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【判例】会社側が研修費用を負担し、労働者が離職した場合、服務期間契約の違約金支払いの義務が生ずるか?(2019年11月29日)

案例:

王氏は2016年6月末に大学を卒業し、同年7月求人広告を見て某貿易会社へ応募した。王氏は人事部による筆記試験と面接を経て正式に採用され、労使双方は3年間の労働契約を締結した。労働契約書には、王氏は営業業務に服するとあった。

2016年9月初め、会社側は王氏のために3ヶ月間に及ぶ外国での業務研修を手配した。研修費用は80,000元であった。会社側は研修の前に王氏と協議書を交わし、王氏が5年間勤務し続けなければならない事、もし5年を待たずして離職及び紀律違反により解雇されたときは、残りの年月について違約金を支払う事、違約金は王氏が勤務しなければならない残りの年月分とすること等を約定した。研修が終わった後、王氏は営業部の経理助理となり、その半年後には営業部経理となった。

しかし2019年2月初めに、王氏が個人的な理由で会社を離職したため、双方間で違約金を巡る争いが発生し、会社側は2019年3月末に市内の労働人事仲裁委員会へ労働仲裁を申し立て、王氏へ違約金を支払うよう求めた。仲裁庭は審査の末これを受理し、双方当事者に調停へ出席するよう通知した。

審議

仲裁審議にて会社側は、「王氏は出国している間研修を受けており、その費用は会社側が負担したものであって、王氏が主張するように通常業務を行っていたのではない」と主張した上で、仲裁庭へ研修費用等の証拠を提出し、自身の主張が事実であることを証明した。その上で、「王氏は個人的な理由で会社側との労働契約を解除したものであるから、残りの期間に応じた違約金を支払うべきである」とした。

これに対して王氏は、「出国していた期間も、他の外国人従業員と同じく人事管理を受け、同じように業務に従事しており、何ら研修を受けたことは無かった。日本に出国していた期間も通常業務に従事しており、研修は受けていないから、会社側による違約金の支払い請求は事実や法律に照らしても根拠を欠き、同意できない」と反論した。

仲裁庭は審理の末、「本案件において、会社側と王氏は当事者双方の真実の意思において協議書を締結しており、双方間で勤務しなければならない期間を定めている。この協議書には何ら法律法規に反するところがなく、合法かつ有効なものである。双方間で協議書が締結された後、王氏が労働契約を解除したものであるから、王氏は違約責任を負わなければならない」として、会社側の主張を認めた。

判決

仲裁庭は、王氏へ約定の残りの期間について違約金を支払うよう命じた。

分析

本案件のポイントは、使用単位が研修費用を負担し、労働者へ研修終了後5年間当該使用単位で勤務しなければならない旨を双方間で約定した場合において、労働者が個人的な理由で期間の到来を待たずに離職した(協議に違反した)場合に、当該労働者は使用単位へ違約金を支払わなければならないか?という点である。

「中華人民共和国労働契約法」第二十二条では、「使用単位が労働者へ専門的訓練の費用を提供し、これに基づいて訓練を行うときは、労働者と協議を締結し勤務しなければならない期間を定めることができる。労働者は、これ違反したときは、使用単位へ違約金を支払わなければならない。違約金の金額は使用単位が提供した訓練費用を超えてはならない。使用単位の労働者に対する違約金は当該期間の履行されなかった部分を按分した額を超えてはならない」とある。

このことから見て取れるように、会社側が外国での訓練を手配し、王氏と協議書を締結した上で、勤務しなければならない期間を双方真実の意思において約定している(そして法律に反するところがない)ときは、協議は有効とされる。

双方は協議を締結した後、その定めるところに従い義務を果たすことになる。今回は王氏が約定に反したため、王氏は違約責任を負うことになる。ゆえに、仲裁委は会社側の主張を認めたのである。