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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

『株式会社安川電機 執行役員 中国統括 足立 恭雄 董事長・総経理 インタビュー!』2026/6/26

<strong><font style="font-size:19px">中智日本企業倶楽部・智櫻会 経営者インタビュー 第114回 </font></strong>

中智日本企業倶楽部・智櫻会 経営者インタビュー 第114回

<strong><font style="font-size:19px">成熟した中国製造業と安川電機の百年ノウハウがフィットする時代 </font></strong>

成熟した中国製造業と安川電機の百年ノウハウがフィットする時代

<strong><font style="font-size:19px">——株式会社安川電機 執行役員 中国統括 足立 恭雄 董事長・総経理</font></strong>

——株式会社安川電機 執行役員 中国統括 足立 恭雄 董事長・総経理


 
株式会社安川電機 執行役員 中国統括
足立 恭雄 董事長・総経理

1975年神奈川県生まれ。1998年、日本大学経済学部卒業。2008年に株式会社安川電機へ中途入社。中国事業分野を中心にキャリアを重ね、2018年3月より安川電機(中国)有限公司モーションコントロール事業部長、2020年3月より同社董事兼モーションコントロール事業部長を務める。2023年3月、株式会社安川電機執行役員に就任。同年、安川電機(中国)有限公司董事・総経理および安川通商(上海)実業有限公司董事長に就任、2026年3月より中国統括・安川電機(中国)有限公司董事長・総経理、安川通商(上海)実業有限公司董事長・総経理に就任し現在に至る。

安川電機と中国との縁は100年以上前に遡る。創業発起人である安川敬一郎は、辛亥革命の指導者である孫文が日本へ転移・滞在していた際に支援を行い、その謝意として「世界平和」の扁額が贈られたことで知られている。


1915年創業の安川電機は、サーボモーター、インバータ、モーションコントロール、産業用ロボットを主力事業とする世界有数のFA(ファクトリーオートメーション)メーカーである。1990年代から本格的に中国事業を展開し、1999年には安川電機(上海)有限公司を設立した。

現在、中国市場はグローバル売上高の20%を超える重要拠点へと成長している。中国製造業が高度化・スマート化へ向かう中、安川電機はどのような戦略で現地企業とともに成長してきたのか。安川電機(中国)および安川通商(上海)実業の董事長・総経理を務める足立恭雄氏に、中国事業の歩みと今後の展望について話を伺った。

 

◆◆◆ 中国市場はグローバル戦略の中核拠点 ◆◆◆

足立氏は、中国市場について「安川電機にとって極めて重要な戦略拠点」であると語る。現在、安川電機の売上高の70%以上は海外市場によるものであり、中国市場はグローバル売上高の20%以上を占める。中国は単なる販売市場ではなく、生産、販売、サービス、人材育成を担う総合拠点として、グローバル事業を支える重要な役割を果たしている。

現在、中国には上海のインバータ工場、瀋陽のサーボモーター工場、常州のロボット工場があり、さらに常州では2022年から電子基板工場も稼働している。インバータ、サーボモーター、ロボットという主力三事業の生産拠点が揃うのは日本と中国のみであり、基板生産工場まで含めた体制を持つのは中国だけだという。

足立氏は、中国事業について「地産地消」の考え方を重視している。「中国でビジネスをする以上、中国に根を下ろし、中国のお客様とともに成長していくことが大切です。その考え方のもと、近年は日本で生産していた製品についても、中国市場で需要が見込まれるものは積極的に中国生産へ移管しています。」足立氏はそう語る。

現在、中国法人全体では約2,000人以上の従業員を擁し、販売製品の90%以上を中国国内で生産している。中国はもはや、安川電機にとって世界戦略を支える重要な経営基盤となっている。


 

◆◆◆ 中国企業とともに歩んだ30年 ◆◆◆

足立氏によれば、現在の顧客の95%以上は中国企業である。中国市場を単なる販売先としてではなく、中国企業とともに発展していくパートナーとして捉えていることが、安川電機中国の大きな特徴と言える。

中国進出当初、多くの日系企業は日系メーカー向けビジネスを中心に展開していた。しかし現在、中国市場を牽引しているのは新エネルギー、自動車、リチウム電池、半導体、AIなどの分野で急成長する中国企業である。こうした中国企業の成長とともに、安川電機中国も事業を拡大してきた。「中国には無数のお客様があります。特定の会社や業界に依存しているわけではありません」足立氏はそう語る。

10年前はスマートフォン関連産業が市場を牽引していたが、現在は新エネルギーやAI、半導体が成長の中心となっている。しかし、どの産業が伸びても、ものづくりが存在する限り、FA技術への需要は存在する。

また、安川電機は顧客として中国企業と向き合うだけでなく、中国企業との合弁・協業を通じて、ともに事業を発展させてきた。代表的な事例が、国有企業である首鋼集団との合弁会社「安川首鋼ロボット有限公司」である。同社は中国の産業用ロボット産業の発展とともに成長を続け、中国の製造業高度化を支える重要な役割を果たしてきた。さらに近年は、中国大手溶接機メーカーである凱爾達集団有限公司(カイエルダーグループ)傘下の杭州凱爾達焊接機器人股份有限公司への出資・協業を通じ、中国企業との連携をさらに強化している。

足立氏自身も合弁企業の董事長や外部董事を務め、中国企業の経営を内部から見てきた。「中国は意思決定が非常に速い市場です。決定も早いし、実行も早い。それは中国企業の大きな強みだと思います。」足立氏はそう語る。

一方で、そのスピードに振り回されるべきではないとも指摘する。「変化に翻弄されると、自分たちの強みや、何で勝負するのかを見失ってしまうことがあります。」足立氏はそう語る。

重要なのは市場環境を冷静に見極め、自社の強みを明確にした上で行動することだという。「決めるまでは焦らない。しかし決めたらすぐやる。」これは中国企業との協業や17年間の中国経験を通じて培われた同氏の経営哲学でもある。

また、変化の激しい中国市場で最も重要なのは顧客との距離の近さだと考えている。「とにかくお客様のところへ行くことが大事です」単に製品を販売するだけでは市場の変化は見えない。顧客とともに課題解決に取り組むことで、次に必要とされる技術や製品の方向性が見えてくる。そうした顧客との共創こそが、安川電機が中国市場で築いてきた最大の競争力なのである。


 

◆◆◆ 製品販売からソリューション提案へ ◆◆◆

中国FA市場は成熟化の段階に入りつつある。かつてのような右肩上がりの成長市場ではなくなり、中国メーカーとの競争も激化している。しかし足立氏は、それを悲観的には捉えていない。むしろ中国製造業の高度化は、安川電機にとって追い風になると考えている。「中国のFA市場は成熟し、高度化しています。だからこそ我々が110年以上培ってきた知見やノウハウが生きる時代になってきたと思います」足立氏はそう語る。

その象徴が「i³-Mechatronics(アイキューブ・メカトロニクス)」である。安川電機は従来から、サーボモーターやモーションコントロール技術を強みとしてきた。物を正確に動かす技術だけでなく、その動きから得られるデータを活用し、生産ライン全体の最適化を実現する。「A地点からB地点へ動かすだけではありません。その過程で得られるデータを活用して、生産性や品質をさらに向上させることが重要になります」中国政府が推進するスマート製造や新質生産力とも方向性は一致しており、今後さらに需要が高まる分野だと見ている。

 

◆◆◆ 中国人が主役となる経営 ◆◆◆

現在、中国法人では課長級以上の管理職のほとんどを中国人が担っている。採用時にも日本語能力は重視していない。「日本語ができなくても全く問題ありません。大事なのは能力です」足立氏はそう断言する。同氏が繰り返し語ったのは、中国市場を最も理解しているのは中国人だという考え方だった。「中国人による、中国人のためのビジネスをする。日本人の役割は、中国人社員が100%以上の力を発揮できる環境を整えることです」日本人が前面に立つのではなく、中国人社員が主体となり、日本人はその環境整備を担う。その考え方が現在の現地化経営の根幹となっている。


 

◆◆◆ 専門人材から総合提案型人材へ ◆◆◆

製造業の高度化に伴い、人材に求められる能力も変化している。かつてはインバータ、サーボモーター、ロボットなど、それぞれの専門知識を深めることが重要だった。しかし現在は違う。顧客が求めているのは製品単体ではなく、ライン全体の最適化だからである。「モーターだけ分かればいい時代ではなくなりました。ライン全体を俯瞰して提案できる人材が必要です」足立氏はそう語る。そのため同社では、新卒社員を積極的に採用し、各事業部でローテーションさせながら育成している。「インバータ、サーボモーター、ロボットの全てを理解し、顧客の課題を総合的に解決できる人材の育成を目指しています。また、定期的な勉強会や成功事例共有会を実施し、技術者や営業担当者が継続的に学ぶ仕組みも整えています。製品を売る人材ではなく、お客様の課題を解決できる人材を育てたいのです」足立氏の言葉からは、今後の製造業に必要な人材像が明確に伝わってきた。


中智の感想:

在中日系企業の中でも、足立氏は希少な若い中国統括・董事長です。生産・開発から販売、ソリューション提案まで幅広く統括しており、多忙な日々を送られています。今回のインタビューに際しても、休日にもかかわらずメールでご対応いただき、その仕事への真摯な姿勢が印象的でした。

中国赴任から10年。今回のインタビューで足立氏が繰り返し強調されていたのは、「お客様のところへ行くことが大事です。そして、成熟した中国製造業と安川電機の百年を超えるノウハウがフィットする時代が来ています」という言葉でした。市場環境や産業構造が大きく変化する中国においても、顧客の課題に向き合い、ともに解決策を考える姿勢こそが、安川電機が成長を続けてきた原動力なのだと感じました。

また、安川首鋼ロボット有限公司をはじめとする中国企業との合弁・協業の歩みからは、中国企業とともに発展していくという同社の姿勢もうかがえます。中国企業との共創、中国のニーズを中国人材が解決していくという理念に基づく現地人材の育成、そして顧客価値の創造。それらを着実に積み重ねてきたことが、30年以上にわたり中国市場に根を下ろしてきた安川電機の強みなのだと感じました。足立中国統括が描く中国市場への期待と夢が実現されることを、心よりお祈りしております。


※「会社名、役職名はインタビュー記事発表時の名称です」