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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第32回

『福桑精機(上海)有限公司 富樫 茂 総経理 インタビュー!』2015/12/17


 
福桑精機(上海)有限公司
富樫 茂 総経理


  ●  人件費コスト上昇を追い風に、事業拡大

  ●  円滑な業務管理には、現地社員とのコミュニケーションが大切

 

(弊社インタビュアー)(以下弊社)

輸血パック、注射針等の医用具の生産を行う自動組み立て装置の設計開発から製造までを一貫して手掛け、中国はじめ新興国の人経費コスト上昇を追い風に業績好調な武蔵野設計工業株式会社。その中国法人で総経理を務める富樫茂さんにインタビューしました。

 

◆◆◆  【自動組み立て装置の設計開発から製造まで一貫して行う】  ◆◆◆

(弊社)

まずは、御社の沿革と事業内容についてお聞かせ下さい。

(富樫総経理)

日本本社の武蔵野設計工業株式会社は、1968年に有限会社武蔵野設計工業として設立されました。設立当初は、自動組み立て装置の製造は行わず、設計のみを行っていました。当時は医用具関連に限らず、電機部品など自動組み立て機械の設計など幅広く手掛けていました。その後、現在の社名に変更し、今では輸血セットや注射針などの医用具関連をメインに自動組み立て装置の設計から製造までを一貫して行っています。

(弊社)

医用具の製造業は多品種少量生産の業界だと聞いていますが。

(富樫総経理)

医用具の自動組み立て装置は、お客様の仕様に基づいて開発から製造まで一体となって、一台一台受注生産しています。全て新規開発品で一台として同じ製品はありません。従って、場合によっては大幅赤字になったり、一度作った製品を廃棄して、一から作り直すことさえあります。「受注したら最後までやり遂げる。赤字だろうと絶対にあきらめず完成させる!」という社長の方針の下、コストを犠牲にしても、お客様第一で取り組んでいます。

(弊社)

非常に厳しい業界のようですが、40年以上現在のビジネスを続けることが出来た原動力は何でしょうか。

(富樫総経理)

お客様と一体となって、世界中の人々を豊かで幸せにするという使命感だと思います。日本では医用具や医療技術の発達のおかげで戦後の平均寿命が延びたと言われています。人の生命や健康に貢献しているという自負がこの業界で長く頑張ってこられた理由ではないでしょうか。

 

◆◆◆  【自動化の波はグローバルに広がりをみせる】  ◆◆◆

(弊社)

続いて、中国事業についてご紹介下さい。

(富樫総経理)

当社中国法人は、将来中国でも自動組み立て装置のニーズが高まる事を見越して2004年に設立されました。ところが、当時の中国は、まだまだ労働集約的な生産が中心で、自動化の波は来ていませんでした。そこで、2011年までは、本社等からの受注を受けて機械加工の部品を作り、日本への輸出をメインとしていました。2011年から徐々に中国へ進出している日系企業や中国系企業から自動組み立て装置の受注が入るようになり、現在では人経費などのコスト上昇を追い風に受注が増えてきています。

(弊社)

現在の取引企業は、日系企業と中国企業とではどちらが多いですか。

(富樫総経理)

現在は日系企業との取引が多いですが、今後は中国系企業との取引が増えてくるものと見込んでいます。また、中国系企業に限らず、最近では東南アジアをはじめ、欧米の企業からもお引合を頂くようになっており、海外への輸出も徐々に増加する傾向にあります。

(弊社)

自動化のニーズはグローバルに広がっている様ですね。東南アジアは、少し前まで人件費が高くなった中国に代わる生産拠点として注目されていました。
ところで年末に弊社が行った日系企業に対する経営動向調査では、2016年の業績について楽観的と回答を頂いています。

(富樫総経理)

おかげさまで組立て装置の受注が好調で、本社では1年先まで受注を抱えています。しかし、当社の製品は量産ができず、開発から出荷まで半年から1年程度の期間を要し、受注を多く頂いても対応しきれていないのが現状で、嬉しい悲鳴をあげています(笑い)。

 

◆◆◆  【63歳にして初めての海外駐在】  ◆◆◆

(弊社)

日本人駐在員は、富樫総経理のみですが、これまで中国を含む海外駐在のご経験は。

(富樫総経理)

実は、現職が初めての海外駐在なんですよ。学校卒業後、大手電機メーカーに就職し、生産管理部門や調達部門を担当しました。その後関連会社へ出向し61歳まで勤め、定年退職後は某商社の顧問として勤務していました。中国に来るきっかけは、偶然に以前勤めていた会社の先輩が武蔵野設計工業の工場長をしており、その方から中国行きの話を持ちかけられたことでした。ちょうど、長年連れ添った妻が亡くなり、人生をリセットしたいと思っていた時期でもあり、中国行きを決意しました。

(弊社)

63歳にして初めての海外勤務、文化や習慣の違いなど大変なご苦労があったのでは。

(富樫総経理)

私の様な年齢の駐在員の方だと、食べ物が合わないという話をよく聞きますが、私の場合は昔から中国の料理が大好きで、好き嫌いなく何でも食べることもあり、生活面では特に困る事は無かったですね。
ただし、仕事面では言葉と文化で苦労しました。

(弊社)

具体的にはどの様なことでしょうか。

(富樫総経理)

日本では当たり前だと思っていたこと、常識だと思っていたことが通じず、日本の常識は、あくまで日本だけの常識なんだと痛感させられました。そこで、指示を出す際には必ず、何が重要か、何のために指示を出しているかを明確に伝えるよう心がけています。目的をきちんと理解してもらわないと、言われた事だけやるようになり、次の仕事を自分で考えてやる事ができませんからね。
また、日本とは労働関係の法律が大きく異なるため、労務管理を行う上で中智さんからの情報はとても助かりました。

(弊社)

よく中国人社員は、言われた事しかやらないというお悩みを聞く事がありますが、この様なことも原因としてあるのかも知れませんね。
しかし、理解してもらえる様になるまで大変な労力を費やしたのではないでしょうか。

(富樫総経理)

もともと(おせっかい焼き)なこともあり、出来るだけ社員たちとコミュニケーションを図るようにしています。異なる文化や習慣の人間が一緒に仕事をするうえで一番の障害はコミュニケーションですよね。お互いの考え方を理解するために、家族の事などプライベートにまで突っ込んで話を聞いています。
また業務上では、よく会議を行います。主任以上の会議を毎週月曜日に、係長以上の管理職とは毎日朝会を開き、業務上の問題点や課題を共有しています。

(弊社)

最後に、今後の展望についてお聞かせ下さい。

(富樫総経理)

開発から製造、アフターサービスまで一貫して行う東洋のテクニカルセンターとして、世界の皆様、中国の皆様のお役に立ちたいと思っています。
また今後、事業拡大が見込まれますので、生産や技術、人事のアウトソーシングにも積極的に取り組みたいと考えています。その際は、中智さんに相談させて下さい(笑い)。

(弊社)

日本人と現地スタッフの間の壁を無くし、円滑に業務をすすめるには、コミュニケーションがとても大切だと改めて感じました。長時間のインタビュー有難うございました。

 

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 【富樫 茂(とがし しげる) 氏のプロフィール】

 1967年大手電機メーカー入社。製造部門で工程管理、調達部門で外注管理、購買管理、原価管理等を担当。課長職、部長職を務めた後、関連会社へ出向し、製造会社の副本部長、保守会社で関連会社の管理責任者を務め、2009年に定年退職。定年後、商社顧問を経て、2011年に福桑精機(上海)有限公司の副総経理として赴任、2014年から総経理に就任し現在に至る。

 

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 【福桑精機(上海)有限公司 様 会社情報】

福桑精機(上海)有限公司
上海市松江区中山街道茸北路333-7号
Tel(021)5778‐6380
FAX(021)5776‐6389

 

福桑精機(上海)有限公司  富樫 茂 総経理
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