聞いてみなければ解らない！人物インタビューシリーズ 第33回
『洁克技術諮詢(上海)有限公司 坂西 朋子 総経理 インタビュー！』2016/2/18
洁克技術諮詢(上海)有限公司
坂西 朋子 総経理
● 中国現地法人の改革に奮闘中
● 欧米系企業での経験が活きる
（弊社インタビュアー）（以下弊社）
1953年に輸出関連企業と主要銀行が日本政府の指導のもと、海外への輸出管理を目的に設立した、日本最初の民間検査会社である日本検査株式会社。各種工業プラントの構成機器の検査を行うとともに、プラントメーカーや重工産業関連企業などに品質管理要員の派遣を行っている。中国法人で総経理を務める坂西朋子さんにインタビューしました。
◆◆◆ 【日本で最初の検査会社として設立】 ◆◆◆
（弊社）
はじめに、御社の沿革と事業内容についてお聞かせ下さい。
（坂西総経理）
本社である日本検査株式会社は、1953年に輸出関連企業と主要銀行が日本政府の指導のもと、海外への輸出管理を目的に設立した、我が国最初の民間検査会社です。
現在、第三者検査機関の検査業務と共に、その特徴を生かしながら、各種工業プラントの構成機器の検査や技術サポートを行うとともに、プラントメーカーや重工産業関連企業などに品質管理要員の派遣も行っています。
（弊社）
検査業務とは具体的にどの様なことをされるのでしょうか。
（坂西総経理）
検査業務と聞いても一般の方には馴染みがないかと思いますが、QA/QC、いわゆる品質管理サービスを提供する会社であり、弊社は工業検査部門に強みを持っています。
具体的には主にお客様が中国で調達する工業プラントの品質管理、構成機器が国や自治体の要求、クライアントの要求する規格通りに製造されているかのチェックなどの検査を行っています。
◆◆◆ 【青天の霹靂・上海へ赴任】 ◆◆◆
（弊社）
続いて、中国事業についてご紹介下さい。
（坂西総経理）
当社中国法人である洁克技術諮詢(上海)有限公司は、2012年1月に上海で設立されました。もともと海外へ進出されたお客様からの引き合いがあったのに加え、2011年3月11日に発生した東日本大震災の影響で原子力発電所がストップした事で、原子力関連の需要が減少するという危機感もあり、日本国内だけに留まらず、グローバルに展開する方針から海外拠点の第1号として、設立されました。
（弊社）
現在の取引企業は、日系企業とそれ以外の企業とではどちらが多いですか。
（坂西総経理）
現在は日系企業との取引がメインですが、最近では中国系以外の外資企業からの相談も有り、今後は積極的に欧米企業からの業務を受注したいと考えています。
（弊社）
2014年に中国法人の総経理という重責を命じられ赴任されたそうですが。
（坂西総経理）
ある日突然、上司に呼び出され、上海法人に行ってくれるかと。事前の内示など無かったので、どうして私がと、正直戸惑いましたね。
（弊社）
実際に赴任され、現地法人の状況はどうでしたか。
（坂西総経理）
総経理として赴任して事務所を見渡すと、広いオフィスに従業員があまりやる事もなく座っているような状態でした。
赴任前に「やるべきこと」として従業員と事務所経費の削減を言われてきたことだったのですが、中国の労働法など全く知識がない状態で赴任したので、まずは弁護士に相談する事を考えました。しかし、検討した結果、コスト的に非常に高額。
そこで、コンサルティング会社のセミナーや、日本人のみならず中国人の皆様のお話を聞いたりして勉強しました。当時、中智様の日本企業クラブの存在は知らなかったのですが、後日別な労務問題の件で、お電話で非常に丁寧な分かりやすい解説をして頂き、もっと早く会員になっていれば当時の苦労が減っていたのにと思った次第です。
（弊社）
有難うございます。その後、人員の整理は順調に進みましたか。
（坂西総経理）
ある程度、中国の労働法に関する知識を得た後、恐る恐るその従業員に契約解除の話しを切り出すと、「私も従業員が過剰だと分かっていました。」とあっさり契約解除に応じてくれました。
他、弊社の様な小規模の会社で、従業員が懐妊し、産休を取得しなければならなくなりました。
（弊社）
これはよく聞く話しですが、小規模な会社では特に対応が難しいケースですね。
（坂西総経理）
その件で、産休中の補助要員など、中智さんにご相談させて頂き、色々と必要な知識を蓄えることが出来たので、きちんと対応出来ました。
まずは法律通りの産休を取得、産休以前も必要な休暇は与えました。仕事に復帰する段階で哺乳休暇を取得したいと申し出ましたが、理由もまったく正当なものとは思えなかったので、許可しませんでした。産後の解雇制限期間中でしたが、自分から辞表を出したので、経済補償金を支払う必要はありませんでした。
◆◆◆ 【欧米流管理の経験が役立つ】 ◆◆◆
（弊社）
坂西総経理は、外資企業での経験が長かったそうですが。
（坂西総経理）
大学卒業後、日系のシンクタンクに就職しましたが、2年で退職し、しばらく海外をぶらぶらしていました。帰国後、アメリカを代表する水周りメーカーへ就職し、輸出入業務全般を一人で担当しました。その後、イギリスの大手検査会社へ転職し、その会社で10年ほど勤めました。当時、コーディネーターとして5大陸全ての方々とビジネスで関わる事ができたのは、とても良い経験になりました。そして2010年に現在の会社に入社しました。
（弊社）
社会人としては、日系企業より欧米系企業での年数が長いですね。日系企業、欧米系企業の双方を経験され、企業文化や働き方について違いを感じますか。
（坂西総経理）
大きな違いを感じますね。日系企業は独特な文化があると感じます。長所もたくさんありますが、欧米系企業を経験した視点から気になる点を挙げると、言わなくても分かるだろうと、きちんとコミュニケーションを取らない場合が多いように感じます。
なので、普段から必ずきちんと丁寧に説明をするように心がけています。
例えば、日本の習慣では請求書が届いてからお支払いをしますが、ある財務担当者がこの様な習慣を知らずに、契約書が税務局に登録出来た段階で、請求書が届くのを待たずにお支払いをしてしまいました。請求書が届くから待つようにと言っていたのに。
その際、頭ごなしに怒らず、日本と中国の商慣習の違いをきちんと説明し理解してもらいました。それからは、きちんとホウレンソウをしてくれるようになりました。頭ごなしに怒ってしまうと、ミスを隠すようになり、かえって逆効果になってしまうと感じます。正直、多忙な時などいちいち説明するのは非常に面倒に感じることも有りますが、それが上司の役割と自戒しています。
また、職掌分担がはっきりせず、特定の人に業務が集中したり、「グレーゾーン」の業務がきちんと処理されていなかったりすると感じます。
（弊社）
ご指摘の問題は日系企業の総経理からお聞きすることがあります。日本では大きな問題にならないかも知れませんが、文化の違う国では大きな問題になる場合もあるようですね。これに対して、欧米系企業ではどうでしたか。
（坂西総経理）
私の経験した欧米系企業では、各人および各部署の責任範囲が明確になっています。その中で目標が設定され、毎月マネジメントへ提出するレポートで目標に対する実績を報告し、必要に応じてマネジメントから調整が入ります。非常にシステマチックになっています。中国での人事管理は、欧米系企業の方法が合っているように感じます。
（弊社）
人材採用の面ではどうでしょうか。
（坂西総経理）
一般的に中国人の方は、能力をつけて転職するケースが多いです。したがって就職の際には、自分はこの会社で何をすればよいか、この会社で働く事によりどの様な能力や資格が身につくかをとても気にします。欧米系の企業は、人材を採用する際にこの点を明確に示しますが、日系企業はあまり明確にせず、入社後の適性を見ながら仕事を与える場合が多いように感じます。
（弊社）
弊社の調査では、転職理由の上位に発展空間の欠如挙げられています。きちんとキャリアアップのルートを示し、教育に力を入れる事は、採用だけでなく人材の引き留めの面でも重要です。
◆◆◆ 【日系企業から外資系企業まで幅広く需要を取り込みたい】 ◆◆◆
（弊社）
最後に、これからの中国での展望をお聞かせ下さい。
（坂西総経理）
中国への進出は2012年1月ですが、弊社はそれ以前から長く中国での活動を行っております。いくつかの景気の波や世界・国内情勢の影響はあるものの、中国という市場は非常に大きく、またプラント関連機器他の調達に欠かせない国であると思います。
弊社としても、従来の顧客・日系企業から、外資系企業へと幅を広げて需要の取り込みをしていく予定です。
顧客の様々なニーズに対応し、きめ細やかなサービスを提供していきますので、まずはご相談を頂ければ幸いです。
（弊社）
長時間有難うございました。
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【坂西 朋子（さかにし ともこ） 氏のプロフィール】
大学卒業後、日系大手シンクタンクに入社。その後、米国の大手水回り製品製造メーカー、英国系メジャー検査会社の日本法人を経て、2010年に日本検査株式会社に入社。2014年1月に洁克技術諮詢(上海)有限公司の総経理に就任し、現在に至る。
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