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【寄稿】日系企業における「成果主義」の運用について(2016年2月1日)

 日系企業の人事制度を研究した結果からみると、90年代以前から、生産性と報酬がずれしていることは日系企業にとって最大の課題となっていました。戦後、日本経済が急速に成長していく間に、新技術をどんどん導入し、業務方法も絶えず改善され、時の流れに連れて従業員の年齢も上昇していくため、年齢が高い従業員では、生産性が自身の報酬水準より低い状況が存在していました。しかしながら、「生活保障型」の報酬システムの下で、彼らの報酬水準を下げることで出来ず、企業の人件費コストがどんどん上昇していきました。

 生産性の問題を解決するために、日系企業は70年代から「成果主義管理」の理念及び管理の仕組みを導入し始めましたが、日本特有の文化の影響により、人事部門は相変わらず「年功序列」の管理方法を残し、90年代初めまでは多数の企業において、多くの従業員がいっせいに課長に昇進するような現象が存在していました。

 バブル経済の崩壊により日本経済は長期的に低迷し、日系企業にとって、職位の減少及び人件費コストの削減は大きな経営課題となっていました。これに伴い、日本特有の「年功序列制度」の仕組みが崩壊し、「成果主義」の評価システムと評価仕の組みを構築して行きました。

 しかし、今でも日系企業では、「成果主義」に基づく評価の仕組みの構築が成功していないケースが多く存在しています。その現象が発生する主な原因として、以下の2つが考えられます。

 1.定量指標(例えば:生産量、生産率等)などの客観性がある指標を制定できない状況の下で、そのまま「成果給」を導入した場合。「成果給」とは、よく言われる「業績給」のことです。多数の日系企業は目標管理制度を導入することによって、業績を重視する指向を表わします。但し、目標の設定に関して、「人による設定する」という現象が存在しています。即ち、ある従業員に対しては、目標を高く設定し、自分自身が努力しなければ目標を達成できないのに、ある従業員に対しては、目標を低く設定し、簡単で達成できるような場合です。この様な場合は、目標の設定に客観性が欠けると言えるでしょう。これも日系企業において「成果評価制度」を有効的に実施できない重要な原因です。

 2.日系企業はチームワークを最も強調しているのに、個人評価を導入することにより、かえってチーム全体の協調力を低下させてしまい、最終的に、会社の全体業績を低下させる可能性が高くなります。また、チームワークにより、会社はどのぐらいの業績が従業員個人で完成したか、どのぐらいの業績がチームで完成したか、ということをなかなか区別できません。

 このように、目標を客観的・有効的に設定することは従業員評価の1つの大きな課題となっています。在中日系企業にとっても、同じような問題に直面していると言えるでしょう。

 一般的には、従業員評価制度を制定する際に、市場の特性、会社の経営規模及び従業員への期待要求と結び付け、会社独自の評価制度を制定しなければならないと考えています。また、評価制度は従業員の報酬と関連するだけではなく、従業員の昇進昇格及び人材育成と連動する仕組みを構築しなければなりません。評価と昇進との因果関係を明確にし、評価の公平性を強化することによって、昇進による従業員への激励効果をアップさせることができ、最大限に従業員の仕事に対する積極性及び自発性を発揮し、企業と従業員の共同発展を促します。


 一般的には、従業員評価制度は2つの角度から制定し、一つは業績であり、もう一つは能力態度です。企業であろうと、従業員個人であろうと、業績評価により実際の業務業績及び業務能力、態度をタイムリー・全面的に評価でき、業績フィードバック面談を通じて、業務中の弱みを発見し、企業及び従業員個人の業績改善を促すことができます。

 「成果主義」は業務成果及び報酬と直接にリンクし、従業員がより多くの報酬を手に入れるために頑張っていく。企業は業績を評価できるように、まず、各種類の業務を量化させなければなりません。それを量化させる間に、膨大な時間と労力がかかるため、本来の業務をおろそかにする可能性が高く、本末転倒の現象が存在します。したがって、「成果主義」の導入はある程度のリスクが存在していると言えるでしょう。

【中智コンサルティング日系事業部】中智コンサルティング日系事業部は中智グループの中で在中日系企業向けの人的資源管理コンサルティングなどのサービスを提供している専門的なチームであり、中智人的資源管理コンサルティング有限公司に所属しています。



 寄稿——中智コンサルティング日系事業部  コンサルティング・スタント 張沁妍