ホーム > クローズアップ > 聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

『三井住友海上火災保険(中国)有限公司 西川 真吾 董事兼総経理 インタビュー!』2024/11/25

<strong><font style="font-size:19px">中智日本企業倶楽部・智櫻会 経営者インタビュー 第108回 </font></strong>

中智日本企業倶楽部・智櫻会 経営者インタビュー 第108回

<strong><font style="font-size:19px">中国で16年間、防災・減災ソリューションで日系企業の発展を支える </font></strong>

中国で16年間、防災・減災ソリューションで日系企業の発展を支える

<strong><font style="font-size:19px">——三井住友海上火災保険(中国)有限公司 西川 真吾 董事兼総経理</font></strong>

——三井住友海上火災保険(中国)有限公司 西川 真吾 董事兼総経理


 
三井住友海上火災保険(中国)有限公司
西川 真吾 董事兼総経理

慶應義塾大学卒業後、1996年に三井海上火災保険(現三井住友海上火災保険)に入社する。入社後は地域営業、自動車ディーラー、大企業を担当し、9年間の営業経験を積む。その後、2005年に語学研修生として1年間、北京と上海で中国語を学び、2006年から2013年まで北京に駐在する。帰国後、東京で大企業担当営業を3年間務めた後、2016年に広東支店長として広州に赴任、7年間の駐在を経て、本社の国際部門にて中国ビジネスを含む業務を担当。その後、2024年4月より上海に赴任し、董事兼総経理として現職に従事する。社会人としてのキャリアの半分以上を中国ビジネスに捧げ、多岐にわたる経験を有する。

三井住友海上火災保険(中国)は、日本の三井住友海上火災保険株式会社を100%親会社とする損害保険会社です。中国には、1981年に北京に事務所を設立して以来、1993年に上海事務所を開設、2001年に上海事務所を上海支店に転換し、さらに2007年には上海支店を改編する形で中国現地法人を設立しました。現在は上海、北京、広州、深セン、無錫、蘇州の6か所に拠点を展開し、主に日系企業の皆さまに損害保険とリスクマネジメントサービスを提供しています。また、グループ全体で「リスクソリューションのプラットフォーマー」をスローガンに掲げ、従来の損害補償に加えて、防災・減災や、事故後の復旧支援に向けた商品・サービスの開発に注力しています。今回は、三井住友海上火災保険(中国)有限公司の董事兼総経理であり、今年の上海日本商工クラブ理事長を務める西川真吾様にインタビューしました。

 

◆◆◆ 在中日系企業の事業を支える防災・減災ソリューション ◆◆◆

昨今、在中日系企業は厳しいビジネス環境に直面しており、それが大きな課題となっています。損害保険の収入は、顧客の生産量や売上高に大きく左右されるため、日系企業の業況がそのまま会社の業績にも直結します。こうした中で、西川董事兼総経理は、中国において防災・減災の取り組みに力を入れていると語ります。

「事故の発生を可能な限り防ぎ、万が一事故が発生した場合でも被害を最小限に抑えることができれば、お客様の事業への悪影響を最低限に抑えられます。それにより保険金の支払いも減少し、結果として私たち損害保険会社の収益にもつながります。私たちは、日本を含め100年以上の経営経験の中で蓄積してきた事故のビッグデータを活用し、お客様の工場や倉庫の安全性を向上させる取り組みを行っています。具体的には、実際に現場を確認させていただき、事故が発生しやすい箇所を特定し、その改善を提案しています。さらに、提案後もアフターフォローを通じて一緒に問題点を改善し、事故発生率を大幅に低下させることを実現しています。現在は、お客様の都合に合わせたオンライン対応の仕組みも整備しており、現場への同行が難しいお客様でも、オンラインを活用した効率的なサポート体制により、お客様との協働をスムーズに進められるようになりました」


 

◆◆◆ 太平洋保険との提携によるグローバルビジネスの展開 ◆◆◆

中国では、日系企業との直接取引に加え、現地の保険会社と協業しながら事業を展開しています。中でも、太平洋保険との戦略提携は同社の大きな強みの一つだと、西川董事兼総経理は語ります。「当社が支店だった2004年に、太平洋保険と戦略提携を締結しました。当初は、中国市場に進出する日系自動車メーカーの自動車保険を引受けてもらい、当社は再保険(保険会社間でリスクを分担する仕組み)を引受ける形で提携を開始しました。その後、提携領域は拡大し、現在では自動車保険に限らず、様々な分野で協力を進めています」

西川董事兼総経理は、中国企業との提携が長く続いている理由について、トップ同士による定期的な面談を挙げ、日本から中国へ、中国から日本へ少なくとも毎年1回はトップ面会を実施し続けているといいます。また、同じ分野にとどまらず、変化に応じて提携領域を広げ、多くの提携項目を発展させてきたことも一因だと述べます。

「近年では、中国企業の海外進出(出海)が急速に拡大する中、そうした企業の海外での保険ニーズに応える取り組みを、太平洋保険と共に推進しています。海外進出を支える保険の提供は、単に保険サービスにとどまらず、現地での中国企業の活動を支援する重要な役割を果たしています。太平洋保険との提携は、私たちの中国市場におけるプレゼンス向上に直結し、同時に中国企業が海外で活躍する上での重要な支えにもなっています。この戦略提携を通じて、グローバル市場での新たなビジネスチャンスを共に創出できることに、大きな意義を感じています。今後も、太平洋保険とのパートナーシップをさらに深め、既存の枠を超えた新たな取り組みにチャレンジしていきたいと考えています」


2024年6月6日早朝、カンボジアへ向けて出荷される油圧ショベル

 

◆◆◆ 北京で夢を描き、広州で現実と向き合い、上海で堅実的持続経営を考える ◆◆◆

西川董事兼総経理は、これまで中国で長年ビジネスに携わり、北京に8年、広州に7年の駐在経験を持ちます。

「私が2006年に北京での駐在を開始した当時の目的は日系企業との取引を拡大することでした。そのため北京支店の設立を目標に掲げていましたが、当時は中国に現地法人がなく、上海に日本本社の支店があるのみで、北京支店の設立は夢のような話でした。しかし、2007年に上海支店が現地法人に改編されたことで、2010年1月に念願の北京支店を設立することができました。設立許可が下りたとの連絡を受けた日、私は妻の出産の関係で、ちょうど日本に一時帰国しておりました。奇しくも北京支店の設立日は、長女の誕生日と重なり、私にとって人生最高の記念日となりました」


北京時代の思い出 (前から2列目左から9人目)


夢の始まり (西川総経理と長女)

北京支店の設立という夢を実現した西川董事兼総経理は、2013年に日本へ帰任後、2016年に広東支店長として製造業が集積する広州へ赴任します。

「広東支店は2008年に設立され、先輩方の努力により日系企業との取引が大きく拡大していました。しかし、事業規模が大きくなる一方で、世界的な温暖化の影響により、台風やゲリラ豪雨が華南地域を襲うようになり、多くのお客様が建物や設備、製品に甚大な被害を受ける状況が続いていました。当社も保険金の支払いが保険料収入を上回り、赤字経営が続いていたのです。私の課題は、赤字を解消させることでしたが、保険料を簡単に上げるわけにはいきません。そこで、保険金の支払いを抑えるため、防災・減災対策でお客さまの損害を減少させることを考えました。地道な防災・減災の取り組みが実を結び、2019年以降は黒字化を達成し、2022年度末には累積赤字も一掃することができました。広州での7年間は、現場の第一線に立ちながら、災害という現実と向き合い続けた日々でした」

広州支店の黒字化を達成した西川董事兼総経理は、今年の4月に三井住友海上火災保険(中国)の董事兼総経理として上海へ赴任すると同時に、上海日本商工クラブの理事長にも就任しました。

「上海に赴任して約8ヶ月が経ちますが、今年は、上海日本商工クラブの理事長職を拝命しました。約2,300社の会員を有する商工組織の理事長という重責に、赴任前から身の引き締まる思いがありました。せっかくの貴重な機会ですので、積極的に活動しようと決め、各種会合やイベントに参加しています。4月以降、大小合わせて約40の会合・イベントに出席し、上海にとどまらずさまざまな場でお声がけいただきました。そこで領事館や大使館の皆さま、日系企業の経営層、中国政府関係者をはじめ、多くの方々と交流する機会に恵まれ、中国ビジネスに対する考えや取り組みについてお話を伺うことができました」


2019年中智日企倶楽部が実施三井大学堂in広州 右から3人目西川総経理


2023年中智智櫻会広州分会設立 中智をもてなす西川総経理

 

◆◆◆ 一衣帯水の絆を深める上海と日系企業の協力 ◆◆◆

11月15日には、「上海への投資、未来の共有」海外編IN日本・東京に、中智日本企業倶楽部・智櫻会会員企業の代表、そして上海日本商工クラブの理事長として出席しました。

「大会では、上海市の華源副市長が、『一衣帯水、源遠流長』という成語を用いて、上海と日本の地理的・歴史的な近さを強調され、日本からの投資や日本企業の中国での活躍に大きな期待を示されました。上海市は、外資企業が事業活動を円滑に行えるよう、課題解決に積極的に取り組んでいると感じています。例えば、私も携わった上海市政府への建議書の提出では、2023年の建議書に関して、日系企業の約70%が『解決または一歩前進した』と回答しており、これは上海市が外資企業を重視している証拠だと思います。

現在のビジネス環境は日系企業にとって必ずしも楽観できるものではありません。しかし、各方面で改革が進んでおり、堅実な歩みを続けることで、必ず再び飛躍の時が訪れるものと信じています」



華源副市長と会見する三井住友海上火災保険(中国) 西川真吾董事兼総経理


大会に参加した会員企業代表との記念集合写真(後列右から3人目)

中智の感想:

西川董事兼総経理は、北京・上海・広州で計16年以上、ビジネスキャリアの半分以上を中国で過ごしてきました。北京では夢を描き、広州では災害という現実と向き合い、上海ではビジネスの中心地として堅実的持続経営を考えるという経験談から、中国の各都市・各時期における特徴や役割を実感しました。また、西川董事兼総経理は、中国の歴史や名所巡りを趣味としており、中国の世界遺産は全ての種類を廻ったそうです。中でも、奥様と訪れた秋の「九寨溝」の美しさには心を奪われたと語っています。今年7月に訪れた「上海豊田紡織廠記念館」では、日中友好に尽力した先人の姿勢に触れ、その精神を引き継ぎ、次世代に繋ぐ使命を改めて心に刻まれました。西川董事兼総経理が、防災・減災を通じて、在中日系企業の持続可能な発展に貢献されることを期待しております!


※「会社名、役職名はインタビュー記事発表時の名称です」