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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

『米思米(中国)精密機械貿易有限公司 徐 少淳 董事長 インタビュー!』2024/10/8

<strong><font style="font-size:19px">中智日本企業倶楽部・智櫻会 経営者インタビュー 第106回 </font></strong>

中智日本企業倶楽部・智櫻会 経営者インタビュー 第106回

<strong><font style="font-size:19px">時間価値向上とローエンド商品開発、<br>そして人材育成で中国製造業の課題を解決 </font></strong>

時間価値向上とローエンド商品開発、
そして人材育成で中国製造業の課題を解決

<strong><font style="font-size:19px">——米思米(中国)精密機械貿易有限公司 徐 少淳 董事長</font></strong>

——米思米(中国)精密機械貿易有限公司 徐 少淳 董事長


 
米思米(中国)精密機械貿易有限公司
徐 少淳 董事長

伊藤忠(中国)集団有限公司の中国投資部主任、パナソニック電工(中国)有限公司の財務部長を経て、2012年に米思米(中国)精密機械貿易有限公司に入社する。2017年に株式会社ミスミ中国企業体の執行役員及び米思米(中国)精密機械貿易有限公司の総経理に就任する。2021年には同社の董事長兼総経理に就任、2022年より本社の取締役及び中国企業体副社長を務めている。

ミスミグループ本社は、1963年に東京都で創業以来、製造業の部品標準化を推進し、紙カタログ販売からAIを活用したECPFの製販一体のビジネスモデルを確立しました。これにより、高品質な部品を低コストで迅速かつ正確に提供しています。

2003年6月には上海に三住精密機械有限公司を設立(2007年6月に米思米(中国)精密機械貿易有限公司に社名変更)し、中国事業を開始しました。以降、モデル革新を続け、多くの顧客から支持を受けて、中国事業は順調に発展・拡大しています。ミスミグループは、世界23工場、17物流センターと66営業拠点を展開するグローバル企業であり、中国は海外売上高の約3分の1を占め、海外最大の売上規模を誇ります。中国本土には、江蘇省南通市、無錫市と上海市青浦区に製造拠点を有し、今年7月には、上海市奉賢区の工業総合開発区に新しく建設した本部機能を備えた新園区へ移転しました。これにより、中国市場でのさらなる事業拡大が期待されます。今回は、米思米(中国)精密機械貿易有限公司 徐少淳 董事長にインタビューしました。

 

◆◆◆ ミスミQCTモデルで高品質・低コスト・短納期を実現 ◆◆◆

ミスミグループの大きな特徴のひとつに、顧客が必要とする主要製品を、「高品質(Quality)」「低コスト(Cost)」「短納期(Time)」で「創る、作る、売る」というビジネスモデルがあり、それぞれの頭文字をとって『ミスミQCTモデル』と呼ばれている。このモデルは、機械部品数百万ある製品の中から、製品一個からでも迅速に対応できる画期的な仕組みとして日本で確立し、現在では世界中の生産拠点に広がり、中国でも競争力を高めるための重要なビジネスモデルになっている。

「ミスミQCTモデルは、技術進化と競争力というふたつの要素に支えられています。伝統的な製造プロセスの非効率を解消し、厳格な品質管理、顧客の声の対応、継続的な改善、そして最新技術の活用を通じて、高品質な製品を提供しています。

近年、中国市場ではコスト競争が厳しくなり、コストメリットがより重視されています。これまでのハイエンドの商品以外に、現地の製造業向けに新領域商品、経済型商品の開発が求められていました。そこで、2021年に経済型商品の開発を進め、従来のハイエンド商品に加えて、価格を抑えたローエンド商品をラインアップに追加し、競争力を向上させました。また、オペレーションや物流の改善を通じて生産性を高め、無駄削減によりコスト引き下げることにも成功しました。

さらに、顧客のニーズに応えるために、迅速かつ確実短納期で製品を出荷することも重要です。顧客の時間を大切にし、明確な納期を設定して受注から出荷までの時間を最小限に抑えることで、確実短納期を実現し、顧客満足度を向上させ、競争力を一層強化しています。



ミスミの企業理念

 

◆◆◆ DX活用と人材育成が評価され、数々の権威ある賞を受賞 ◆◆◆

ミスミでは、DXと人工知能技術を積極的に活用しており、その取り組みが高く評価されている。CFS2024第十三回財経峰会では「数字化転型推動」と「優れた人工知能リーダーシップ賞」を、2024年(第7回)経済大会では「新質生産力優秀企業賞」と「十大リーダー企業賞」を受賞した。このように、ミスミはDXやAIの活用を通じて競争力の向上を図っている。

「例えば、meviyという非標準部品AI見積もりPFは、人工知能分野でのデジタルアップグレードにおいて得た核心成果の一つであり、非標準部品の見積もりプロセスを自動化し、スマート化により非標準設計部品の3Dモデルをアップロードするだけで、最短1分で見積もりを得ることができます。」

また、約800社のサプライヤーの在庫管理を複線化し、価格や納期を比較した上で、最適な条件に基づいて自動的に発注するシステムを活用しています」と、徐董事長は具体的な活用例を説明した。

 


十大リーダー企業賞


新質生産力優秀企業賞

 


CFS2024第十三回財経峰会


2024年(第7回)経済大会

また、人的資源の分野では今年、「人的資源管理卓越大賞(HRoot Awards)」において、米思米(中国)精密機械貿易は2024年の「傑出雇用主賞」を受賞した。同社は社員の成長を重視しており、さまざまな取り組みを行っている。

「当社は人材育成に力を入れており、一般的なスキル研修にとどまらず、ビジネス経営に関する研修も積極的に行っています。また、社員には積極的にアイデアを提案し、他部門との連携に対して各自がどのように貢献できるかを常に考えることを期待しています。今年からは、新たな取り組みとして、社員の創造力を促進する「自発創発コンペ」を開催しています。日常業務をしっかりとこなすことはもちろん大切ですが、それ以上に、社員の成長や会社の未来にどのように貢献できるかを考えることが重要です。これは会社全体の活性化にもつながると信じています。この『自発創発コンペ』では、社員から業務に関する新しいアイデアや改善提案を募集しています。最近開催した第2回コンペでは、15件の新しいアイデアが提出され、経営層がこれらのアイデアについて議論し、評価しました。優れたアイデアには、会社のリソースを惜しまず投入し、具体的に実現するためのサポートを提供しています」

 


オフィスの風景


会社ロビー

 

◆◆◆ 多様なバックグラウンドの人材を活かす組織作り ◆◆◆

「多様な視点の活用、多文化共生の環境を重視、異なる考え方やアイデアを歓迎、複雑な問題に対する柔軟な解決策が見つかりやすくなります。

各文化のリーダーシップスタイルを取り入れることで、適応力の高いリーダーシップが実現できます。

重要なのは、企業文化の浸透と戦略への認同感です。これにより、会社の向心力が強化されます。会社の歴史や価値観についての教育を行っており、特に『QCTモデル』の理解が重要視されています。

例えば、中国の大手IT企業から転職してきた社員など、日系企業とは異なる文化を背景とする人材の場合、会社のやり方を無理に押し付けず、会社の持続的成長に資する提案を経営層と共に議論し検討することが重要です。さらに、ミスミは社員の提案に対してロジックを重視しており、合理的であれば異なる考え方も積極的に取り入れる姿勢を持っています」


 

◆◆◆ 離職率56%から人材が定着する会社へ ◆◆◆

徐董事長は前職で14年間勤務した後、米思米(中国)精密機械貿易に転職した。

「以前から三枝名誉会長の著書に感銘を受けていたところ、幸運にも三枝名誉会長と話す機会があり、同社で新たな挑戦をしたいと考えました。私がインフラ総監として入社した当時、会社は非常に厳しい状況でした。オフィス環境は悪く、オペレーションは混乱状態にあり、この会社はやれることが多いかなと率直に思いました。特に、人材の定着率が極めて低く、年間離職率は56%に達していました。あるポジションでは、7回の採用を繰り返しても人材が定着しないという状況が続いていました。これでは社内にノウハウが蓄積されず、生産性が上がりません。この状況を改善するため、私はまず、人事制度の改革に着手しました。既存の人事制度を全面的に見直し、新たな制度を構築しました。また、優秀な人材の採用にも力を入れた結果、離職率は大幅に改善され、人材の定着率が向上しました。人材の定着率が向上したことで、社員のノウハウが蓄積され、企業全体の競争力も向上しました」

 

◆◆◆ 持続可能な未来へ向けたESGの取り組み ◆◆◆

ミスミは積極的にESG(環境・社会・ガバナンス)に取り組んでいる。「奉賢区の新社屋には屋上に太陽光パネルを設置しており、一日の電力使用量の約35%をソーラー発電で賄っています。また、CO₂削減や節電に努め、西北部の風力発電のため、今年からグリーン預金を始めました。これからはサプライヤーに対しても、環境に配慮した材料や包装を使用するよう指導し、サプライチェーン全体のESGをサポートしていきたいと考えています。

そのほか、貴州の山奥にある小学校に対し、奨学金や本の寄付もしています。私も実際にその学校を二回訪れましたが、厳しい環境の中でも、熱心に勉強する子供たちに感動しました。今後も支援を続けたいと思っています。

障害者の採用にも積極的に取り組んでおり、現在16名の障害者が、現場とリモートで勤務しています。さらに、もっと多くの障害者を採用し、社会貢献をしていきたいと考えています」

 


米思米Wechat

中智の感想:

奉賢区の新本部へ訪れた際、明るく清潔なオフィス空間、おしゃれな食堂やトレーニングジムなど充実した福利厚生施設を見学し、ミスミの社員を大切にする企業文化を感じました。インタビューでは、徐董事長がモデル革新、生産性を上げるには社員の定着率向上と活性化が不可欠であると強調されていました。ビジネスでは中国市場は日本のやり方では通じない部分があるため、中国で成功するには、マーケットの商品開発、売り方を、中国人自ら考えなければならないと述べ、現地化の必要性を説いていました。

   


 
中国工業博覧会のミスミブース

中国工業博覧会のミスミブース

徐董事長は、読書や運動、さまざまな業界の友人との交流を趣味としており、読書の範囲は幅広く、経営・小説・詩・哲学・神学にわたります。一日の仕事が終わった後には、独りで3キロ走ることを日課としており、その際に良いアイデアが浮かぶことが多いそうです。徐董事長の経験と知性は類まれなものであり、日系企業の中でも指折りの優雅な女性経営者として、非常に尊敬しています。ご多忙にもかかわらず、いつも中智の活動に積極的にご参加いただき、心より感謝申し上げます。


【創】2024年新春講演賀詞交歓会に登壇する徐董事長

   


 
2024年9月に中智日企俱楽部智櫻会が米思米(中国)精密機械貿易有限公司奉賢新園区で 徐少淳 董事長にインタビューする現場風景

2024年9月に中智日企俱楽部智櫻会が米思米(中国)精密機械貿易有限公司奉賢新園区で 徐少淳 董事長にインタビューする現場風景

※「会社名、役職名はインタビュー記事発表時の名称です」