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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

『麒麟(中国)投資有限公司 高宮 創平 董事総経理 インタビュー!』2026/1/4

<strong><font style="font-size:19px">中智日本企業倶楽部・智櫻会 経営者インタビュー 第112回 </font></strong>

中智日本企業倶楽部・智櫻会 経営者インタビュー 第112回

<strong><font style="font-size:19px">中国市場の多様性と向き合い、普遍的価値を軸にブランドを育て続ける </font></strong>

中国市場の多様性と向き合い、普遍的価値を軸にブランドを育て続ける

<strong><font style="font-size:19px">——麒麟(中国)投資有限公司 高宮 創平 董事総経理</font></strong>

——麒麟(中国)投資有限公司 高宮 創平 董事総経理


 
麒麟(中国)投資有限公司
高宮 創平 董事総経理

九州の福岡県出身。一橋大学卒業後、2006年にキリンビール株式会社へ入社。入社後は東海エリアで約4年間、スーパーやコンビニ向けの営業に従事する。2010年から本社企画部にて、事業計画の策定やグループ各社の事業管理を担当。2014年にはコーポレートブランド戦略を担う部署に異動し、ブランディング業務に携わる。2017年にはキリンビール埼玉支社で飲食店向け営業を担当し、その後、支店長も務める。2021年からはキリンホールディングス経営企画部にてグループ全体の経営企画に従事、2025年4月より麒麟(中国)投資の董事総経理に就任し現在に至る。

急速な経済成長と変化を続ける中国市場は、世界でも難しい市場だといわれています。消費者の価値観は多様化し、競争は激化、地域ごとの差も大きい。こうした環境の中で、麒麟(中国)投資を率いる高宮董事総経理は、変化に対応しながらも「変えてはいけない価値」を見失わない経営を貫いています。今回は、麒麟(中国)投資(以下、キリン中国)の高宮創平董事総経理にインタビューしました。

 

◆◆◆ 海外事業全体の中での中国市場 ◆◆◆

キリングループは、ビール事業を祖業とし、そこで培った発酵バイオテクノロジーを基盤に、酒類事業、飲料事業、ヘルスサイエンス事業、医薬事業をグローバルに展開している。現在、日本、北米、アジアパシフィックが主な展開地域となっており、それぞれ大きな売上の柱となっている。中国は、日本以外の国で最も「一番搾り」の販売数量が大きく、着実に市場を拡大しているが、中国市場は他地域とは明確に異なる特徴を持っていると高宮董事総経理は語る。「中国は本当に一括りにできない市場だと感じています。赴任してからまだ1年に満たないのですが、その間に中国全土の4分の3にあたる25以上の省級行政区を回りました。地域ごとに消費者の価値観も、チャネルも、競争環境も違っていて、全国一律のやり方はまず通用しません。変化のスピードも非常に速く、複雑な市場だと日々実感しています」


 

◆◆◆ 酒類市場における多様化の進展 ◆◆◆

中国消費者の価値観とニーズが急速に多様化していることについて、実感を込めてこう語る。「ビール一つを取っても、白ビールや黒ビール、クラフトビールなど種類が豊富になり、RTD(日本でいうチューハイ)といった新カテゴリーも若年層を中心に拡大しています」

特に中国ならではの飲酒スタイルについて、「中国では、最近コンビニにウィスキーやウォッカなどの小瓶のお酒が数多く並んでいます。若い方たちが、それを買って好きなジュースと混ぜてオリジナルカクテルを作り、SNSで発信して楽しむのが最近のトレンドです。小瓶のお酒自体は他国でも販売していますが、ここまで生活に溶け込んでいるのは中国ならではだと思います」

 

◆◆◆ 変わらずに求められる「安心・安全」と「品質」 ◆◆◆

市場が大きく変化する一方で、変わらずに重視されている価値もある。高宮董事総経理が繰り返し強調するのが、「安心・安全」と「品質の高さ」だ。 「消費者の価値観の多様化は確実に進んでいますが、その中でも安心・安全や品質といった価値は、むしろ以前より強く求められていると感じています。中国の消費者の方は、商品パッケージの表示をとてもよく見られますし、品質に対する意識が高い。だからこそ、流行に合わせて変える部分と、愚直に守り続ける部分を明確に分けることが大事だと思っています」

自身も、時間があればスーパーに足を運び、消費者の購買行動を観察するという。現場で得た感覚を経営判断に生かす姿勢がうかがえる。


 

◆◆◆ ターゲットを絞ったブランド戦略 ◆◆◆

競争が激しく多様な中国市場でブランドを浸透させるため、キリン中国はターゲットを絞ったアプローチを重視している。「資源を分散させるのではなく、エリアやチャネル、顧客層を明確に定め、ブランド浸透を図っている。中国市場は人口が多く、母数が大きいので、ターゲットを絞っても十分に市場が大きく、ビジネスが成り立ちます。全方位で取り組もうとすると、どうしても中途半端になってしまいます。だからこそ、どこで、誰に、どのブランドを届けるのか、どういった価値訴求をするのか、を明確にしています」

また価格競争が激しい市場だからこそ、価格戦略も特に重視している。「安売りをしてしまうと、ブランド価値は確実に傷みます。それは私たちだけでなく、卸や流通パートナーの利益にも影響します。適正な価格を維持することは、ブランド価値とビジネスパートナーの利益を守るうえで重要だと考えています」


 

◆◆◆ 中国国際輸入博覧会で得た実感 ◆◆◆

キリン中国は第1回から中国国際輸入博覧会に連続出展しており、昨年で8回目を迎えた。高宮董事総経理にとっては初参加だったが、その規模と熱気に強い印象を受けたという。「実際に参加してみて、想像以上にスケールが大きいと感じました。各省のブースを回ることで、地域ごとの特徴や強みを学ぶ良い機会となりました。また、この輸入博は社員にとっても貴重な機会となりました。普段は内勤業務が中心の社員が、消費者やビジネスパートナーと直接接し、商品に対する反応を目の当たりにすることで、自身の仕事の価値を実感する機会ともなりました」

また7月には、龚正上海市長から、第41回多国籍企業地域本部・研究開発センターの認定を受けた。これについて、上海は外資系企業にとって優遇措置が多く、経済的に重要な拠点であると指摘し、新しい取り組みを試行錯誤する上でも上海に拠点を置くメリットは大きいと述べた。


麒麟(中国)投資——“麒麟色彩街区”(第8回中国国際輸入博覧会)

 

◆◆◆ HRoot「2025年卓越雇用主賞」を受賞 ◆◆◆

昨年12月、HRoot主催の「人的資源管理卓越大賞(HRoot Awards)」において、2025年卓越雇用主賞を受賞した。「当社は『中国全土に幸せの輪を広げる』ことをミッションに掲げ、その起点として従業員の幸福を重視しています。全従業員で築き上げてきた会社の姿勢が評価されたものと受け止めています。採用では、企業価値観との適合性と自ら考え行動できる主体性を特に重視。管理職育成には360度評価や研修プログラムを実施しています」

また、多様で変化の激しい中国市場においては、従業員に企業の目的や方向性を丁寧に説明し全員で徹底した上で、現場の自律性を尊重するバランスを取ったマネジメントを心がけているという。

キリングループが重視するCSV(共通価値の創造)活動については、高品質な麒麟製品をお届けすること自体が、中国社会を元気にし、社会貢献につながるとの信念のもと、適正飲酒の推奨や、製品の軽量化を通じた環境負荷低減などにも取り組んでいる。


2025年卓越雇用主賞授賞式で登壇する高宮董事総経理と王漪菁副総経理


「人的資源管理卓越大賞(HRoot Awards)」2025年卓越雇用主賞

 

◆◆◆ 現場の自律性を重んじる企業文化 ◆◆◆

高宮董事総経理が、キャリアで最も印象に残る経験として語ったのは、自ら立ち上げた「ペット健康食品」の社内新規事業だ。「社内の経営研修を受けた際に、グループで考えた案をそのまま終わらせるのは『もったいない』と感じ、本社に直談判しました。幸いにも予算を得ることができ、当時携わっていた本来の営業業務をこなしながら、少人数チームでプロジェクトを推進しました。商品開発から調達・製造・物流・販売まで、一からバリューチェーンを構築する苦労はありましたが、すべて自分たちで創り上げる貴重な経験となりました。このような、現場の自律性を重んじる企業文化を中国法人でも尊重しています」

現在は上海日本商工クラブ徐匯区地域連絡会の会長も務め、会員間の交流促進にも尽力している。中国での生活については、「非常に暮らしやすい」と率直に語る。デジタル化が進み、スマートフォン一つで生活が完結する環境には、日本との差を強く感じるという。「中国はスピード感が非常に速く、まずやってみるという姿勢が根付いています。考えながら動く、動きながら修正する。その感覚は、日本ももっと学ぶ余地があると思います」変化の激しい中国市場において、普遍的価値を軸にブランドを育て、人を中心に経営を行う。その言葉と姿勢からは、一貫した哲学と静かな覚悟が伝わってくる。

中智の感想:

急速に変化し、多様化が進む中国市場に向き合いながらも、「安心・安全」と「品質」を変わらず大切にする高宮董事総経理の姿勢が印象的でした。変化の最前線に立ちながらも、経営に向き合う高宮董事総経理の言葉から、ブランドを育てる上での普遍的な価値と、人を中心にした経営の大切さを改めて学ぶことができました。キリンの商品が、今後も中国の消費者により一層愛されていくことを願っています。


※「会社名、役職名はインタビュー記事発表時の名称です」