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「労働争議案件審理における法律適用の若干問題に関する最高人民法院の解釈」

2010年10月26日

 2010年7月12日に「労働争議案件審理における法律適用の若干問題に関する最高人民法院の解釈(三)」は最高人民法院審判委員会第1489回会議を通過し、ここで公布し、2010年9月14日より施行する。

2010年9月13日

法釈(2010)12号
労働争議案件審理における法律適用の若干問題に関する最高人民法院の解釈(三)
(2010年7月12日最高人民法院審判委員会第1489回会議で通過)

 正確に労働争議案件を審理するため、「中華人民共和国労働法」、「中華人民共和国労働契約法」、「中華人民共和国労働争議調解仲裁法」及び「中華人民共和国民事訴訟法」の関連法律規定に基づくと共に、民事裁判の実務を踏まえて以下の解釈を行う。

第一条 労働者は、雇用組織がその社会保険手続きを行わず、かつ社会保険取扱機関による補充手続きができないことにより、労働者が社会保険待遇を享受できないことを理由として、雇用組織に対して損失賠償を請求して争議が発生した場合、人民法院は受理しなければならない。

第二条 企業自身の制度改革により争議をもたらした場合、人民法院は受理しなければならない。

第三条 労働者は労働契約法第八十五条の規定に基づいて人民法院に対して訴訟を申し出て、雇用組織に対して追加賠償金の支払を請求した場合、人民法院は受理しなければならない。

第四条 労働者は営業許可証を取得していない、営業許可証が取り上げられた、又は営業許可証の期限満了後もなお経営が継続している雇用組織と争議が発生した場合、雇用組織又はその出資者を当事者としなければならない。

第五条 営業許可証を取得していない、営業許可証が取り上げられた、又は営業許可証の期限満了後もなお経営が継続している雇用組織は、名義借りなどの方式で他人の営業許可証を借用した場合、雇用組織及び営業許可証貸出者を当事者としなければならない。

第六条 当事者は労働争議仲裁委員会の仲裁裁決に不服として、法に依拠して人民法院に訴訟を提起し、人民法院は審査して仲裁裁決に必要共同仲裁当事者が遺漏していると判断した場合、法に依拠して遺漏している人を訴訟当事者として追加しなければならない。 追加された当事者が責任を負わなければならない場合、人民法院は一括して処理しなければならない。

第七条 雇用組織はその雇用した既に法に依拠して養老保険待遇を享受している、又は退職金を受領している労働者と労働争議が発生し、人民法院に訴訟を提起した場合、人民法院は労務関係に従って処理しなければならない。

第八条 給与支給が停止して職務を保留した労働者(中国語原文:停薪留職人員)、法定退職年齢に満たさずに企業内部で退職した労働者(中国原文:内退人員)、リストラ/自宅待機労働者(中国原文:下崗待崗人員)及び経営性生産停止により長期休暇中の労働者(中国語原文:経営性停産放長暇人員)は、新たな雇用組織と労働争議が発生し、法に依拠して人民法院に訴訟を提起した場合、人民法院は労務関係に従って処理しなければならない。

第九条 労働者による残業手当を主張した場合、残業事実の存在について挙証責任を負わなければならない。但し、労働者は雇用組織による残業事実存在の証拠が所有していることを証明する証拠があり、雇用組織がそれを提出しない場合、雇用組織が不利な結果を負う。

第十条 労働者は雇用組織と労働契約の解除又は終止により、関連手続きの処理、給与報酬?残業手当?経済補償又は賠償金の支給などについて達した合意は、法律、行政法規の強制規定に違反せず、かつ詐欺、脅迫又は相手方の危機に乗じる事情が存在しない場合、有効と見なさなければならない。 前項合意に重大な誤解又は公平を欠く事情が存在し、当事者が取り消しを請求した場合、人民法院はそれを支持しなければならない。

第十一条 労働争議仲裁委員会が発行した調停書が既に法律効力が発生し、一方の当事者は取消訴訟を提起した場合、人民法院は受理しない。既に受理された場合、訴訟を棄却する。

第十二条 労働争議仲裁委員会は期限を過ぎても受理決定又は仲裁裁決を行わず、当事者が直接訴訟を提起した場合、人民法院は受理しなければならないが、仲裁申請案件に以下の事由が存在する場合を除く。
(一) 管轄を移送する場合
(二) 送達中又は送達が遅れた場合
(三) 別案件の訴訟結果、身体障害の判定を待っている場合
(四) 労働争議仲裁委員会の開廷を待っている場合
(五) 鑑定手続きの発動又はその他部門に証拠取得調査に依頼した場合
(六) その他正当な事由がある場合 当事者は労働争議仲裁委員会による期限が過ぎても仲裁裁決を行わないことを理由に訴訟を提起した場合、労働争議仲裁委員会が発行した受理通知書又はその他仲裁申請を受理した証拠/証明を提出しなければならない。

第十三条 労働者は「労働争議調解仲裁法」第四十七条第(一)項の規定に基づき、労働報酬、労災医療費、経済補償又は補償金を催促し、仲裁裁決が複数項目に渡り、項目のいずれで確定した金額は当地月額最低賃金基準の12ヶ月分を上回らない場合、終局裁決に従わなければならない。

第十四条 労働争議仲裁委員会が行った同一裁決のうち、終局裁決事項及び非終局裁決事項が含まれ、当事者が当該仲裁裁決に不服として人民法院に訴訟を起した場合、非終局裁決に従わなければならない。

第十五条 労働者は「労働争議調解仲裁法」第四十八条の規定に基づいて基層人民法院に訴訟を提起し、雇用組織は同法第四十九条の規定に基づいて労働争議仲裁委員会所在地の中級人民法院に仲裁裁決の取消を申請した場合、中級人民法院は受理してはいけない。受理された場合、申請を却下する。 人民法院による訴訟を却下された、又は労働者による訴訟を取り下げた場合、雇用組織は裁定書を受け取ってから30日以内で労働争議仲裁委員会所在地の中級人民法院に仲裁裁決の取消を申請することができる。

第十六条 雇用組織は「労働争議調解仲裁法」第四十九条の規定に基づいて中級人民法院に仲裁裁決の取消を申請した場合、中級人民法院による下された申請却下又は仲裁裁決の取消の裁定は終審裁定としなければならない。

第十七条 労働者は「労働契約法」第三十条第二款及び「労働争議調解仲裁法」第十六条の規定に基づいて人民法院に支払命令を申請し、「民事訴訟法」第十七章督促手順の規定に合致した場合、人民法院は受理しなければならない。 「労働契約法」第三十条第二款規定に基づいて支払命令を申請し、人民法院による終結督促手順が裁定された後、労働者は労働争議事項について直接人民法院に訴訟を起した場合、人民法院は先に労働争議仲裁委員会に仲裁申請を行うことを告知しなければならない。 「労働争議調解仲裁法」第十六条の規定に基づいて支払命令を申請し、人民法院に終結督促手順が裁定された後、労働者は調停協議に基づいて直接人民法院に訴訟を提起した場合、人民法院は受理しなければならない。

第十八条 労働争議仲裁委員会が終局裁決を行い、労働者は人民法院に執行を申請し、雇用組織は労働争議仲裁委員会所在地の中級人民法院に取消を申請した場合、人民法院は執行中止を裁定しなければならない。 雇用組織は終局裁決の取消申請を取り下げた、又はその申請が却下された場合、人民法院は執行を回復しなければならない。仲裁裁決が取り下げられた場合、人民法院は執行を終結しなければならない。 雇用組織による人民法院に仲裁裁決の取消を申請して却下された後、執行過程において同じ理由で不執行抗弁を提出した場合、人民法院は支持しない。