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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

『上海凱迪迪愛通信技術有限公司 甫足 空 董事総経理 インタビュー!』2023/10/30

<strong><font style="font-size:19px">人材ボーナス時代に合わせたICTソリューションを提案 </font></strong>

人材ボーナス時代に合わせたICTソリューションを提案

<strong><font style="font-size:19px">——上海凱迪迪愛通信技術有限公司 甫足 空 氏</font></strong>

——上海凱迪迪愛通信技術有限公司 甫足 空 氏


 
上海凱迪迪愛通信技術有限公司
甫足 空 董事総経理

 

2002年にKDDI株式会社入社。入社後は、国際映像伝送業務に従事、2006年にKDDIアメリカへ出向する。帰任後は海外パートナーと連携した機器開発や海外通信事業者との連携業務等、海外と関連する業務に携わる。2012年から2018年まで中国電信との合弁会社の上海凱訊通信工程有限公司へ出向する。その後、日本での勤務を経て2021年から上海凱迪迪愛通信技術有限公司へ出向し、2023年4月より現職に就任する。

 

◆◆◆ 豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献 ◆◆◆

KDDIは、2000年にDDI(第二電電)/KDD(国際電信電話)/IDO(日本移動通信)が合併し発足した日本を代表する電気通信事業者である。日本国内で固定通信事業、携帯電話事業などを展開しており、現在では5G通信を中核に、DX (デジタルトランスフォーメーション) 、 金融 、エネルギー 、LX (ライフトランスフォーメーション) 、地域共創 (CATV等) の5領域の拡大を推進している。

中国事業においては、2001年に北京凱迪迪愛通信技術有限公司(KDDI中国)を設立し本格的に事業を開始、事業拡大のため2009年に上海凱迪迪愛通信技術有限公司(KDDI上海)を設立する。

「KDDI上海では、華東エリアを中心に中国で事業を展開されている企業様に対してICTソリューションを提供しています。上海のほか、蘇州に支店、常熟、武漢、成都に事務所を設けています。近年では、オフィスや工場におけるDXソリューションや、スマートオフィスの提供にも注力しており、お客様の事業への本業貢献及び業務効率化に向けた支援に積極的に取り組んでいます」と甫足総経理は、会社の事業内容を紹介してくれた。

 

◆◆◆ 働き方の変化に沿ったソリューションを提供 ◆◆◆

コロナ禍による働き方の変化は、同社の業務に対するニーズにも変化をもたらした。「従来からのネットワーク構築及び情報セキュリティに関連するニーズに加え、コロナ禍を経て柔軟な働き方が普及したことから、リモートアクセス環境の構築、電子署名システム、スマートフォンを活用した経費精算システム、フリーデスクの管理ソリューション等、お客様の新たな働き方に沿ったソリューションをご提供する機会が増えています。そのほか、緊急時にも最低限の事業継続を実現する為のBCP(事業継続計画)環境の構築検討のご相談も寄せられています」と甫足総経理は話す。


 

◆◆◆ 「人材ボーナス」時代、企業の持続的な成長にはICTやDXの活用が鍵 ◆◆◆

中国は、これまでの「人口ボーナス」時代から、「人材ボーナス」時代にシフトしている。限られた人材リソースの中で、企業が持続的に成長するためには、ICTやDXを活用した生産性の向上や業務効率化が鍵になると甫足総経理は話す。「例えばPC等で実施する定型事務作業について、ソフトウェアロボットを利用して自動化したり、工場の電力状況や生産ラインを可視化してデータを蓄積、分析したりする事で、より効果的でピンポイントな対策を実施して業務効率を改善することができます。しかし注意しなければならないのは、業務の効率化は人材リソースを削減することが目的ではなく、改善によって生まれたリソースを、会社の将来に向けた新事業や注力事業へ振り向けることが目的であるということです」

企業のデジタル化推進にともない、業界を問わずICT人材の需要が高まっている。優秀なICT人材を惹きつけ、育成するKDDI上海の取り組みを甫足総経理に尋ねた。「現在の情報デジタル社会に合わせ、若いICT人材に弊社に興味を持って頂き、この会社で働いてみたいと思って頂けるよう、WeChatの企業アカウントやセミナー等を通じ、会社の情報や直近の新しい取り組みを積極的に発信しています。ICT人材の育成については、社内研修のほか、コロナの制限が解除され往来が事由になった今年度から、日本本社と連携した人材交流プログラムが再開されました。今年は、1名のナショナルスタッフが2年間の研修の為、日本本社へ出向しています。そのほか、日本本社へ出張して日本側の部門との合同研修や日本側のお客様への訪問等、グローバルな視点を意識した取り組みを促進しています」

 

◆◆◆ 新オフィスへの移転に際し、スマートオフィスを導入 ◆◆◆

近年、従業員のモチベーションを上げる方法として、非金銭的インセンティブが注目されている。KDDI上海でも、非金銭的インセンティブを積極的に取り入れている。「従来から、KDDIフィロソフィ活動やチームビルディング活動、本社と連携した各種施策や研修等を行っており、従業員の意識向上とモチベーションアップに効果を発揮しています。それに加えて最近では、従業員がより働きやすい環境を整備するため、2021年に前滩エリアの新オフィスへ移転するのに合わせスマートオフィスを導入したほか、各スタッフのライフスタイルに合わせた勤務を実現するためフレックス制度を採用しました」




AIの普及が与える雇用への影響や働き方の変化など、予測できない未来に対して漠然とした不安をもつビジネスパーソンは少なくない。「未定の未来」に対する甫足総経理の考えを聞いた。「2~3年後を見据えた取り組みを意識し、数年後の市場やお客様の事業環境を想像して取り組む事が重要であると考えています。現在、生成AIが注目されていますが、数年後には私たちの一部の業務は、確実にAIに置き換わっていることでしょう。ここで大切なのは、AIと人間のそれぞれの得意領域をきちんと理解し、どのように業務の進め方を「変化」させていくのかだと考えます。例えば新しいものの創造や、人の心を動かす感性は、AIには簡単に真似ることのできない人間の能力だと思います」

甫足総経理が中国へ赴任するのは、今回が2度目である。「2012年から18年までの6年間、KDDIと中国電信の合弁会社である上海凱訊通信工程有限公司で勤務していました。その間に『WeChat』や『アリペイ』による電子決済やシェアサイクル、ライドシェア等のICTやDXを駆使したビジネスが瞬く間に普及していくのを目の当たりにし、我々もこのスピードに遅れないよう事業を成長させなければならないと強い危機感を持ちました」


 

◆◆◆ 中国市場でお客様と「共に成長する」企業を目指す ◆◆◆

インタビューの最後に、今後の展望を甫足総経理に尋ねた。「持続的な成長を実現していく為、新しい事業に積極的にチャレンジしていくつもりです。今年度はカーボンニュートラル促進に向けた電力可視化やお客様のICT環境管理を強化する為のマネージドサービスに注力したいと考えています。また、『共に成長する』ことを会社方針として掲げており、お客様の成長に貢献するのはもちろんの事、自社の成長と社員の成長を合わせて実現できるように尽力していきたいと考えています。日本や東アジアのみならず、他リージョン含めたKDDIグループ一丸となってお客様と共に事業成長を実現してまいります」

中智の感想:

KDDIは中国でも有名な稲盛和夫氏が創業者であり、社員の行動規範として「KDDIフィロソフィ」を採用されています。KDDI上海の新オフィスを入ってすぐに、素敵なカフェスペースが広がっており、従業員の皆さんが休憩や簡単な打ち合わせに利用していました。オフィスは空調や照明、温湿度・PM2.5などのオフィス環境をIoTで管理し、業務効率化に加えて従業員にとって快適なオフィス空間を実現しています。甫足総経理は、家族を日本に残して中国へ単身赴任されていますが、ビデオ通話を使って常に家族とコミュニケーションをとっており、週末はリモートでお子さんに勉強を教えているそうです。良きリーダーとして、良き父親として、中国でのご活躍をお祈りします!



中智日本企業倶楽部会員企業代表がボアオ経安フォーラムに出席(左から3人目:甫足総経理)

※「会社名、役職名はインタビュー記事発表時の名称です」