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「労務派遣」と「業務請負」(2013年12月25日)

「労務派遣」と「業務請負」(2013年12月25日)

 人社部の「労務派遣若干規定」の規範文書発表に伴い、人社部労働学会は「労務派遣専門委員会」を海南省琼海で開催し、労務派遣制度の経緯と多様化する労働者使用をいかに実施するか、専門家を交えて討論しました。

 この討論会で得た情報によれば、既に発表されている「労務派遣若干規定」について「派遣労働者10%規制を堅持し、その他の部分について広く意見を求める」方針を取っています。例えば「偽装派遣」に関する法整備」「地区を跨いだ派遣における納税・社会保険納付場所の明確化」「2年間の過渡期の取扱」などがそれに当たります。参加者が共通して認識していたのは、労務派遣の運用には客観的評価が必要であり、企業の労働者使用の多元化における必要性と重要性を十分認識することが必要であるということでした。

1、労務派遣発展の原因

 グローバル化競争、経済周期の波、高失業問題を解決する為、人的資源の「弾力的」供給は企業の組織調整と各国政府の労働政策制定において考慮すべき重要な要素の一つです。労務派遣は派遣単位と使用単位の専業化と弾力的使用の結合が特徴で、グローバル市場経済の特徴とニーズに順応していた為、空前の発展を見ることになりました。

 (1)社会背景:企業の弾力的使用,労働者の活発な就業

 サバイバルを確保し競争において優位に立つ為、企業はより精力的に核心的競争力を高め、運営コスト、潜在的運営リスクの減少により、競争力を維持しなければなりません。企業運営を巡る重要な業務において、人的資源管理はずっとその核心であり続けています。かつて企業の成長過程にあっては、往々にして重要な影響力を持つ社員――研究開発員、高級管理者に対し長期労働契約を締結し、一般的な社員や一時的な専門的技能を持つ社員に対しては弾力性のある人材運用を行ってきました。労務派遣は彼らにもうひとつの選択肢「使用しながら養わない労働者使用方法」を提供し、同時に人事コストを大幅に節約することができるものです。

 労務派遣は労働者の弾力的業務時間運用というニーズをある程度満たすことができます。時代の変遷により、現代労働者の労働への価値観とキャリアライフが伝統的価値観の枠組みを突破に寄与し、また多様な業務と弾力的な労働時間という「非典型労働モデル」で働く若年労働者が増えています。これはまさに労務派遣のニーズと符合するものです。

 (2)政府目標:失業率低下と共生社会発展の促進

 就業の概念は正規就業と非正規就業の双方を含みます。ただ社会労働へ参加し報酬を得ればそれは就業であると言えます。労務派遣は「三方両地」の構造であり、労働者の就業願望と使用者への弾力的組織運用を実現します。この意義において、労務派遣は確実に就業促進と軋轢や構造的な要因による失業を低下させることができます。ゆえに労務派遣は世界各国から受け入れられるに至ったのです。

 労務派遣は労働力市場の多様化モデルと似ており、中国の社会経済発展における問題解決に斬新な思考を提供するものです。ゆえに労務派遣は我が国の建立と急速な発展における社会的問題解決のために、政府の取るべき一つの方法であり、特定時期の就業問題解決政策の一つであると言えます。この特定時期については3つの角度から考えなくてはなりません。一つ目は我が国の計画経済が市場化へ移行する過程において、大量の国有企業社員がリストラされ、失業者があふれるという点、二つ目は我が国の都市化の過程において、農村の余剰労働力が移動し、多くの農民が土地を離れ労働者となり大量の就業希望者が溢れるという点、三つ目は我が国の改革次開放に伴い、一部外国投資家が投資の為にまず事務所を設置し、様子を伺うという点です。労務派遣等のような弾力的な労働者の使用方法は、上述の就業問題解決に対し比較的良い解決方法であると言えます。

 (3)社会の発展:経済のモデルチェンジが企業の労働者使用を新たに変えていく

 経済のグローバル化と情報産業の発展により、ポスト工業化時代が到来しました。新しい業務形式が次々と生まれる中で、労務派遣は企業の調整とリニューアルの産物であり、非正規雇用の範疇にありながらも、弾力的就業の飛躍的増加という背景の下、全世界で急速な発展を遂げたのです。ゆえに、グローバル経済の急速な変遷において非正規雇用発展が労働市場の一つの趨勢になっているという現実を見据え、労務派遣を適切に運用、発展させることが、就業促進と企業競争力増強につながるのです。

 労働法律制度体系の確立に伴い、労働市場にも規範が設けられ、現在企業の受ける労働法規の圧力は徐々に大きくなり、労働法規違反のコストもまた高くなっています。特に「労働契約法」実施後、我が国の労働基準は高まりを見せ、ついには国際基準を上回るまでになりました。労働法規の高基準がもたらすリスクを軽減するため、各企業は合法的な範囲で労働者の弾力的運用措置を取っていましたが、このことが労務派遣という使用形式を受け入れる土壌を養成したのです。

 労務派遣の生存と発展は市場経済の基本特性と本質を反映しており、それは都市と農村という二元社会を解体するだけでなく労働力の弾力的使用へのニーズを満たし、労働力化する農民の段階的特性にも符合しています。ゆえに労務派遣は社会発展において必然的に生まれた産物であり、代替の利かないものであります。

 しかしながら市場の未成熟及び関連法規の不備により、前世紀末から新世紀始めにかけて、我が国の労務派遣は無秩序な発展を遂げました。使用単位による労務派遣の濫用及び派遣社員の合法的権益侵害案件が発生した結果、社会的な批判が巻き起こり、労務派遣に対し厳しい制限が為されました。この矛盾をいかに解決するかは、熟考に値するものです。

2、労働者使用の多元化は必然的趨勢である

 (1)労働者使用多元化が急速に発展する訳

 上記において、社会背景、政府目標、社会発展の三方面から労務派遣の急速な発展の原因を分析しましたが、現在この三つの要因が以前より強くなっています。

 社会背景を見ると、企業は更に労働者の多元的、弾力的使用を求めています。30年を超える改革開放の第一歩は「同じ釜の飯」「親方日の丸」「均一報酬」「労働の無評価」「広き門に狭き出口」の打破でしたが、これらの現象は比較的スムーズに解決しており、生産効率は大幅に上昇しています。しかし「労働契約法」の実施に伴い、メディアは社員の権益保護に熱心になる余り、上述の問題がやや盛り返しを見せつつあります。なので企業にとって労務派遣など労働者使用の多元化は急務であり、弾力的組織の確立、高い生産性をもたらす機制、社員規模の調整、社員に対する直接的責任リスクの回避が求められてきました。企業の人的資源管理は替代人員の使用から、労働関係の無い使用へと転換されています。企業もまた労働者使用の多元化、弾力的運用と調整のできるシステムを希望しており、若年層を使用することで技術工の世代交代と補充を行い、技術職の調整と商品の生産発展に必要な労働力資源の確保を図っています。また、企業は労働者使用の多元化による人事コスト削減を期待しています。社会保険納付額の抑制、最低賃金での業務考課による生産性の向上と人事コスト投入比率の低下、労働者使用の多元化による管理の簡素化と管理費用抑制、この3つが企業側の狙いです。

 政府目標によれば、労働者使用の多元化は失業率低下に有利に働き、共生社会の発展に寄与するものと見ています。欧米金融危機により世界経済は混迷し、欧米経済の回復力不足が、市場ニーズの低迷を招いています。輸出経済主体である中国経済にあっては輸出減少、注文減少により多くの企業が業務不足に陥り、多くの社員が自宅待機となっています。また、産業構造の調整、製品のグレードアップに伴い多くの企業によって転換期に入っており、求人量は明らかに減少しています。第十八回三中全会で明確となった都市化推進と都市農村二元化の段階的撤廃、一元化推進の流れの中、農村の余剰労働力は移転の必要性に駆られ、土地を離れた農民達は就業や都市での労務を必要としています。中国原材料価格と労働力コストの上昇に伴い、中国原有の低コストという利点が失われ、多くの外資系企業、引いては国内民間企業までも次々と東南アジアなど低コスト地区へ移転し、これら企業の社員は再就職の必要性に晒されています。これらの要素を見ても、労働者使用多元化の採用し、就業率を上げ、共生社会を発展させなくてはなりません。

 社会発展から見ると、新たな就業群体は基本的に独身子女または「一人っ子政策第二世代」であり、彼らの世代は生活の苦しみを味わっておらず、独立願望も少なく、社会がより多くの職位を提供することを望んでいます。特に父母と一緒に都市へやってきた農民工の第二世代は、既に農村での生活に馴染めず、農村の「自身の土地」は彼らにとって何の吸引力も持ち合わせていません。彼らの父母は都市へやって来た頃、都市の故郷を行き来していました。仕事があれば都市へ出稼ぎに行き、仕事が無ければ故郷で農業にいそしんでいたのです。広大な農村は一つの巨大な貯水池のようなもので、都会に出た、または都会から戻ってきた農民工を包み込み受け入れてきたのです。しかし「第二世代」はそうではありません。彼らは都市での生活に馴染んでおり、農村へ戻りそこで生きる術を持たず、「自身の土地」をもって自身で稼いでいくことができないのです。彼ら都市に住む「農家第二世代」は巨大な就業鬼力を生んでいます。しかも我が国のある労働規準規定は国際基準よりも高く、巨大な社会保険納付基数に企業は青息吐息となっています。今回の第十八回三中全会もこの一点に重点を置き、企業の社会保険納付圧力を軽減する必要があることが盛り込まれた。企業にとって、労働者使用の多元化と社会保険納付圧力及び人事コスト軽減は急務なのです。

 これらに見られるように、労働者使用多元化採用要求における内的要因は更に協力で、逼迫したものであるといえます。

 (2)労務派遣社員比率超過の解決には労働者使用の多元化が必要

 統計によれば、上海企業の労務派遣使用量は最高で3分の1以上に達したことがあります。ある業種、例えば賃貸業や不動産業においては、業種全体社員に対する労務派遣社員の割合が60%を超えており、労務派遣使用量は最も少ない科学研究業においても、労務派遣社員の占める割合が20%以上となっています。数ある企業のうち、外資系企業が主に労務派遣を使用しており、派遣社員の社員全体に対する割合は市内平均を大きく上回っています。

 中央企業の労務派遣使用比率も決して低くありません。調査対象83社中、派遣社員の社員全体に対する割合は12.92%で、外部招聘者や職場復帰者が0.61%、プロジェクトによる請負が22.05%、その他が3.93%となっています。ある労働密集型企業では労務派遣使用比率がより高くなっています。例えば中国石油企業では、2007年-2009年労派遣社員の社員全体に対する割合が33%前後、2010年には34.5%、2011年には35.2%と増加しています。郵便系企業の労務派遣比率は更に高く、ある部署では70%-80%に及んでいます。

 「労働契約法修正案」の実施及び「労務派遣若干規定」の発表に伴い、大規模な労務派遣使用は活路を失い、元々の10%規定で何とかしなければならなくなりました。多くの企業は即採用、解雇、配置転換、アウトソーシング、労働者使用の多元化の「五つの策」による解決を模索しています。この「五つの策」において、企業はアウトソーシング等の労働者使用の多元化が、政府の規定に反する事無く人事コストを低下させられる最も有効であると見ています。

3、業務請負是労働者使用の多元化と重要モデル

 (1)業務請負(労務アウトソーシング)の概念

 《中華人民共和国契約法》第二百五十一条規定では、「請負契約とは、請負人が依頼人の要求に応じて業務を完成、業務成果を交付し、依頼人がその報酬を支払う契約を言う。請負には加工、発注、修理、測定、検査等の業務を含める」と定められています。実践においては、請負の運用形式や内容は様々であり、業務アウトソーシング、人事アウトソーシング、自社雇用などを指すこともあります。

 業務請負(別名労務アウトソーシング)とは、法律の規定に基づき労務派遣社員にアウトソーシングさせる一部業務を抽出し、使用単位がそれをプロジェクトという形で人材会社へ発注、人材会社は受注後締結した「請負契約」に基づき当プロジェクトの進行から完成までの全責任を負う、というものです。

 業務アウトソーシングは別名商務アウトソーシングとも呼ばれ、これは企業のある業務を企業外の組織や個人へ請け負わせる事を指します。

 人事アウトソーシングとは企業内の人的資源管理に関する一部業務を第三者にアウトソーシングし、その費用を支払うものです。

 自雇とは個人請負の事を指します。

 上述の方法のうち、「業務請負」は法定比率を超えた派遣社員の業務を代替するための最も直接的で、最も有效な方法です。広州紅海グループ、蘇州匯思グループ、北京易才グループがこの方法を取り入れ、試しています。

 「労働契約法」公布に伴い、関係行政部署は逐次労務派遣使用の規範作りを進めており、多くの企業が次々と「労務派遣」を「業務請負(労務アウトソーシング)」または人事アウトソーシングへの転換を図っています。同時に、それによって現れた「偽装派遣」や「偽装請負」の問題が議論を呼んでいます。

 (2)、 「労務派遣」と「業務請負」の区+R

 主に七つの違いがあります。

 1.法律関係の違い。労働派遣は三方契約、すなわち派遣単位と使用単位との間で「労務派遣協議」を締結し双方の権利義務を定め、労働者と派遣単位との間で労働契約を締結し、また使用単位と労働者の間で「使用契約」を締結、労働者を使用管理するものです。

 業務請負は双方による契約です。すなわち請負人と依頼人との契約は民法上の請負関係にあり、請負人とそれに雇用される労働者との労働関係、依頼人と請負人に雇用される労働者との間には何ら法律関係がありません。

 2.法的責任の違い。労務派遣中労働者への責任リスクは労務派遣単位と使用単位が連帯して負います。業務請負(労務アウトソーシング)では請負人がその労働者への全責任リスクを負います。

 3.労務供給主体の違い。労務派遣単位に雇用される労働者は使用単位が使用します。業務請負単位に雇用される労働者は業務請負単位自身が使用します。

 4.契約対象の違い。労務派遣契約の対象は労働力または派遣社員であり、業務請負契約の場合は客観的事物や工程となります。

 5.指揮権の違い。労務派遣中、派遣労働者は使用単位の指揮監督下にあって、労働者の業務内容、業務時間等は使用単位が決定し、また使用単位の規章制度を遵守し管理を受けなくてはなりません。業務請負においては、労働者は請負人の指示命令に従い、請負人の指定する業務を完成させるために監督及び指揮を受けなくてはなりません。

 6.労働コストのリスク負担主体の違い。労務派遣において、派遣単位はただ人員を提供するだけで、業務過程におけるリスクに対する責任を負わず、その責任は使用者が負うことになります。業務請負(労務アウトソーシング)では請負人が依頼人より受領した労働成果、期間内の損失や特定リスクに対する取り決めを定めておく必要があります。

 7.報酬支払い方法の違い。労務派遣では、労働者へ約定した報酬を支払います。業務請負では、業務成果に基づき報酬を支払います。

 上述の区別を踏まえれば、長期にわたり論争を呼んできた「宝鋼アウトソーシングモデル」が国家人社部指導者に認められ、「偽装派遣」ではないことが分かる。広州紅海グループ、北京易才グループの採用している方法も、同様に認められています。納税については、依頼人の要求または付加価値税、事業税の差額に基づき納付します。「業務請負」の整備に伴い、税制もまた一歩規範的かつ改善されたものとなっています。