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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

『川田機械製造(上海)有限公司 橋本真喜 董事兼総経理 インタビュー!』2022/2/28

<strong><font style="font-size:19px">従業員の貢献に報いる人事制度で人材を活性化 </font></strong>

従業員の貢献に報いる人事制度で人材を活性化

<strong><font style="font-size:19px">——川田機械製造(上海)有限公司 董事兼総経理 橋本真喜氏</font></strong>

——川田機械製造(上海)有限公司 董事兼総経理 橋本真喜氏


 
川田機械製造(上海)有限公司
董事兼総経理 橋本真喜氏

 

近畿大学商経学部卒業後、証券会社へ入社し、アメリカ、スイス、香港勤務を経験する。1999年に株式会社カワタへ入社。カワタ入社後は主に管理部門及び経営企画部門で業務を担当する。2020年11月に川田機械製造(上海)有限公司へ副総経理として赴任、22年1月より董事兼総経理に就任する。

 

◆◆◆ 粉粒体加工機器のリーディングカンパニー ◆◆◆

1935年に株式会社カワタの前身となる川田製作所がゴム製品製造用機械及び金型の設計、製作を行う会社として創業する。その後、プラスチック関連事業に進出し、現在では粉粒体加工機器並びにシステムの設計及び製造で業界をリードする企業に成長している。

カワタはその長い歴史の中で、常に顧客のニーズを的確に読み取り、時代の要請に対応した製品を開発することで成長を続けてきた、と橋本総経理は話す。「まだ企業としての創業期といえる1950年代に、日本で最初に押出成形機の開発製造に成功しました。その後、60年代に入りプラスチック時代の到来を見据え、プラスチック関連事業に進出します。この分野で世界初となる成形機の開発製造に成功し、80年代にCD、90年代にDVDが発明された際には、CDやDVDの本体プラスチック部分を製造するシステムを世界に先駆けて開発し、その量産化に貢献しました」

1869年にアメリカでセルロイドが開発されて以来、合成樹脂としてのプラスチックは日進月歩の進化を続け、現代人の生活にとってプラスチックは無くてはならない存在となっている。「身近な生活用品だけではなく、宇宙服の素材、自動車の内装部品や構造部品、リチウムイオン電池、スマートフォンの液晶パネルやレンズに至るまであらゆる工業製品に利用され、プラスチックは人々の生活を豊かにしてきました」と橋本総経理は話す。


 

◆ 『三方よし』の精神で中国に進出 ◆

カワタは、1980年代後半から海外進出を本格化させるが、決して安い生産コストを考慮した為ではないと橋本総経理は語る。

「近江商人の経営哲学に『三方よし』という言葉があります。三方とは『売り手』『買い手』『世間』のことであり、これは自社と顧客だけではなく、社会の利益にもつながる商売をしなければならないとする考え方です。当社の経営理念の中にもこの精神が取り入れられています」

中国では、1994年に上海で駐在員事務所、95年に現地法人の川田機械製造(上海)有限公司(以下、川田上海)を設立する。「中国に進出した目的も安い生産コストを求めたのではなく、中国の顧客との対応スピードをあげ、素早く課題を解決するためであり、ひいては顧客の製造する製品を通じて、中国の人々のより豊かで安全な暮らしに貢献するためでした。また、様々な税優遇政策や事業支援を提供してくれる開発区の存在は、当社が中国に進出するにあたり大きな助けとなりました」

中国へ進出した当初は、顧客のほとんどが日系企業だったが、2000年ごろから中国企業との取引が徐々に増えてきたという。「2000年前半までは、日系企業のお客様のほうが多かったのですが、今では中国企業のお客様が7割となっています」中国企業が量から質への転換をはかる中で、高品質の製品を製造するために不可欠となる高性能な製造用機械に対するニーズが高まっているのだと橋本総経理は話す。


 

◆◆◆ 中国の労働市場や若い世代の価値観に合わせ人事制度改革に着手 ◆◆◆

川田上海では設立以来、多くの製造型日系企業と同じように、日本の人事制度を参考に、現地の人事制度を策定し運用してきた。しかし、個々の実力や成果より、勤続年数や年齢を重視する日本型の人事制度は、近年特に中国における労働市場の現状や若い世代の価値観と合わない面が大きくなってきている。そこで川田上海では、一昨年前から中智と協力して人事制度改革に取り組み始めた。「当社は中国進出から20年以上が経過し、その間に会社の規模は拡大し、業務は高度化してきました。そのような状況のなかで、単に平等なだけではなく、従業員の貢献により報いることのできる人事制度の必要性を強く感じるようになりました。そこで、中智のサポートを得て、会社に貢献すればその貢献度に応じて公平に評価され、その評価が賞与や給与に反映される新たな人事制度の構築に取り組みはじめました」

人事制度改革と同時に力を入れ始めたのが経営管理層の育成だ。「『企業は人なり』という格言があるように、企業にとって人材こそ最大の財産です。現在は日本人が赴任して経営にたずさわっているものの、実際に事業を動かしているのは中国人社員たちです。したがって彼らのマネジメント能力を底上げし経営能力を身につけてもらうことが、会社経営の底上げにつながるのだと考えています」


 

◆◆◆ 持続可能な世界の実現へ向けたカワタグループの取り組み ◆◆◆

2015年に国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)が制定され、企業にも協力が求められている中、カワタグループ各社は、SDGsの達成に向けた取り組みを積極的に推進している。「具体的なSDGsの達成に向けた取り組みとして例えば、お客様の生産現場における生産性の向上と省力化・省エネルギー・省資源化に貢献する製品の開発指針であるチャレンジ CES(低コスト(C)、省エネ設計(E)、設置面積の省スペース化(S))の推進、電気自動車やハイブリッド車普及に向けてCO2 排出削減による環境負荷低減に貢献するため電池への技術対応と展開、車体の軽量化に伴う CO2 排出削減による環境負荷低減に貢献するための部品のプラスチック化への技術対応と展開、そしてお客様や自社の廃棄物削減のための取り組みと廃プラ等のリサイクルへの対応等があります」


 

◆ 違うのは当たり前、互いの違いを理解し共存共栄を図ることが大切 ◆

橋本総経理は大学卒業後、大手証券会社で勤務し、ニューヨーク、チューリッヒ、香港での駐在を経て、1999年にカワタに入社する。

「証券会社時代の海外勤務経験から、日本のやり方をそのまま現地に押し付けるのではなく、現地の考え方やビジネス習慣を理解し、そのうえで日本流にアレンジした自分なりのスタイルを見つけることの大切さを学びました」と橋本総経理は語る。

中国へ赴任した際にも、はじめに中国人の職業観やビジネス習慣を学ぶ努力をしたと橋本総経理は話す。「中国人の考え方やビジネス習慣を理解し、自分なりのスタイルを見つけるため、まず現地社員たちの話を聞くことから始めました。納得できるものは素直に受け入れ、納得できなければ率直に話し合うことで理解を深めました。日本人駐在員の中には、なぜ理解できないのか?何故違うのか?と悩んでいる人をたまに見かけますが、違うのは当たり前で、それを理解した上で共存共栄を図ることこそが大切なのです」



 

◆ 細き流れも大河となる ◆

インタビューの最後、橋本総経理に今後の展望について尋ねた。「未来-経営者メッセージにも書きましたが、私の好きな諺に『細き流れも大河となる』があります。小さな川がたくさん集まれば大きな川になるように、小さな努力も長く続くけていれば、やがて大きな成果を得ることができる。黄河や長江のような大河も、源流まで遡れば小さな川の集まりにすぎません。一本一本は細くて小さな川も、集まれば大河となるように、一人でやれることは限られていますが、皆で団結して力を合わせれば、どんな困難も克服することができると信じています。新型コロナの流行や製造業のコストアップ、電力制限など川田上海をとりまく環境は厳しいものがありますが、小さなビジネスチャンスも逃さずにしっかり掴み、『三方よし』の精神で中国、上海の発展に貢献してゆきたいと思います」


中智の感想: 橋本総経理は、新型コロナ流行の影響で経営環境が厳しい中にもかかわらず、将来を見据え積極的な改革に取り組んでおられます。新しい人事制度を適用するにあたり従業員への説明会に積極的に参加し、従業員たちからの厳しい質問にも正面から受け止め、真剣に議論する姿に感銘をうけました。また、幹部研修においても、橋本総経理自ら研修の趣旨や参加者たちに学んで欲しい知識やスキル、未来への期待について熱く語りかけ、研修を受ける従業員の心に火が着く光景を何度も目の当たりにしました。橋本総経理のもとで、社員一人ひとりが団結し大河となって、川田上海の未来を切り開いていかれることをお祈りします。