ホーム > クローズアップ > 聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第30回

聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第30回

『日経BP中国社 藤田 憲治 董事長兼総経理 インタビュー!』2015/11/12


 
日経BP中国社
藤田 憲治 董事長兼総経理


  ●  「現地社員に任せる」が中国での成功の鍵

  ●  新常態時代こそ「社員教育」が不可欠

 

(弊社インタビュアー)(以下弊社)

日本国内で、雑誌・書籍などを発行する出版事業、スマートフォン、PCなどに向けてビジネス情報発信するデジタル事業、展示会・セミナーなどのイベント事業、調査・コンサルティング事業など、多種多彩なメディアとサービスを駆使して、高付加価値の先端・専門情報を提供している日経BP社。その中国法人の董事長兼総経理に就任し、今年の3月から着任された藤田 憲治さんに中国ビジネスについて伺いました。

 

◆◆◆  【1969年にBtoBのビジネス専門出版社としてスタート】  ◆◆◆

(弊社)

まずは、御社の沿革と事業内容についてお聞かせ下さい。

(藤田 董事長兼総経理)

弊社は1969年に、日本経済新聞社と米国でBtoBの経済専門紙を出版していたマグロウヒル社が合弁し、日経マグロウヒル社として設立されました。当初はご契約頂いた読者へ直接雑誌をお届けするBtoBの専門出版社としてスタートしました。1988年には、マグロウヒル社の持ち株を日経新聞社に全部譲渡し、日経新聞社の100%子会社となったのを機に、社名も現在の日経BP社となりました。
現在は出版事業で得た読者をベースに、Webサイトやメールマガジンなどのデジタルメディア、展示会、教育事業、調査コンサルティングなど多彩な情報提供手段で情報ニーズにお応えしています。

(弊社)

御社は海外展開にも注力されていますが、御社の海外戦略をお聞かせ下さい。

(藤田 董事長兼総経理)

日本国内で日経BP社の強みは、ビジネス専門情報を扱っている事と、企業様に対しての強いブランド力を持っている事だと考えています。かたや中国はじめアジアを見渡すと、日経BP社のような存在が必ずしも各国にある訳ではありません。そこで我々の長所をうまく海外に対応し、海外の企業もしくは、海外に進出している日本企業に対して、何かお役にたてるのではないかというのが海外戦略の基本です。各国の事情により進出の仕方は異なりますが、中国でいうと、ビジネスマン向けのセミナーや教育事業、イベントなどをうまくカスタマイズして提供することで中国の方々に貢献したいと考えています。中智さんと業務提携する意味は、中国で足場のしっかり持っている大企業と組む事で、日経BP社が日本で持っている良いコンテンツを中国でスムーズに展開したいという想いからです。

 

◆◆◆  【中国では、開発区への企業誘致や展示会ビジネスを展開】  ◆◆◆

(弊社)

日経BP中国社は、2012年に駐在員事務所から独資の法人に昇格されました。中国ではどの様なビジネスを展開されていますか。

(藤田 董事長兼総経理)

弊社は、日本でBtoBの雑誌やウェブを出しており、多くの会員読者がいます。ちょうど2000年後半から中国の開発区から日本企業誘致のニーズが高まり、会員読者に開発区を紹介するイベントが盛況であったこと、そのほか北京での液晶関連のイベントなど、いくつか大きな案件があったこともあり、業務拡大など経営的な観点から上海で独立法人を設立しました。

(弊社)

中国で展開するビジネスについて具体的にお聞かせください。

(藤田 董事長兼総経理)

企業誘致に関しては、中国各地の開発区の方を日本に招いて日本でのセミナーを開催し、弊社の読者から参加者を募り、中国各地にある開発区の良さを紹介して企業から中国への投資を誘致するお手伝いをさせて頂いています。
また北京では、2010年から毎年10月に中国の業界団体である北京液晶分会と共催で液晶のカンファレンスを開催し、日本から技術者や中国のパネルメーカーに材料を売り込みたい企業などを招いています。弊社は20年前から横浜市で同様の液晶カンファレンスを主催してきましたが、中国側から日本で行っているような液晶カンファレンスを中国でも開催したいという要望を頂いたことをきっかけに、6年前から協業させて頂いています。

(弊社)

藤田董事長兼総経理のご経歴をお聞かせ下さい。

(藤田 董事長兼総経理)

1965年に徳島で生まれ、高校卒業まで地元で育ちました。大学進学の際、これからはコンピュータの時代になると言われていたので、早稲田大学電気工学科に進学しました。当時は電気工学や電気通信が学生に人気がありましたね。大学卒業後、電機メーカーに就職し、エンジニアとしてプログラムを書いていましたが、約2年半で退職し日経BP社に中途入社しました。

(弊社)

理系のエンジニアから出版社への転職はユニークに感じますが。

(藤田 董事長兼総経理)

一般的な出版社のイメージとは異なり、当時の日経BP社は、私のような一度メーカー勤務を経験して中途採用された理系出身者が多数働いていました。技術と経営の専門会社なので、当時は中途採用が多かったんですよ。

(弊社)

日経BP社に入社されてからの経歴をお聞かせ下さい。

(藤田 董事長兼総経理)

入社後は、主にコンピュータ関連の分野を担当し、1995年夏から約1年間、米国シリコンバレーに駐在しました。米国のIT/PC/インターネット事情を取材・執筆しました。ちょうどウィンドウズ95が発売された時期で、私もマイクロソフトの本社があるシアトルへ取材に訪れました。当時はインターネットがまだ普及していなかったので、写真を1時間で現像し、書いた記事と一緒に航空便で日本へ送るのが一番早い手段でした。今の若い人達からすると想像もできないかも知れませんね。
日本へ帰任後はネットワークセキュリティの分野をメインに記者活動を続け、2000年に専門誌『日経ネットワークセキュリティ』の創刊に携わりました。その後、2005年には日本最大のパソコン誌『日経パソコン』の編集長に就任し、2010年にはパソコン局長に就任、2014年にはデジタル事業担当補佐、2015年からグローバル事業の担当となり、日経BP社執行役員 日経BP中国社董事長兼総経理に就任し、2015年3月に上海に着任しました。

 

◆◆◆  【中国で成功する企業は、現地スタッフに任せている】  ◆◆◆

(弊社)

今年の3月に上海に着任され、実際に中国で活動される中で日本と比べてビジネス面で違いを感じますか。

(藤田 董事長兼総経理)

日本と比べ中国でのビジネスは、成功報酬型の考えが強いように感じます。また、中国企業と協業する場合、まずは相手に儲けてもらい、それに喜んでメリットを感じてくれて初めて上手くいくというお話をよく聞きます。

(弊社)

成功報酬型の考えが強いのは、中国人社員にも言えます。そこでポジションにもよりますが、一般的な中国の人事制度は、日本の人事制度に比べ業績給の比率が高くなっています。ではビジネス習慣についてはどうでしょうか。

(藤田 董事長兼総経理)

ビジネス習慣についていうと、ビジネスの上で日本が失ったしきたりや伝統が残っていると感じますね。中国では、熱烈な宴席や中秋節に月餅を送るなどの習慣がしっかり残っています。私が20代の頃は、日本も企業でお中元やお歳暮を贈る習慣がありましたが、今はだいぶ少なくなりました。さらに最近では年賀状もハガキではなくネット上で済ませることが多くなりました。中国に来てこの様な習慣がまだ残っている事に懐かしく感じました。

(弊社)

これまで中国に進出されている多くの企業経営者と交流されてきたと思いますが、成功している企業の共通点や、日系企業が中国で成功するための課題をどう思われますか。

(藤田 董事長兼総経理)

海外で成功している企業を見ていて感じることは、プロダクトがワールドワイドで成功するプロダクトだということですね。例えば中国だと中国の方々に愛されるプロダクトを持っている、もしくは中国の方々に好まれるプロダクトに仕立て上げているということです。そのために、現地の方々に任せています。例えば服の場合、現地のデザイナーにデザインさせてブランドだけ日本から持ってきて現地で売るなどのパターンです。うまくいっている企業は、まずプロダクトを作る為に最適な組織にしているということです。郷に入れば郷に従えと言うことわざがありますが、中国で成功されている企業に限って服でも食べ物でも、日本人だけで設計したものはなかなか売れませんと言われる方が多いですね。
それでいうと課題はやはり現地化ではないでしょうか。日本企業は欧米企業と比べ、現地スタッフに任せない企業が多いように感じます。日本企業が中国で現地法人を設立すると、董事長総経理、副総経理まで全員日本人で占め、現地社員はせいぜい部長止まりという企業が多くあります。それに対して欧米企業は、トップからグローバルに任せます。

 

◆◆◆  【新常態の時代に企業がもう一段成長する為には、社員教育が必要】  ◆◆◆

(弊社)

最後にこれからの中国事業の展望をお聞かせ下さい。

(藤田 董事長兼総経理)

これからの中国市場においては、教育事業が大切になると考えています。経済が順調に成長している時は、教育はそれほど必要ないのですが、日本もアメリカもそうでしたが、経済が一度踊り場を迎える中で、企業がもう一段成長していこうとした時には、ロジカルな考え方や過去や他国から学ぶなど、きちんとした社員教育が重要になります。中国もこれから「新常態」の段階を迎え、おそらく近いうちにそういった教育が必要になってくるだろうと思います。その時に、我々が日本で経験してきた事が中国でお役にたてるのではないかと考えています。そこで中智さんの会員企業やネットワークと一緒にビジネスをさせて頂くことによって、研修教育事業は非常によいものが出来るのではないかと自負しています。

(弊社)

中智が持つ中国での確固たるネットワークと日経BP社が長年日本で培ってこられた技術、経営分野の教育事業のノウハウがうまく合わされば、素晴らしいシナジー効果を発揮できるものと期待しております。

 

------------------------------------------------------------------------------------

 【藤田 憲治(ふじた けんじ) 氏のプロフィール】

 1965年、徳島県に生まれる。1987年、早稲田大学理工学部電気工学科を卒業。電機メーカーにてエンジニア職を経験後、1989年に日経BP社に入社。IT/PC関連の技術系専門記者として活動。主にコンピューターアーキテクチャ、オペレーティングシステム、ネットワーク関連の分野を取材・執筆。1995年夏から約1年間、米国シリコンバレーに駐在。米国のIT/PC/インターネット事情を取材・執筆した。1998年以降、ネットワークセキュリティの分野をメインに記者活動を続け、2000年に専門雑誌『日経ネットワークセキュリティ』を創刊。2005年に日本最大のパソコン雑誌『日経パソコン』の編集長に就任。2010年にパソコン局長、2014年にデジタル事業担当補佐。2015年からグローバル事業の担当となり、日経BP社執行役員 日経BP中国社董事長兼総経理に就任。2015年3月に上海に着任した。

 

------------------------------------------------------------------------------------

 【日経BP中国社 様 会社情報】

日経BP中国社
上海市長寧区延安西路889号太平洋中心11楼1106室
Tel(021)5118‐8070
FAX(021)5118‐8068

 

日経BP中国社  藤田 憲治 董事長兼総経理
日経BP中国社
藤田 憲治 董事長兼総経理1

日経BP中国社  藤田 憲治 董事長兼総経理
日経BP中国社
藤田 憲治 董事長兼総経理2