"> HR人物インタビュー VOL.5 下島(上海)商貿有限公司 総経理 今井 隆氏 - HRM.com
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モノとサービスを含めた「包装」を中国で定着させたい


下島(上海)商貿有限公司
総経理 今井 隆氏

 包装用品、店舗用品、文具事務用品、生活雑貨…流通小売店舗でおよそ必要とされる消耗品を一手に引き受ける卸売り大手、シモジマ。

 材料調達から生産、供給まで独自に開発したサプライチェーンを含むビジネスモデルを、「世界の市場」中国で展開できないか―。経営トップの意を受け、上海に赴任したのが2004年。

 2006年に現地法人を立ち上げ、同時に総経理に就任した。日本で培ったビジネスモデルの現地化を模索し、戦略を練り、人材を育て、事業を軌道に乗せた。次のビジネスモデルが見えてきた今、今井氏の目はその先を見つめる。

 

―中国進出の経緯からお伺いします。

(今井氏)

 ひとつは、経済成長が続く中国で、シモジマが日本で長年にわたって蓄積してきたビジネスモデルを活かすことができるのかどうか、それを現地で確かめるということがありました。日本本社との貿易は視野に入れず、最初から中国内販に軸足を置いていました。

 シモジマのコアビジネスは、流通業に対して包装用品、店舗用品などをOEMで製作し、供給するというスタイルですので、これを中心にして、こちらに進出されている日系企業向けに包装資材を供給していくというのが第一点でした。二つ目は、製造から販売までというシモジマのビジネスを実際に実行するということ。進出するにあたって、独資がいいのか、外高橋(保税区)に登記して浦西に事務所を持つのがいいのか、あるいは合弁がいいのか、3つくらい選択肢がありましたが、最終的に独資で進出することになりました。

 

上海に赴任されたのは?

(今井氏)

  2004年に来て、2006年1月に(現法設立の)批准を受けましたが、その間は会社の立ち上げに全力投球でした。時間を費やすわけにはいかなかったので。会社を立ち上げたら、次は顧客開拓です。日本で取引のある会社さんが中国に進出されているというのはあるのですが、こちらでの取引はありませんので、その意味では一からの開拓でした。

  人も必要ですから現地社員を採用していったのですが、私は日本語しかできないし、現地社員にシモジマの商売を理解してもらうには多少の時間がかかる、営業といっても新規開拓なので基本中の基本からやってもらわないといけない。最初、そこが考えどころでした。


-総経理ご自身、海外でのビジネス経験は

(今井氏)

  最初は台湾で5年、次に行ったのが韓国で、ここでは3年ほど仕事に従事していました。韓国の次に上海に入りました。営業開発のセクションにいましたので、台湾、韓国とも最初は内販で行きました。

 

-シモジマの商品、包装用品、包装資材を中国でどう知らしめるか、あるいは日本のシモジマのビジネスモデルを中国でどう展開するか、については。

(今井氏)

  まずは、商品そのものよりも、シモジマ独自のビジネススタイルを中国で活かせるのかどうか、それを探ることが一番でした。

  日本では、一つの例を申し上げますと、全国の小売店さんがシモジマのお客様で、全国のどこかのお店に行くとシモジマの紙袋を使っていただいています。町の中にはお店が何軒もあり、紙袋が近所の店と同じものだとよくないので、同じ規格でデザイン違いという紙袋を大量に在庫し、ご注文と同時に迅速に供給する、これがシモジマのビジネスモデルの基本です。

  海外で最初に赴任したのは台湾でしたが、当時の台湾では日本で一般的な包装用品が街中でほとんど使われていませんでした。街中の店で買い物をすると、縦縞の入ったレジ袋に入れられてポンと渡されるだけ。百貨店でも袋をくれといわないと入れてもらえない、そういう状況でした。今でこそちゃんと袋にいれてくれるようになりましたが、中国はいまだに街中での包装需要はまだまだ薄い。

  包装する、紙袋に入れるというのは、商品を保護するということだけではなく、広告宣伝効果が期待できるわけです。これはどこの店の紙袋だと、ブランドが入っているとどこの店なのかすぐに分かります。そういう需要が日本の包装文化を発展させました。中国は現状、そこまでいっていません。需要が本格的に出てくるにはまだ時間がかかるということが分かりましたので、現在のところ、我々が規格やデザインなどの仕様を決めて顧客に提供する既製品のビジネス展開から、「包装」ということを理解している日系企業向けに商業包装資材をOEMで供給するビジネスに切り換えました。

  最近、こちらに進出している日系企業は、以前だと製品だけ日本に送って、日本でリパックするケースが多かったのですが、現在では中国で完全にパッケージングまでして輸出する形に変わってきました。この現象は我々にとって追い風になっています。それらを積極的に下島(上海)のビジネスとして取り込んでいこうとしています。店舗については、あくまでもアンテナショップという位置付けで、シモジマという会社はこのような商品を扱っているというインフォメーションのためのショップなので、現時点で多店舗展開は考えていません。

 

-中国内販を進める上でナショナルスタッフの力は不可欠です。人材戦略はどのようにお考えですか。

(今井氏)

  人材は最も重要であり、正直言って難しいと感じる部分です。下島上海では日本人は私一人だけで、あとは全員中国人社員です。赴任が決まった時、シモジマのビジネスを成功させるには現地化がポイントだと考えていました。現地化できないと市場を切り開いていくのは困難なので、そのために中国人管理職を育成し、運営の責任者になってもらい、我々は彼らをバックアップしていく、それを予測して上海に来ました。

 それを前提に人事採用をスタートさせました。まず営業マンを育てていかないといけないので、最初は営業マンから採用していきました。ひとつは営業をこなしながら管理もできる人材を探すのと、もう一つは若くて行動的な営業です。はじめの方の人材は、日本に留学して、日本での生活経験もあり、こちらに戻ってさらに日系企業での勤務経験もあるという人でした。シモジマのビジネススタイルも理解できる、問題は彼の下につく営業専門職でした。

  給料はその時点では他と比べても悪くない金額だったと思います。教育して育てていこうとしたのですが、それが難しかった。給料が問題かというとそれだけではなく、日本で経験したことのない人間の質の格差というものを思い知らされることになりました。そのうち、格差の歪みが上の管理者まで巻き込んで会社全体としてバランスが取れなくなった。

 

-となると、次に打つ手は。

(今井氏)

  2年目に私自身、頭を切り換えて、即戦力を入れることにしました。私は中国語で彼らと直接コミュニケーションできないので、日本に留学して、上海に戻ってきて日系企業に勤めた経験を持つ、そういう人材を採用していきました。その結果はまさに正解でした。彼らに支払う給料は、はっきり言って高い。高いですが彼らは確実に営業として自分の給料以上の成績を上げてきます。日系企業は往々にして人件費を抑える方向に考えがちです。日本と比べると中国は人件費が安いから、低コストのマンパワーを上手に活用していきたいと考える。しかし、人間の質の格差を越えて実際にマンパワーを活かしたいと思うなら、低コストを志向するのではなく、日本に近いレベルの人材採用に持っていく必要があります。

 

-そこで悩んでいる総経理は多いと思います。

(今井氏)

  そういう状況から抜け出せずにいる日系企業はまだ多いと思います。高い給料をとれる人はモチベーションも高いものがあります。高い学力を持ち、能力も持ち合わせています。視野も広い。そういう人材がさらに前を向いて進んでいける環境作りが必要です。精鋭部隊を作って、ニーズを掴んで素早く動くことでビジネスチャンスをモノにできる。そうしないと時間ばかり浪費して結果が得られない。素早く動いていくための仕組み作りとして歩合制を取り入れるのもひとつです。日系企業は歩合制を取り入れるのは難しいのではと思いがちで、どうしても基本給を設定して、そこから、という形になります。

 

-下島(上海)の次の戦略は。

(今井氏)

  これまで日系企業を中心に動いてきましたが、今後は中国系企業にも動いていきたいと考えています。日系で多店舗展開できているところは現時点では多くありませんが、卸売りの分野や、広範囲に、しかも多店舗展開で大量に物を動かせる中国系企業に対してビジネスを広げて行きたい。中国国内で我々が独自にそうした展開をするにはハードルが多くて難しい面もありますが、状況に応じて取り組んで行きたい。また、モノだけではなく、サービスも含めた「包装」を定着させて行きたい。

  経済が発展して、所得が上がってくると、人との比較が出てきます。企業で使われるギフトでも最近では包装して紙袋に入れて渡したいという会社さんが増えてきました。「包装」に対するニーズは確実に拡大しています。

 私も長年、この仕事に携わってきましたので、仕事を通じて「包装」という文化を中国で普及させていくお手伝いをできればと思います。

 

下島(上海)商貿有限公司
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