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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

『鎧侠電子(中国)有限公司 岡本 成之 董事長兼総裁 インタビュー!』2020/10/12

<strong><font style="font-size:19px">~東芝からキオクシアへ~ </font></strong>

~東芝からキオクシアへ~

<strong><font style="font-size:19px">ニューノーマル時代の半導体業界の動向と働き方 </font></strong>

ニューノーマル時代の半導体業界の動向と働き方

<strong><font style="font-size:19px">——鎧侠電子(中国)有限公司 岡本 成之 氏</font></strong>

——鎧侠電子(中国)有限公司 岡本 成之 氏


 

鎧侠電子(中国)有限公司

 岡本 成之 董事長兼総裁

 

1987年同志社大学経済学部卒業後、同年(株)東芝に入社。入社後は半導体事業本部に配属され、国内営業を10年間務める。97年に本社システムLSIマーケティング部門、07年には 東芝電子台湾社の副総経理に就任、13年から同法人の董事長兼総経理に就任する。17年に東芝電子(中国)の董事長に就任、東芝グループからの独立にともない20年4月から鎧侠電子(中国)及び鎧侠亜州(香港法人)の董事長兼総裁に就任し現在に至る。

 

◆◆◆ フラッシュメモリ世界2位のシェアを誇るキオクシア ◆◆◆


 

鎧侠電子(中国)有限公司の日本本社にあたるキオクシア株式会社は、2018年に東芝の半導体メモリ部門が独立し、19年に現在の社名に変更する。同社は1987年にNAND型フラッシュメモリを世界で初めて開発して以来、現在まで世界のフラッシュメモリ業界をリードしてきた。同社は日本最大の半導体メーカーであり、NAND型フラッシュメモリでは世界シェア2位を誇る。

キオクシアの名前の由来について、「日本語の「記憶=KIOKU」とギリシャ語で価値を意味する「AXIA(アクシア)」に由来しています。「記憶」で世界を面白くするというミッションを掲げ、記憶の可能性を追求し、新しい価値を作り出していきたい、という願いが込められています」と岡本総裁は説明してくれた。

 

◆◆◆ 顧客の98%が中国の大手メーカー ◆◆◆

中国への本格的な進出は、96年に上海で東芝の半導体子会社を設立したことに始まり、2002年に現在の鎧侠電子(中国)の前身となる東芝電子(上海)が設立された。

中国の業務内容について、「当社の業務はキオクシア製品の中国における販売活動を中心としていますが、他にも中国における製造支援業務や調達活動なども行っています。当社の製品はスマートフォン、データセンター、PC、テレビ、そして車載など多岐にわたって使用されています」と岡本総裁は説明してくれた。

短期的には新型コロナの影響を受けたものの、中長期的には成長市場だと岡本総裁はいう。「新型コロナの影響も含め、ウェブを使った会議・授業・医療・ゲームなどオンラインビジネスは急成長しており、データセンター・サーバー向けの需要は今後も更に増えていきます。加えて、5Gサービスの普及に伴いメモリ搭載容量の増加が期待され、成長トレンドは変わりません」。

そして同社の取引先のほとんどが中国企業だと岡本総裁は話す。「当社のお客様の約98%は中国企業であり、様々な中国電子業界の大手企業様とのお取引があります」。


 

◆◆◆ 社員の安全を第一に、慎重に営業を再開 ◆◆◆

年初から新型コロナが流行する中、上海では2月10日から営業再開の認可を取得した。「当社は2月10日から営業を再開しましたが、従業員の安全を最優先に考え、在宅勤務を徹底しました。勤務再開については日本本社と何度も議論を重ねましたが、結果的に在宅勤務は4月末まで続けました」と岡本総裁は話す。

在宅勤務中の社員間のコミュニケーションについて、「とにかくウェブ会議を頻繁に行っていました。管理層、各部門内など、毎日時間を決めて打ち合わせを実施し、在宅勤務によるコミュニケーション不足を補っていました」。しかし当初は苦労も多かったという。「在宅勤務を始めた2月時点ではIT環境が整っておらずストレスを感じる事が多かったのですが、IT部門の努力により環境は日を追うごとに改善し、4月にはかなり快適に在宅勤務ができるようになりました。販売会社ですので、それまでは対面での打ち合わせがビジネスの基本でしたが、IT環境が充実していれば在宅勤務でもカバー出来る業務が非常に多い事を実感しました。」

 

◆◆◆ 社員とのコミュニケーションを重視 ◆◆◆

岡本総裁は、東芝に入社してからこれまで半導体一筋でやってきた。2007年に台湾へ副総経理として赴任するまでは、一貫して国内営業をメインにしてきた。「自分自身は国内営業の専門家とのイメージが強かったのですが、気がつくといつの間にか台湾・上海・香港など海外で働いている期間が13年半にもなっていました」と岡本総裁はいう。

社内公用語は英語だが、13年間中華圏で働いてきた岡本総裁は中国語も堪能だ。「お客様と会食をする際には、すべて中国語で会話をしています。勿論、ビジネス上の複雑な交渉が行える様なレベルではありませんが、簡単なプレゼンテーション程度でしたら中国語で行う様にしています」。

外国人社員と円滑に業務を進めるには、コミュニケーションが重要だと岡本総裁は話す。「3年半前の上海赴任時には、当時400名近くいた全社員の顔と名前を2週間近くで覚えました。残業している社員に声をかけたり、エレベーター内で会社フロアのボタンを押す人がいれば話しかけたり、全員の顔をなるべく早く覚えられる様に努力をしていました」。


 

現在でも、社員一人ひとりとのコミュニケーションを徹底している。「人と人とのつながりを大切にする中国社会ですので、幹部社員であれ新入社員であれ、直接会話は非常に重要と考えています。会議での議論は勿論、それ以外にも少人数での対話会を積極的に行っており、北京や深圳は勿論の事、青島、成都、杭州といった各地の分公司も定期的に訪問しています。社員達の声を直接聞く事で、こちらからアドバイスするだけではなく、逆に社員達から学ぶ事も多くあります」。

社員とのコミュニケーションにおいては、良い話だけではなく、嫌な話を聞く事も重視していると岡本総裁は話す。「従業員代表大会などでは会社に対する厳しい要求もたくさん出てきますが、一方的に排除する事なく誠実に耳を傾け、誠実に検討をするようにしています。その結果として出来る事も出来ない事もある訳ですが、どのような結果であっても誠意をもって説明する様に心がけています」。

 

◆◆◆ 中国は人材の宝庫、採用より定着率の向上が課題 ◆◆◆

半導体業界は人材の需要が高く、同社では人材安定のために様々な取り組みを行っている。「中国は優秀な人材の宝庫ですので、採用については大きな困難は感じていません。むしろ課題は定着率です。半導体分野でも特に当社が取り扱うNAND型フラッシュメモリの競合は、欧米企業や韓国企業ですので、これらの企業に見劣りしない待遇が求められます。したがって、従来の日本的な給与体系にとらわれず、能力が反映され易い報酬制度、表彰、インセンティブ制度など、本社と連携しながら様々な仕組み作りに取り組んでいます」。本社幹部が業界の実態や中国の状況をよく理解してくれていることが大きな助けになっている、と岡本総裁は言う。


駐在員様のボランティアによる無料日本語教室

また同社は福利厚生の充実にも力を入れている。「社員達が子育てや介護をしながらでも安心して働ける様、勤務時間を設定が出来る制度を設けています。今後は新型コロナでの経験も踏まえ、更にフレキシブルな働き方が出来る様に制度改革を進めていきたいと考えています。また、駐在員がボランティアで講師を務める無料の日本語教室も非常に好評です。今後も引き続き福利厚生の充実につとめたいと考えています」。


移転したばかりの深圳 新事務所

 

◆◆◆ キオクシアを中国で愛されるブランドに育てたい ◆◆◆

最後に、キオクシアとして新たな船出への抱負を岡本総裁に尋ねた。「我々中国現地法人の存在価値は、本社の打ち出す戦略や方針を中国でいかに具現化していくかであり、また中国市場におけるセンサーとして正しい情報を把握し日本本社に発信していく事だと考えています。中国市場は中長期的に有望な成長市場です。ここ中国では東芝ブランドはとても知名度があり、長年にわたり皆様に愛されています。しかし、新しくスタートを切ったばかりの我々キオクシアは知名度の点では東芝時代と全く違います。これからは、キオクシアというブランドを中国の皆様に信頼され愛されるブランドに育てあげることが我々の重要な使命だと考えています」。


P&I展にKIOXIA様のブランドとして初の出展

【中智からの感想】

半導体業界は有望な成長産業であり、人材獲得競争の激しい業界です。優秀な人材に定着してもらうため、いかに働きやすい環境を整え、従業員満足度を向上させるかが会社の経営に直結します。キオクシア様へのインタビューでは、従業員の満足度アップのための多くのユニークな取り組みを紹介していただきました。その中でも、日本人駐在員が講師となる日本語教室が印象的でした。この活動は社員達から大変好評で、毎回教室が満室になるそうです。日本語の勉強だけではなく、駐在員と現地社員との貴重なコミュニケーションの場にもなる素晴らしい取り組みだと思いました。駐在員と現地社員の垣根を取り払い、互いの信頼感を築くことは多くの外資企業にとっての課題であり、円滑な人事管理に不可欠です。


中智との記念撮影