ホーム > HRニュース > 中国HRニュース> 「真の中日ビジネス異文化」セミナー開催のご報告(2018年08月30日)

「真の中日ビジネス異文化」セミナー開催のご報告(2018年08月30日)

 さる8月28日(火)、新駐在員を対象にした「真の中日ビジネス異文化」セミナーを中智研修室で開催しました。

 今回のセミナーには、上海一実貿易、イオン、ベネッセ、クレハ、コクヨ、平田機工自動化設備、リクルート、アルプス電気、上海マタイ、三井允拓複合材料、上海川辺、東京インク、シナノア、ヒューマンなどの企業に参加いただきました。

  

 講師は、中智日本企業倶楽部・智櫻会部長の馮串紅が務めました。馮部長は中智上海で日本企業倶楽部・智櫻会を運営し、多くの日系企業へ経営コンサルティング、社員研修等、様々な課題の解決方案を提供しています。毎年自ら会員企業の新駐在員様に真のビジネス異文化講座を開催し、その講座を通して会員企業の実情や課題を分析した上、それに合ったサービスを研究していくと工夫をしています。

  

 冒頭、馮部長は異文化理解について、まず自分の考えを理解し、自分の言葉で説明できる能力、相手の事を理解しようとする能力が必要だと指摘しました。

 そして、異文化の理解力を深めることの目的に、①仕事の目標を達成すること、②中国人と信頼関係を築くこと、③心身とも健康な駐在生活ができることの3点を挙げました。続いて、まず自分を知るため、日本人の優れた点について、グループごとに分かれて議論し、発表しました。

 続いて、まず自分を知るため、日本人の優れた点について、グループごとに分かれて議論し、発表しました。

 日本人の長所について、「真面目に仕事をする」、「話をよく聞いてくれる」、「相手を察して話をする」、「服装がきちんとしている」、「新規の技術開発をしようとする」、「日本本社との接し方を教えてくれる」、「率先して仕事の効率化を指導してくれる」等の意見が発表されました。

 これらの意見の発表後、馮部長は会員企業の中国人社員に行ったアンケート結果を紹介しました。中国人社員から見た日本人の長所について、「礼儀正しい」、「時間や規則を守る」、「理性的、ロジカルが強い」、「生活習慣がよい」、「公私を明確に区別している」等の意見を紹介しました。

  

 また、中国人社員から見た日本人の短所について、「褒め下手で叱り方が厳しい」、「根回しが多い(言い難い事は伝言が多い)」、「中国人をあまり信用しない」、「正しく日本語を直してくれない」、「会議が多く、新しい知識の吸収が少ない」等の意見を紹介しました。

 これらの改善策として、中国語を学び、社員とコミュニケーションを積極的にとること。中国人は面子を気にするので批判的な話は、本人または少数の時に話すようにすること。また、日本人駐在員は、中国人社員が日本語の文法に誤りがあっても、意味が通じるからと間違いを指摘しない事が多い。しかし中国人社員からすると、細かな間違いであっても直してもらいたいと思っていると指摘しました。

  

 続いて日本人にとって、中国人の理解し難い点について議論しました

 その中で、あまり意見を言わない、積極的なコミュニケーションをしない、問題を発見しても報告しない等のホウレンソウを守らないという悩みついて、馮部長は、原因としてやり方が分からない事と信頼の問題が考えられると指摘しました。ホウレンソウを実施させるには、いつ、誰に、どのような方法、報告内容の優先順位を指導する必要があり、それが社風になる様に訓練しなければならないと述べました。また上司へのホウレンソウを「ゴマすり」と見られるのが嫌でやらない社員もいるので、予防のための指導も重要であると指摘しました。

  

 自ら非を認めない。義務はこなさないが権利だけは主張する。仕事をする前によく条件を言うという問題に対して、馮部長は中国の一般的な習慣では、口で非を認めず、「わかりました。今後は注意します。」等という様な言い方しかしないが、表情や態度で判断できると述べました。また、権利を主張したり、仕事前に条件を言うのは、雇用制度と関連していると指摘しました。例えば、日本の場合、一般的に正社員は雇用の際に労働契約書にサインして明確に雇用契約を締結することは少ないが、中国では雇用の際に労働契約を締結することが義務付けられている。このことから、中国人社員は契約に基づいて働くことを意識しており、条件を聞くのは、確認の意味で聞いているので、必ずしも交渉している訳ではない。仕事と責任や役割を明確にすることが大切だと指摘しました。

 給与以外のところで、会社に残ってくれる人を増やしたいという悩みについて、馮部長は社員を会社に引き留める要素として、お金、環境、心の三点を上げました。

 特に、心については、意欲やモチベーションと言いかえる事ができ、会社の方向性を知ってもらい、夢を共有することが大切だと述べました。そのためには、中国法人だけではなく日本本社を含むグローバルの売上げ金額等を共有するのも一つの方法だと紹介しました。ほかに、8褒め2叱りと言わるように社員を褒め感謝を忘れない事や、成長の機会を提供する事が大切だと指摘しました。

 離職率が高いという悩みに対して、データから見ると日系企業の離職率は、民営企業やその他外資系企業と比べ低く、日本より相対的に離職率が高いのは中国の特徴なので、それに応じた経営をしていく必要があると述べました。

  

 最後に、今回の講座の為に、中智日本企業倶楽部・智櫻会の「成功した日本人駐在員インタビュー」特別号を作成し、配布しました。皆様の先輩達の経験談を読んでいただくよう提案しました。そして、成功した駐在員にとっては、高いスキル(コミュニケーション力、指導力、リーダーシップ、責任感、犠牲精神、心を無にして話し合える関係)作りに努力する事が大切で、孤独に耐える力も必要だと指摘し、日本人駐在員の皆様へエールをおくり講義を終えました。

  

 講義終了後のアンケートでは、セミナーの感想について、参考になったというコメントを多く頂きました。セミナーを通じて新たに感じた事について、「中国人との信頼関係は法的契約、心理的契約、権限委任で築かれる。」、「人と人は同じである、しかし違うところを理解することが大切である。」、「中国労働市場における日本企業の位置づけが良く分かった。」等のコメントをいただきました。また、在中日系企業で働く中国人社員に言いたい一言について、「できるだけ長い期間仕事を続けてほしい。」、「お互い本音で仕事しましょう。」、「同じ会社で働く者として喜びも苦しみも共有して頑張りたい。」等のコメントをいただきました。皆様の率直なコメントを、中国人社員の皆様と共有させていただき、日本人駐在員と中国人社員の相互理解の一助となれば幸いです。