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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

『佐藤自動識別系統国際貿易(上海)有限公司 緩利 信介 副総経理 インタビュー!』2023/8/30

<strong><font style="font-size:19px">従業員の得た知識や経験を共有できる仕組みをつくる </font></strong>

従業員の得た知識や経験を共有できる仕組みをつくる

<strong><font style="font-size:19px">——佐藤自動識別系統国際貿易(上海)有限公司 緩利 信介 氏</font></strong>

——佐藤自動識別系統国際貿易(上海)有限公司 緩利 信介 氏


 
佐藤自動識別系統国際貿易(上海)有限公司
緩利 信介 副総経理

 

2001年に龍谷大学経済学部卒業後、印刷会社に就職し2003年に初めて上海へ駐在する。その後、商社を経て、2009年にサトーグループに入社。入社後は、佐藤自動識別系統国際貿易(上海)へ赴任し、営業や管理責任者を歴任する。上海のほか、北京での勤務を経て、2023年より同社副総経理に就任する。

 

◆◆◆ IoT時代、様々な業界の現場を支える「自動認識技術」 ◆◆◆

1940年に創業したサトーグループは、あらゆるモノや人に情報を紐付け、その動きを可視化することで、 現場ごとに最適な課題解決の仕組みを提供する「自動認識ソリューション」の会社だ。バーコードやRFID、画像認識などに代表される、自動で情報を認識、入出力するための技術を「自動認識技術」という。それらを駆使して動くモノや人に情報を紐付け(Tagging)、トレーサビリティ、サプライチェーンマネジメント、資産管理など、さまざまな業務アプリケーションを現場で支えるのが「自動認識ソリューション」である。

今や、小売、製造、食品、物流、医療など多くの業界で欠かせない社会的インフラとなっており、活用される現場データ量が爆発的に増加するIoT時代において、その重要性はますます高まっている。現在、サトーグループは、中国を含む世界26の国と地域に拠点を構え、90以上の国と地域でビジネスを展開している。

2002年に佐藤自動識別系統国際貿易(上海)有限公司(以下、サトー中国)を設立し、中国での事業を本格的に開始する。「中国経済の発展とともに当社は順調に発展を続け、現在では中国全土に13カ所の営業及びサービス拠点と工場を持ち、日本と同様のサービスを提供しています。中国進出当時は、日系企業のお客様が約8割を占めていましたが、現在では国有企業や民営企業など、中国企業のお客様が過半数を占めるようになっています」と緩利副総経理は、会社の沿革を紹介してくれた。

近年、中国では、新型コロナ流行、加速する高齢化などの影響もあり、ものづくり(生産工場)をはじめ、身の回りの生活において「自動認識ソリューション(省力化、自動化、正確性向上)」は、重要な役割を果たしており、これらには同社の製品やソリューション技術が活用されている。

今年の3月には、サトーグループの中国20周年と新オフィスへの移転を祝う記念式典が盛大に催された。中智日本企業倶楽部も招かれてサトー中国の友人と社員達250名とともに感動的な瞬間を見届けた。


20周年式典で登壇祝辞を述べる緩利副総経理

 

◆◆◆ 一人ひとりの従業員の得た知識や経験は会社の大切な財産である ◆◆◆

昨年、日本を含む全世界のグループ会社を対象に従業員エンゲージメント調査を実施したところ、中国法人の従業員エンゲージメントが全体的に高かったのだと緩利副総経理は誇らしげに話した。

従業員のエンゲージメントを高める取り組みの一つとして、緩利副総経理に紹介していただいた。「オンラインの教育プラットフォームを立ち上げ、業務に必要な知識を学べるようにし、人事部で各従業員の受講率を確認できるようにしています。受講率の低い従業員がいる場合、モチベーションが下がっている可能性があるため、上司からフォローするようにしています。さらに、従業員一人ひとりが得た知識や経験は会社にとっての財産であるという考えから、このプラットフォームは、会社から一方的に知識を提供するだけではなく、従業員同士の情報共有の場としても活用しています。具体的には、各従業員の業務上の成功事例をプラットフォーム上で公開し、他の従業員が学べるようにしています。より積極的な情報共有を奨励するため、インセンティブ対象とすることを検討しているところです」

サトーグループ独自の制度に「三行提報」というものがある。「1976年から続く『三行提報』は、全従業員が経営をサポートし、経営トップに直接報告する独自の仕組みです。中国法人でも導入しており、従業員は、現場や職場で得た情報やアイデアを三行(100~150文字)にまとめて毎週(日本法人では毎日)提出します。これにより、経営トップはいち早く社内外の環境を把握し、迅速な意思決定や必要な施策を講じることができます。加えて、従業員が経営者と同じ感覚でものを考える『全員参画の経営』を実現しています。実際に、良い提案に対しては、経営トップから直接に実行指示が出され、これが従業員のモチベーションアップに繋がっています」

 

◆ 会社の持続的な成長には、従業員が成長し変化し続けられることが必要 ◆

VUCA時代といわれる現代、確定できない「未定の未来」に対する、緩利副総経理の想いを尋ねた。「先の見通せない時代の中で、会社が持続可能な成長を実現するには、従業員一人ひとりが成長し、変化し続けることが必要です。そのために、会社としてどの様なサポートができるのか、常に考えています。

いま世界では、AIの発展や自動化が働き方に与える影響がよく議論されています。個人的な体験になりますが、今年の8月、4年ぶりに日本へ帰国したところ、ホテルのチェックインや飲食店など、日本でも自動化がずいぶん進んでいたのに驚きました。操作に慣れればスムーズに処理できて問題ないのですが、マニュアル通りで面白味がなく、日本のレベルの高い接客を期待していた私や一緒に帰国した家族は、少し残念に思いました。将来、AIの活用や自動化がますます進む中でこそ、人間の個性がより大切になるのではないかと感じました」


2003年に、緩利副総経理が初めて上海の土を踏んでから、20年の歳月が流れた。「長く中国で働いていると、社会や経済だけでなく人々の生活も大きく変化していることを実感します。ベテラン社員らの話では両親たちが働いていた時代の月給は数百元だったそうです。 2009年に私がサトーグループに入社した際の新卒社員たちが今では管理職やリーダーとなり活躍しており、プライベートでも結婚して子供がいる社員やマンションやマイカーを所有する社員など経済発展と共に社員たちの生活も大きく変化しています」

日系企業の求める人材像にも変化を感じると緩利副総経理はいう。「昔は、日本語能力や日系企業での勤務経験を重視していましたが、今日では人材に対して、より専門性を重視するように変わってきています」


 

◆◆◆ サトーグループにおける中国の価値をより一層高めたい ◆◆◆

インタビューの最後に、今後の展望を緩利副総経理にたずねた。「今あるお客様とこれから新たに出会うお客様に役立てるような会社、永続的に続くような関係を築ける会社にしたいと思います。そのためにお客様に役立てる社員を育てなければなりません。また、優秀な製品を扱う中国のサプライヤーが増えてきています。このような製品の調達力の強化を図り、他の海外サトーグループに役立つような製品の提供ができるようにすることで、サトーグループの中での中国の価値を、より一層高められるよう努力してまいります」

中智の感想:

緩利副総経理は、2003年に初めて中国へ駐在して以来、これまで20年間にわたり中国で働いてこられました。サトー中国に入社して14年間、営業の管理だけではなく、長期的な視野にたった中国人社員の育成、文化の違いに戸惑う新赴任駐在員のフォローと、多忙を極めています。従業員一人ひとりの情報や経験をいかに共有するかは、多くの日系企業が抱える共通の課題でもあります。サトー中国では、プラットフォームや三行提報、奨励などを、うまく組み合わせた仕組みを作ることで、会社や従業員同士の情報共有を実現しています。インタビューの中で、「まだまだ中国でできることが沢山ある」「末永くお客様の役に立つ社員を育てたい」と熱を込めて語る緩利副総経理の姿が印象的でした。長年日本と中国の間の橋渡し役として全身全霊で取り組む精神に敬服します。



※「会社名、役職名はインタビュー記事発表時の名称です」