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【判例】使用単位は、法定退職年齢到達まで残り5年未満で、かつ現使用単位での勤続年数が満15年を超えた労働者との労働契約を解除できるか?(2019年10月30日)

案例:

郭氏は90年代初めに外商投資企業へ入社し、生産技術部で品質管理の仕事に就いていた。

2016年4月初め、会社は経営困難に陥った。これを受けて会社側は工会にて従業員全員へ現在の状況を説明し、工会と従業員の意見を聴取するとともに、労働行政部門へリストラの手続きに入ったことを報告した。

郭氏はこれを受け取った後、会社側のやり方は違法ではないのかと考えた。郭氏自身はもうベテランで、会社側は自分との労働契約を解除できないと思い(※注:中国の労働契約法では同一企業での勤続年数が15年以上で、法定定年退職年数まで5年に満たない労働者の解雇を禁じている)、会社側と何度も交渉の機会を持ったが解決には至らず、郭氏はやむなく労働人事仲裁委員会へ仲裁を申し立て、会社側へ労働契約解除の撤回と双方間の労働関係の回復、労働契約の継続的履行を求めた。労働人事仲裁委員会は審議ののちこれを受理した。

仲裁庭での審議

仲裁庭の審議が開始された際、郭氏は「会社側が経営困難な状況にあり、30日前に工会及び従業員全体へ現在の状況を説明し、工会と従業員の意見を聴取するとともに、労働行政部門へリストラの手続きに入ったことを報告したのは確かだ。しかし私自身は現在の会社での勤続年数が15年を超えているし、法定定年退職年齢到達まであと5年に満たない。この状況下にあって、会社側がリストラにより自身との労働契約を解除するのは労働契約法の的に反している」との見方を示し、会社側へ労働契約解除の撤回と双方間の労働関係の回復、労働契約の継続的履行を求めた。

これに対して会社側は、「経営が大変困難な状況にあって、会社側は30日前に工会及び従業員全体へ現在の状況を説明し、工会と従業員の意見を聴取するとともに、労働行政部門へリストラの手続きに入ったことを報告している。これらリストラの手続きは国の規定に基いているものだから、郭氏との労働関係の解除は合法であり、郭氏の求めには応じられない」とした。

労働人事仲裁委員会は審議を経て、郭氏が「現企業での勤続年数が15年以上で、法定定年退職年数まで5年に満たない労働者」であることを確認した上で、「中華人民共和国労働契約法」の規定を根拠として、会社側のリストラを理由とした郭氏との労働契約解除は法的根拠に欠けるとし、会社側へ双方の労働関係を回復し労働契約を履行するよう命じた。

判決

仲裁庭は、会社側へ郭氏との労働関係を回復し、労働契約を履行するよう命じた。

分析

本案件の争点は、「使用単位が経営困難に陥りリストラを余儀なくされたとき、法定定年退職年齢到達まで残り5年足らずの、現使用単位での勤続年数が満15年を超えた労働者との労働契約を解除できるか?」という点である。

「中華人民共和国労働契約法」第四十二条の規定とは、次のようなものである。「労働者が下記に該当するときは、使用単位は本法第四十条、第四十一条に定める労働契約の解除を行うことができない」…(五)労働者が現使用単位で連続して満15年以上勤務しており、かつ法定退職年数まで5年に満たないとき。

このことから、会社側が同法第四十一条に基づきリストラを敢行することができたとしても、現企業での勤続年数が15年以上で、法定定年退職年数まで5年に満たない労働者については、たとえ経済補償金を支払ったとしても労働契約を解除することはできないことがわかる。郭氏の合法的権益は、国家規定により同法第四十一条に基づくリストラからも保護されることになるのである。

会社側が経営困難によるリストラを理由として郭氏との労働契約をみだりに解除した行為は、国の定める法律法規に相反する。ゆえに、労働仲裁委員会は郭氏の請求を認めたのである。