレームが寄せられます。かといって多めに入れすぎると商売になりません。そこで、少し多めに入れるようにうまく数量を調整する必要があるのですが、ご存知のようにトウモロコシの種子の大きさや重さは、先端と付け根ではかなり異なり、単純に重さを量るだけではうまくいきません。そこで、弊社では、カメラを使って個数を数えて、その重量を量り、サンプリングしながら重量の補正をすることで、大きさのバラつきが大きいトウモロコシの種子の数量を高い精度で量ることがきる製品の開発を実現しました。この製品は、中国政府の科学技術賞で2等賞を受賞しました。

 

◆◆◆  【OBも大切にする社風が従業員の愛社精神を養う】  ◆◆◆

(弊社)

2008年の労働契約法制定以降、年々人事管理の難しさが増してきています。

(廖 総経理)

90年に現地法人を設立する際、合弁相手の従業員を全て抱え込む形でスタートしたので、それこそ勤続30年を超える従業員も在籍しています。あの時代と比べると、年々労務問題の扱いが難しくなっており、中には無期限の労働契約を鉄飯碗(食いはぐれる心配の無い雇用)と誤解している従業員もいます。

(弊社)

そういう中で、無期限の労働契約を避けるため、2回目以降の労働契約の継続は行わない企業の話もよく聞きます。

(廖 総経理)

弊社では、先ほど述べた経緯から、無期限の労働契約を締結している社員がたくさん働いています。また、会社としても意図的に無期限の労働契約を避けるような事は行っておりません。雇用は会社の責任と考えており、40代、50代の従業員が「明日から会社に来なくていいよ」と言われると、従業員も生活に困ってしまいます。そういう中で円滑な人事管理を行うには、公平性が一番大切ではないかと思います。特に給与、昇給、残業や福利厚生について公平に扱う事が大切です。

(弊社)

近年、特に製造業を悩ます問題に解雇の問題のほか、従業員の定着率の問題が言われています。御社では、雇用の安定化のためどの様な対策や工夫をされていいますか。

(廖 総経理)

弊社では、従業員福利の充実に力を入れています。外地から出稼ぎの従業員が比較的多いため、社宅を一括借り上げして提供したり、社員食堂の環境改善などに取り組んだりしています。最近は従業員の要望を受け入れて、運動器具を設置しました。ほかに、弊社では毎年旧正月の前に、定年退職したOBを招待して忘年会を開催しています。会社を離れて20年以上になるOBも参加して頂いています。この取り組みは、定年退職者を慰労し喜んで頂くという意味だけでなく、在職者もこの様な取り組みを見て、定年退職後も会社は暖かく接してくれると感じ、安心して永く働いてもらう事ができ、会社への愛着心に繋がると考えています。

(弊社)

御社では人事制度において気を付けている点や工夫している事はありますか。

(廖 総経理)

弊社の人事制度は基本的には、日本の人事制度をそのまま使用していますが、運用面では日本よりメリハリをつけるよう工夫しています。例えば、日本ですと人事評価で1点や2点の差しかつかない場合が多いですが、中国では同じ制度を使っても、はっきりと点差をつけるようにしています。そうしないと、頑張っている従業員にどうしても不満が出てきてしまいます。そして、きちんと公平な評価に基づく差であれば、従業員に納得してもらえます。

 

◆◆◆  【技術開発こそ人件費対策】  ◆◆◆

(弊社)

毎年当然のように10%前後の昇給が続いていますが、人件費の高騰に対してどの様な対策を講じていますか。

(廖 総経理)

人件費の絶対額が上昇する事は、避けられないと考えています。いちばんの対策は、技術開発にあると考えています。高い技術により高付加価値の製品を生み出す事で、高い利益率を維持し、従業員に還元するというサイクルを維持しています。ほかの対策としては、人をあまり増やさないよう、経営の効率化を図るほか、信頼できる外注先企業を探し、育てることで業務量の増加に対応しています。

(弊社)

総経理に就任され、実際に経営を見る中で、人事制度など改善すべき点や改革すべき課題はありますか。

(廖 総経理)

弊社は90年操業と中国では歴史の長いほうですので、40代、50代の従業員が比較的多くなっています。そんな中で若い社員が昇進したり発展したり出来るチャンスを整えてあげたいと考えています。

(弊社)

会社の規模だけでなく、成長の段階によって人事管理の課題は異なります。御社のように創業期を経て安定期に入り、ある程度ベテラン従業員が増えてくると、今度は若手従業員の発展性を確保し、いかにやる気を引き出し永く会社で働いてもらうかが課題となります。それに合わせて人事制度を見直す時期に来ているかもしれません。

 

◆◆◆  【高い技術力で産業構造の変化をチャンスに】  ◆◆◆

(弊社)

近年、人件費などコストの上昇から工場を海外や中国の内陸部に移転する動きがありますが、御社はどの様にお考えでしょうか。

(廖 総経理)

 本社は、Chinaプラス1という考えはあり中国以外へ生産拠点の設立も検討しています。しかし、上海大和ほどの規模は想定しておらず、引き続き海外生産拠点の軸足は中国に置くことを考えています。弊社の対応を述べると、現在、外注先が上海近郊に偏っているので、内陸部も調査をしていくことを検討しています。しかし、品質の問題や輸送コストなどを総合的に考える必要があり慎重に検討を行う必要があります。

(弊社)

最後に、今後の中国での展望をお聞かせください。

(廖 総経理)

中国は今、産業構造の大きな転換期にあります。その中で政府が提唱している「4つの化」、つまり①城鎮化(都市化)、②農業の現代化、③情報化、④工業の高度化という方針に沿って、日本の高度な技術を応用して中国国内市場をけん引していく事を目指しています。海外に対しては、大和グループの生産拠点として、品質、コスト、納期を厳しく守り、グローバル製品を世界に輸出していきたいですね。世界一、中国一を目指しています。

(弊社)

本日は、お忙しい中、長時間のインタビューにご協力頂き、有難うございました。

(2時間近くのインタビューの間、廖 総経理と香西 副総経理からは和やかな雰囲気が感じ取られ、日中合弁の理想的な姿が実現されていると思いました。)

 

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 【廖 有鈞(りょう ゆうきん) 氏のプロフィール】

 上海大和衡器有限公司  総経理
上海外国語大学を卒業後、宝山製鉄所に入社。その後国費留学生として日本へ留学し鉄鋼の専門知識を学んだ後に帰国、宝山製鉄所へ勤務。その後再び日本静岡大学へ留学、卒業後日本で日系商社を経て大和製衝株式会社へ入社。5年前に現地法人である上海大和衡器有限公司の総経理へ就任し現在に至る。大和製衝株式会社に入社して今年で22年になる。

 

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 【上海大和衡器有限公司 様 会社情報】

上海大和衡器有限公司
上海市浦東新区合慶工業区慶達路368号
Tel(021)5897‐1177
FAX(021)5897‐6807
http://www.yamatosh.com

 

上海大和衡器有限公司  廖 有鈞 総経理
上海大和衡器有限公司 廖 有鈞 総経理

上海大和衡器有限公司  廖 総経理、香西 副総経理
上海大和衡器有限公司 廖 総経理、香西 副総経理