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聞いてみなければ解らない! 第67回 オンライン特別インタビュー---上海~東京中継

『三井金属(上海)企業管理有限公司 境 克也 董事総経理 インタビュー!』2020/07/15

<strong><font style="font-size:19px">世界は材料で回る 企業は信頼で生きる </font></strong>

世界は材料で回る 企業は信頼で生きる

<strong><font style="font-size:19px">---三井金属(上海)企業管理有限公司 境 克也 氏</font></strong>

---三井金属(上海)企業管理有限公司 境 克也 氏

1985年に中央大学法学部を卒業後、三井金属株式会社に入社。入社後は主に法務・広報畑を歩み、総務部法務室長、韮崎事務所長、経営企画本部広報部長等の役職を経て、2017年に三井金属(上海)企業管理有限公司の董事総経理に就任し現在に至る。

 



  

 

◆◆◆ 150年の歴史を有する最先端の総合素材メーカー ◆◆◆

現在、総合素材メーカーとして知られる三井金属の歴史は、1874年に岐阜県神岡鉱山の経営権を取得したことに始まる。創業から約150年の歴史を有する同社は、もともとは鉱山開発、亜鉛や銅の製錬を主要事業とするドメスティックな企業だった。しかし、1980年代から海外進出を本格化したほか、「マテリアルの智恵を活かす」をスローガンに、これまでの非鉄金属製錬業にとわられない幅広い製品群への展開を果たす。

「今日では事業領域も金属精錬・資源分野から電子材料、機能材料、自動車機能部品など様々な分野にわたり、積極的にグローバルな事業運営を行う総合素材・部品メーカーに成長を遂げたと思います。」と境総経理は紹介してくれた。同社は、自動車ドアロック部品、銅箔で世界トップのシェアを誇る。

 

◆◆◆ 唯一の価値を、世界の至るところへ ◆◆◆

三井金属は、高品質の素材と価値あるソリューションを世界の市場へ届けるため、世界各地に拠点を設置している。三井金属の中国進出は日系企業の中でも比較的早く、95年に自動車部品を製造するため貴州省に現地法人を設立する。2000年代に入り電子材料部品を製造するため江蘇省と広東省に相次いで進出し、05年には製造した製品の営業販売を目的に三井金属貿易(上海)有限公司を設立する。その後、中国事業展開をサポートするため、企業集団地域統括本部として三井金属(上海)企業管理有限公司を設立する。「当社は主に、三井金属中国グループ12社に向け、法務、人事、税務、監査、広報など、様々なコーポレート業務の支援を行っています。」と境総経理は中国事業の沿革と同社の役割を紹介してくれた。


近年、中国のハイテク産業は目覚ましい発展を遂げ、世界でも中国製品の品質に対する評価が高まっている。そこで高性能の電子製品を製造するには、高品質の電子材料部品が不可欠となる。世界トップレベルの品質を誇る同社の電子材料部品に対する、中国メーカーからのニーズが増えていると境総経理は話す。「三井金属グループの主力製品は、電子材料部品であり、特に銅箔については、高いシェアを誇っています。中国国内でも、ファーウェイ、OPPO、VIVO等のスマートフォンの基板等にも多く採用されています。また、自動車部品でも、当初は日系自動車メーカーが中心でしたが、現在では広州汽車等の民族系自動車メーカーとの取引が増えています。」



  

 

◆◆◆ 遠距離で仕事を回すには信頼関係が大切 ◆◆◆

疫病の世界的な流行をうけ、3月から中国ビザが停止され日本へ一時帰国していた多くの駐在員が中国へ戻れなくなった。現在は少しずつ入国が緩和されてきているが、インタビュー時点では、まだ多くの駐在員が中国へ戻れずにいる。境総経理もその一人だ。「もう遠い昔のような気がします。春節前の時点でSARSの様な問題になるのではないかと考え、最低限の予防措置としてマスクや消毒液の手配をしてから、春節を日本で過ごして2月上旬に上海へ戻りました。」

ところが、2月早々に一度上海へ戻ったのも束の間、中国で感染が拡大する中、日本本社から一時帰国指示が出され、再び日本へ帰国せざるを得なくなる。「3月には上海へ戻るつもりでしたが、入国禁止措置のため戻れなくなり、現在も日本でリモートワーク中です。」

境総経理は当初、日本から現地社員への指示や情報共有の難しさに悩まされたという。「私が日本に居るため、日常の指示や報告はリモートとなり、現場で実際に見ながらの確認、タイムリーな報連相、問題発生の防止など、上海に居れば対面で把握できることが思うようにいきませんでした。しかも日中異文化という要素も関係し、なおさらコントロールの難しさを感じストレスが溜りました。」

そこである工夫をすると、コミュニケーションの問題が改善したと境総経理は語る。「電子メールだけではなく、WeChat、Teams、Zoom等の新しいコミュニケーションツールを活用し、文字だけの指示ではなく声を聞き顔を見ながら会話することを心がけるようにすると、コミュニケーションがより円滑に行えるようになりました。」


この間、現地の社員達はどの様に勤務していたのだろうか。インタビューの際、現地社員を代表して、企画調査部の金美蘭課長と卓牡丹さんにもテレビ会議に参加してもらい話を聞いた。「2月から在宅勤務の形で営業を再開しました。当社は関連会社の支援を主な業務としているので、随時に新型コロナに関する情報発信を行い、境総経理の指導の下、弊社が中国での対策本部となり東京本社対策本部とも連携し、2月~3月にかけて本社からマスクや消毒液を届けてもらうよう手配しました。当時は、原則在宅勤務期間中でしたが、必要に応じて社員が出社し、日本から届いたマスクや消毒液に、本社の西田社長からの励ましの手紙を添えて各工場へ送り届けました。」

「そのほか、上海に戻れなくなった駐在員用マンションの解約手続き、中止となった展示会の対応など通常ではない業務に追われました。また在宅勤務中は、GK(QCサークル)手帳の中国版編集と安全や品質管理書類の翻訳業務など、必要だが普段は手が回らなかった業務を行うことができました。」と金美蘭課長は話した。

この間、境総経理とのコミュニケーションについて、「チャットやビデオ通話方式のコミュニケーションツールがとても役立ちました。境総経理は、どんなに夜遅く連絡しても、すぐに対応して的確な指示をいただけたので、とても心強く感じ安心して業務を進める事ができました。」と金美蘭課長は話した。

卓牡丹さんは、社内報の作成を担当しているが、疫病により大きな影響を受けた。「私は、社内報の編纂を担当しており、毎年4月に発行しています。今年は、疫病の影響で出張取材ができなくなり、その時点で予定の半分しか取材を終えていませんでした。そこで、オンライン等で取材を行う事で、無事に予定通り社内報を刊行できました。」卓牡丹さんは、疫病の流行を言い訳にすることなく、部内メンバーと一緒に予定通り70数ページに及ぶ社内報を完成させた。


上海に居ないこの半年間で感じたことを境総経理に聞いた。「中国人社員は指示待ちであり、言われたことはきちんとやるが、自ら主体的に提案してくることがないと、中国赴任者向けセミナー等でよく聞く話です。日本人赴任者が日本からリモートでしか指示が出せない今は、現場にいる中国人社員が主体的に動かなければ業務は滞ってしまいます。逆に言えば、今回の非常事態は、社員の主体性を伸ばす好機であるとも言えます。そのため、日本にいる上司は現場の状況を正確に把握するために、単に指示命令するだけではなく、的確に質問し、傾聴する姿勢が重要となると思います。

現在行っているリモートワークは、日本人上司の側からみても自身のコーチングスキル向上のチャンスとも言えると思います。一方で、非常事態であっても中国の労働法規にのっとり労務管理をしていくことも不可欠だと思います。コロナ感染流行という特殊な状況に惑わされてしまい、平時と異なる対処方法をしなければならないのかと悩んでいたところに、2月以降中智からタイムリーに送られた防疫措置等のQ&Aや最新情報はとても参考になりました。」







 

◆◆◆ 「新常態」「新日常」に「新ビジネスモデル」を挑戦 ◆◆◆

インタビューの最後に、今後の展望について境総経理に尋ねた。「これからはアフターコロナまたはウィズコロナの時代と言われていますが、これはつまりニューノーマルのことです。ニューノーマル「新常態」という言葉は、中国では規模の拡大によるやみくもな経済成長から、成長の中身を重視した経済成長を期待した用語だったかと思います。今では、新型コロナウイルス感染症の流行により、これまでとは違った「新しい日常」、つまり、コロナに対応した新しい働き方、新しいビジネスのあり方や、それを実現するためのテクノロジーやビジネスモデルを構築することが求められていると思います。中国ではコロナ感染拡大を抑えるためにいち早く自動化、無人化へ取り組み、現在それがさらに加速されています。当然電子回路基板の需要も増えてきて、自動化、無人化のため三井金属の極薄銅箔を必要とするハイエンドの領域も増えるのではないかと予想しています。今回のコロナ禍は、リーマンショック以上の影響があるとか暗いニュースばかりですが、これをピンチと捉えるのか?それよりも大きなチャンスが到来したと捉えるのか?アフターコロナ時代に向けてどのような成長戦略を描けるのか考えていくべきでしょう。コロナがあるからと言ってできない理由を考えるのではなく、できるという前提でいろいろな選択肢を考えていくべきだと思います。」


【感謝の言葉】

境総経理は、8月中旬に上海へ戻ることを予定している。「幸いにも上海市政府から特別招待状をいただき、8月中旬には上海へ復帰できることになりました。格別のご配慮をいただいた上海市政府に対し感謝の気持ちでいっぱいです。早く上海に戻って、バリバリ仕事をしたいです。社員達と会ってたくさん話もしたいです。」現地社員たちも、境総経理の帰りを首を長くして待っている。


【中智からのコメント】

境総経理は、疫病期間中にもかかわらず、中智日本企業倶楽部・智櫻会の経営者インタビューが順調にできたのは、上級会員企業智櫻会会員企業である三井金属の境総経理様のご協力のおかげです。オンライン特別インタビューを通して、上海と東京、心は一つと深く感じました。疫病期間中、境様はいつも中智と密に連絡を取り合い、社員の休暇、社員の安全問題、社員の育児手当の取得、社員研修など、離れていても、常に社員のことを気遣っておられ、今まで以上にローカル社員との信頼関係が深まったことでしょう。8月には半年振りに復帰され、中国国際工業博覧会へ出展の準備や中国各分公司への支援など、境総経理自ら、社員達に檄を飛ばし、奔走する姿が目に浮かびます。

中智は引き続き会員企業とずっと一緒にいます。どんなことが起きても会員企業の中国事業の発展を応援致します。