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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

『MUFGバンク(中国)有限公司広州支店 小泉 大祐 支店長 インタビュー!』2023/4/19

<strong><font style="font-size:19px">いま中国式のビジネスを理解する人材が求められている </font></strong>

いま中国式のビジネスを理解する人材が求められている

<strong><font style="font-size:19px">——MUFGバンク(中国)有限公司広州支店 小泉 大祐 氏</font></strong>

——MUFGバンク(中国)有限公司広州支店 小泉 大祐 氏


 
MUFGバンク(中国)有限公司広州支店
小泉 大祐 支店長

 

早稲田大学法学部卒業後、1994年に三和銀行に入行。2005年に北京語言大学に1年間留学後、香港、北京、無錫、上海で勤務。2016年よりMUFGバンク(中国)リサーチ&アドバイザリー部部長等を経て、2021年6月より広州支店支店長に就任。2022年5月より広州日本商工会会長を務める。

 

◆◆◆ 日中国交回復前から外銀の先頭に立ち中国業務を強化 ◆◆◆

三菱UFJ銀行は、もともと四つの銀行(三菱銀行、東京銀行、三和銀行、東海銀行)の流れをくむ銀行が合併して2006年に誕生した比較的新しい銀行である。しかし、そのルーツは古く、1919年に設立された三菱銀行など、どれも100年以上の歴史をもつ。

中国法人であるMUFGバンク(中国)の事業内容について、「当行の中国業務は、日中国交回復前の1958年、日中間初のコルレス契約締結にさかのぼり、80年に北京駐在員事務所開設(外資商業銀行初の事務所)以来、古くは円元決済協定、第一次円借款に始まり、デリバティブ業務資格、銀行間為替市場マーケットメーカー資格の取得、外銀初の人民元建て金融債発行、香港系以外で外銀初の点心債の発行等、常に中国において邦銀のみならず外銀の先頭に立ち、中国業務の強化に努めてまいりました。現在、中国本土に14支店、3出張所を設けており、邦銀最大のネットワーク体制でお客様の中国ビジネスをサポートしています」と小泉支店長は紹介してくれた。

 

◆◆◆ 地元政府と外資企業の距離が近くビジネスがしやすい ◆◆◆

広州支店の管轄地域における日系企業の投資状況を小泉支店長にたずねた。「広州支店は、広東省の東莞市以西、および広西チワン族自治区、海南省を管轄としています。広州とその周辺地域には、自動車関連企業が数多く進出しており、近年の急速な自動車のEV化に対応するため大規模な投資がみられます。そのほか、食品関連の投資も増えています。企業の撤退はさほど多くはありませんが、工場のある土地の地目が工業用地から商業用地に変更されたことによる移転は少なくありません」

広東省は外資企業にとってビジネス活動がしやすい地域だと小泉支店長は話す。「広東省は、外資企業の進出の歴史が長いためか、地元政府は外資企業との付き合い方をよく理解しているように感じます。広東省では、商工会や様々な機構を通じて地元政府と政策交流会を開催する等コミュニケーションの機会が多く、地元政府と外資企業の距離が近いように感じます。このような交流会では、関連部門の担当者が出席して、こちらが提起した質問に対して直接に回答し、必要に応じて迅速に対応してくれます。新型コロナ流行時には、日本向けチャーター機の手配や隔離施設の環境改善などの要望を聞き入れ積極的に対策を講じてくれました」


支店長室での勤務風景

 

◆◆◆ 日系企業でも中国式のビジネスのできる人材が求められる ◆◆◆

中国の経済発展にもとない日系企業の経営戦略や人材ニーズにも変化が見られると小泉支店長は話す。「広州には、自動車関連企業の工場が多いのですが、広州以外に天津や武漢など、全国に展開している企業も少なくありません。そこで全国を公平に管理・運営するため広州に統括会社の設立を検討する企業からの相談が増えています。さらに、中国企業との取引増加にともない、製造業の場合は工場の近くに研究開発拠点のある方が機能しやすいという特性から、広州で研究開発センターを設置、拡大する動きがみられますが、研究開発人材の確保が課題となっています。

日系企業に求められる人材にも変化がみられます。かつては中国企業と日系企業の技術力の差が大きく、日系企業では日本人の指示どおり忠実に実行してくれる中国人社員が評価されていました。ところが現在では日中の技術力の差は小さくなり、そのような考え方も変化してきています。

また、中国の経済発展にともない中国市場の重要性が高まるにつれ、中国式のビジネスができる人材に対するニーズが高まりつつあります。特に管理職に求める人材は、中国企業や地元とうまく協力できる能力が重視されます。最近、私はよく若い行員に対して、あなた達は中国出身なのだから、中国ではどのようにビジネスをしているのかを学び、率先して実践するよう伝えています」


 

◆◆◆ 中国企業の日本進出が、日系企業に良い刺激となることを期待 ◆◆◆

近年、中国企業から日本への投資に関する相談が増えていると小泉支店長はいう。「以前は、各支店レベルで個別に対応していたのですが、より専門的できめ細やかなサービスを実現するため、現在は相談窓口を集約しています。中国企業からは、買収に関するご相談が比較的多く寄せられています。しかし日系企業は保守的で、従業員の雇用を重視する企業が多いため、いきなり買収を提案するよりも、業務提携から始めた方が上手くいく場合が多いように思います」

近年注目されている中国企業の日本進出について、小泉支店長は肯定的にとらえている。「新型コロナの影響で3年間も日中間の往来ができず、その間にも中国が発展し中国企業と日系企業との差がますます小さくなっている現状を理解していない人が多いように思います。中国企業が日本市場へ進出して活躍してもらうことで、日系企業にとって良い意味での刺激になり、互いに切磋琢磨し経済の活性化につながることを期待しています」

 

◆◆◆ 広州日本商工会会長として日本政府より外務大臣表彰を授与 ◆◆◆

2022年5月から小泉支店長は広州日本商工会会長に就任し、様々な記念行事や活動を行ってきた(任期は2023年4月30日まで)。「昨年は日中国交正常化50周年の節目の年にあたり、各種記念行事やドラゴンボート大会等を開催しました。9月には在広州日本総領事館と粤港澳大湾区企業家連盟、広州日本商工会の主催により、日中国交正常化50周年を記念した『粤港澳大湾区企業家サミット』を広州で開催し、日中企業間の協力関係を深めました」

昨年9月、小泉支店長は広州日本商工会会長として、日本政府より広州で初となる外務大臣表彰を授与された。受賞の感想をたずねると、「外務大臣表彰を受賞したことは大変光栄に思います。しかし、たまたま私が会長の時に受賞したものであり、長年にわたる諸先輩方の努力や功績が評価されての表彰であると感謝しています」と小泉支店長はとても謙虚に感想を述べた。

   


 
外務大臣表彰賞の受賞式(在広州日本総領事館の記事より転載)

外務大臣表彰賞の受賞式(在広州日本総領事館の記事より転載)

 

◆◆◆ 固定観念にとらわれず、多様性を受け入れることが大切 ◆◆◆

小泉支店長は05年に北京言語大学に留学後、ほとんどの期間を中国で勤務してきた。そこで中国でうまく仕事をするコツを小泉支店長にたずねた。「今は自然にできていることなので普段あまり意識していませんが、『郷に入っては郷に従え』という諺があるように、日本はこうだという固定観念にとらわれず、多様性を受け入れることが大切だと思います。中国へ赴任しても、うまく適応出来ないタイプの人には、日本的感覚が抜けきれない人が多いように感じます。異なる考え方を尊重し、中国ではこうした方が上手くいくのではないかと意識しながら仕事をすることが大切です」

これまで中国各地で勤務経験のある小泉支店長だが、広州は非常に住みよい都市のひとつだと話す。「広州は古い街並みと新しい街並みが共存している美しい都市です。休日にはよく街にある歴史的建築物をめぐりながら散策を楽しんでいます」

 

◆◆◆ 銀行という中立的な立場で日中企業の橋渡し役になりたい ◆◆◆

インタビューの最後に、今後の展望を小泉支店長にたずねた。「広州支店のお客様は日系企業の比率が高く、中国企業のお客様に対するビジネスを広げていくことが目標です。これから日系企業が中国で発展するには、中国企業や地元政府と上手く協力しながら、ビジネスチャンスを広げることが不可欠です。当行としては銀行という中立的な立場で、融資、預金、外国為替、情報提供、事業戦略のサポート、ビジネスパートナーの紹介などを通じて日系企業と中国企業の橋渡しとなり、ウィンウィンの関係を築けるような役割を果たしてまいりたいと思います」

中智の感想:

小泉支店長の中国勤務は今年で16年目になり、行員としてのキャリアの半分以上を中国で過ごしてこられました。日中間の友好活動に常に前向き、積極的に支援をしてこられました。上海駐在中の2017年には、中智日本企業倶楽部智櫻会主催の「人力資本論壇・日系企業分科会」にご登壇いただき、230社余りの日系企業に向けて中国の最新経済動向などについて講演していただきました。小泉支店長は中国語にも堪能で、近日、中智広州の石帥男総経理ら一行が訪問した際には、通訳を通さず流ちょうな中国語で交流されました。

   


 
2017人力資本論壇・日系企業分科会での講演

2017人力資本論壇・日系企業分科会での講演


中智広州の石帥男総経理ら一行が訪問

また、日中国交正常化50周年の節目にあたる昨年は、広州日本商工会会長として、各種記念行事を開催して日中の交流を促進し、年末の疫病流行の際には広州日本商工会の会員企業や駐在員に対するサポートに尽力されました。これからも、日中企業の橋渡し役として、小泉支店長がご活躍されることをお祈りします!


中智日企倶楽部智櫻会代表がインタビュー記念

※「会社名、役職名はインタビュー記事発表時の名称です」