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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第64回

『コニカミノルタ弁公系統(中国)有限公司 炭谷 忠彦 董事長・総経理 インタビュー!』2019/10/11

<strong><font style="font-size:19px">AI時代に対応できる人事戦略と組織改革 </font></strong>

AI時代に対応できる人事戦略と組織改革

<strong><font style="font-size:19px">——コニカミノルタ弁公系統(中国)有限公司 炭谷 忠彦 氏</font></strong>

——コニカミノルタ弁公系統(中国)有限公司 炭谷 忠彦 氏


 

コニカミノルタ弁公系統(中国)有限公司

炭谷 忠彦 董事長・総経理

 

早稲田卒業後、ミノルタに入社。87年から6年間フランス駐在、その後日本へ帰任し、98年からミノルタヨーロッパ(ドイツ)の販売責任者に就任する。2005年に帰任後、10年まで海外販売部の責任者を務めた後、同年インドへ赴任し、現地販社をゼロから立ち上げディーラー開拓を行う。17年から中国へ董事長・総経理として赴任し現在に至る。

 

◆◆◆ 課題解決型カンパニーから課題提起型カンパニーへ ◆◆◆

コニカミノルタは、1873年創業のカメラ、写真用フイルムを主力とするコニカと1928年創業のカメラ、複写機を主力とするミノルタが2003年に経営統合したことにより誕生した。その後、2007年にフォト・カメラ事業を終了し、現在はオフィス事業、プロフェッショナルプリント事業、ヘルスケア事業、産業用材料・機器事業等のより専門性の高い領域で事業を展開している。グループ全体の従業員数は約4万4千名、150カ国でセールス及びサービスを展開している日本を代表するグローバル企業のひとつだ。

昨年度の連結売上高約1兆円のうち、約7%を中国市場が占めている。これを在任中に10%まで高めたいと炭谷総経理は語った。そのため、現在主力商品となっている複写機のほか、ヘルスケアや監視カメラ事業に注力している。

コニカミノルタが中国に進出して今年で25周年を迎える。奇しくもコニカ、ミノルタの両社ともに94年に中国で工場を設立しており、当時ミノルタが上海市松江区に設立した光学デバイスの生産工場は現在も稼働している。

中国の情報機器は95年に武漢の会社と合弁したのが始まりで、翌96年には北京、上海、広州に事務所を設立しサービスを開始する。その後、2005年に上海に販売会社を設立し、現在では従業員数約900名、売上高は約400億円に達している。

中国市場の売上比率を10%まで高める目標を達成するには、日系以外の顧客開拓が不可欠だ。「日系のお客様に限らず、中国のお客様に対しどのようなサービスを提供出来るかという意識を持つことが大切です。そこで今年、日資販売課を廃止して販売部門を地域毎に統一する改革を行いました。さらに、これまでのお客様からの困り事を聞いて、ソリューションを提供する課題解決型カンパニーから、お客様の困り事を先読みしてそれに対するソリューションを提供する課題提起型カンパニーへのアップグレードを中期計画として掲げています。」と炭谷総経理は語った。


 

◆◆◆ 部門を超えた人材抜てきで組織を活性化 ◆◆◆

人材の安定や育成は、どの企業にとっても重要な課題となっている。「当社においても大きな課題として認識しています。中国に初めて赴任して、かつて赴任した欧州や、ゼロから現地法人を立ち上げたインドと比べ、離職率が高い事に危機感を覚えました。」

そこで炭谷総経理は、人事制度改革に着手する。「従業員からの意見の集約や吸収が必ずしも十分に出来ていなかったという反省から、キャリアディベロップシステムを取り入れ、年に1回、全従業員と面接し従業員一人ひとりのキャリア形成を行っています。」さらに、今年の11月に事務所を移転するタイミングに合わせ、フレックス制度やテレワークの導入を検討しているという。


今年9月、中国最大の人事フォーラム「2019 HRoot中国人力資本論壇」において、コニカミノルタ弁公系統(中国)有限公司の王暁燕人事総務部部長が「2019大中華人力資源卓越成就賞」を受賞した。その王暁燕部長は、もともと人事畑ではなかったという。「組織の活性化のためにはジョブローテーションを取り入れる必要があると考えました。その第1回目のメンバーの一人が王暁燕でした。人事は事業を理解している必要があります。例えば採用において、紙に書かれた内容だけではなく、その裏にある理由や目的は、事業を経験してこそ分かるものです。」

   

人事総務部部長
王暁燕氏


王部長が「2019大中華人力資源卓越成就賞」を受賞

 

そこで炭谷総経理は、もともと直販アドミンのトップとして活躍していた王暁燕氏を、その能力を見込んで人事部長に抜てきした。「彼女は人事部長への就任を快諾し、新しい人事評価制度の導入など、多忙をものともせず頑張ってくれています。」営業のトップから人事のトップへ就任し、事業経験を活かした人事制度改革の取り組みが評価され、今回の「2019大中華人力資源卓越成就賞」の受賞につながった。


炭谷総経理は、ミノルタ(当時)に入社後、フランス、ドイツの駐在を経験し、2010年にはインドでゼロから販売会社を立ち上げ、経営を軌道に乗せる。その後、日本へ帰任し17年4月から中国事業のトップに就任する。海外経験の豊富な炭谷総経理は、外国人従業員とのコミュニケーションでは、まず相手の本音を聞き出すことが大切だと語る。「まず相手の懐に飛び込みます。私は常に社員達に対して、“What can I do for you?” “ What can I made for you?”と問いかけます。そうやって信頼関係を築いてから徐々に、こちらの手のひらの上に乗せるようにするのです。」

駐在員の役割について「日本人駐在員達に対しては、中国人の幹部社員を育てる意識を持ち仕事をするよう伝えています。その甲斐がありトップラインの人材は育ってきており、駐在員は以前と比べ半分に減らすことができました。今後は、セカンド、サードラインの人材をしっかり育てることが課題です。将来は、中国から欧米やASEANで活躍できるグローバル人材を育てることが目標です。」


 

◆◆◆ 中智と共に障碍者スポーツ事業に取り組む ◆◆◆

中国法人では、CSR活動に積極的に取り組んでいる。「CSRは経営戦略の一環として積極的に取り組んでおり、これまでも環境保護や教育活動に力を入れていましたが、スポーツ支援事業が欠けていると感じていました。そこで中智さんから障碍者スポーツ支援事業を提案していただき、参加を即決しました。」

コニカミノルタに所属する障碍者スポーツ選手達は、今年8月26日から9月1日に開催された全国第十回障碍者スポーツ大会において、金メダル2個、銅メダル1個を獲得する好成績を収めた。2018年、中智公司は国の「十三五」計画に則り、障碍者の雇用を拡大し、障碍者の雇用機会を充実させるため、「ドリーム(円夢)プロジェクト」を立ち上げ、中智と愛情ある企業が共に障碍者スポーツ事業を支援し、実りある成果を得ている。


インタビューの最後に、炭谷総経理から今後の展望について伺った。「今後、AIの時代を迎え、AIやビッグデータの重要性がますます高まることが予想されます。そのため、不足するこれら分野の人材をいかに確保するか、2020年からの中期計画に盛り込む予定です。また、この分野で世界をリードする中国企業のパートナーを見つけ、新製品の開発に繋げたいと考えています。」これからはソフトウェアとサービスの時代だと言われていることについて、製造業としての考えを質問すると、「我々はメーカーである以上、機械に対する良いこだわりを持ち続けなければなりません。ソフトウェアは時間が経つとすぐ陳腐化してしまいます。ハードウェアを持つ強みを活かし、新たな価値を創造し続ける企業を目指します。」と炭谷総経理は力強く語ってくれた。


【中智からのコメント】

今回のインタビューを終え、炭谷総経理に対して異文化力の強い、中国速度や中国環境に敏感なグローバル経営者だという印象を強く持ちました。従業員一人ひとりのキャリア形成を助け、ジョブローテンションやフレックス制度、テレワーク等の柔軟な働き方を取り入れる事は、AI時代の新世代従業員の安定化と組織の活性化に有効な取り組みといえるでしょう。


インタビュー現場風景


中智との記念写真