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【判例】労働契約未締結時の賃金の二倍払いに関する仲裁は、どの段階で時効を迎えるか?

【判例】労働契約未締結時の賃金の二倍払いに関する仲裁は、どの段階で時効を迎えるか?(2015年7月23日)

案例:

 白さんは2008年6月1日より2012年3月20日までA社で働いていたが、この機関両者は労働契約を締結していなかった。2012年5月14日、白さんは労働仲裁を申し立て、A社へ賃金二倍払いの差額2万元余りの支払を求めた。しかし労働仲裁委員会は白さんの申し立てを時効を理由として受理しなかった。白さんは法院へ提訴したが、A社は時効を理由として労働仲裁委員会が申し立てを却下したことから、請求に応じなかった。

争点:

 労働者が賃金二倍払いを求める際の時効は、いつを起点とするか?

判决:

 法院は、白さんが2012年5月に仲裁を申し立てたことから、仲裁時効を超えていると判断し、法的保護を受けることができないとして、訴えを棄却した。

分析:

 

本案件の審議においては、白さんの仲裁申請時効の起点について意見が分かれた。一つ目の意見は、白さんの求める支払われるべき賃金二倍の金員は労働報酬であり、労働報酬に関する時効を適用すべきというものであり、すなわち時効は労働関係が終了した日を起点として一年以内だとするものである。もう一つは、支払われるべき賃金二倍の金員は労働報酬ではなく損害賠償であるとするものであり、この場合は「労働争議調停仲裁法」の規定に基づき処理されるため、仲裁時効は当事者がその権利を侵害されたことを知った日から起算して一年以内ということになる。

 

 現在は後者の説が主流となっている。その理由としては以下のようなものが挙げられる。

 第一に、賃金二倍の金員は労働報酬に当たるか否かという問題がある。「労働契約法」第八十二条第一項には、使用者が労働者の使用を開始した日から起算して一ヶ月以上一年未満の期間において労働契約を締結しなかったときは、この期間について労働者へ賃金の二倍の金員を支払わなければならないとある。本条の立法主旨に照らすと、労働契約の規定する賃金二倍払いは労働契約制度の実施を強く保障するために、労働契約を締結しなかった使用者に対する懲罰措置であり、使用者の違法行為に対する法的責任であると言える。もしこれが賃金であるのならば、既に労働契約を締結した労働者から見ると、労働契約を締結しなかった労働者は二倍の賃金を受け取っていることとなり、同一労働同一賃金の原則に反する。従って、賃金二倍の金員は労働報酬に当たらないといえる。

 第二に、賃金二倍の金員の支払いを求める訴訟の起算日についてだが、これが労働者の報酬ではなく法定責任である以上、時効の起算日には「労働争議調停仲裁法」第二十七条第一項から第三項までの規定を適用すべきである。すなわち労働契約を締結せず労働を開始した後の第二ヶ月目より起算して月ごとに仲裁時効を測ることとなる。具体的には、白さんとA社が労働契約を締結していない場合、「労働契約法実施条例」第七条に基づき、「使用者が使用を開始した日から起算して満一年書面による労働契約を締結しなかったときは、使用を開始した日から起算して満一ヶ月の日の翌日より満一年の日の前日までの期間について労働契約法第八十二条に基づき労働者へ賃金の二倍を支払わなければならない」ことととなる。すなわち2008年7月1日より2009年6月30日まで、A社は白さんへ賃金の二倍の額を支払わなければならないのである。法律は公のものであるため、双方の労働関係が成立して満一年が経過した時点で、労働者の使用者へ賃金の二倍の額を支払うよう請求できることが確定されるため、すなわち労働者が権利を侵害されたことを知ったと見ることができるため、白さんの賃金の二倍払いの請求時効は2010年5月31日であるということになる。

 また注目すべきは、法律では提訴の日から一年前までの賃金二倍払いを保障している点である。もし白さんが2009年7月1日に申請を行っていれば、2008年7月1日より起算した賃金一年分の金員が受け取れるが、2010年2月1日に申請した場合は2009年2月1日より起算して5ヶ月分の賃金の金員しか貰えないことになる。