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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

『大金空調(上海)有限公司 乾 浩史 董事総経理 インタビュー!』2020/12/28

<strong><font style="font-size:19px">独自の人材育成システムで開発から生産まで現地での自立経営を実現 </font></strong>

独自の人材育成システムで開発から生産まで現地での自立経営を実現

<strong><font style="font-size:19px">——大金空調(上海)有限公司 董事総経理 乾 浩史 氏</font></strong>

——大金空調(上海)有限公司 董事総経理 乾 浩史 氏


 

大金空調(上海)有限公司
董事総経理 乾 浩史 氏

 

1989年に同志社大学卒業後、ダイキン工業株式会社へ入社。入社後は金岡工場に配属され、生産技術者として主に部品の加工ラインを担当する。2006年に大金空調(上海)有限公司に生産技術部長として赴任。11年に同社副総経理、18年に総経理に就任し現在に至る。

 

◆◆◆ 95年の進出当初から中国市場をターゲットに定める ◆◆◆

本格的なグローバル展開を目的として、95年に中国で初めての生産拠点として、現在の大金空調(上海)有限公司が設立され、ダイキンの中国事業が本格的にスタートする。

空調関連の日系メーカーの中では中国進出が最も遅い方だったが、それには理由があったと乾総経理は語る。「当時、多くの企業が世界の工場として、安い労働力を求めて中国へ進出していました。しかし当社は、市場ニーズがある場所で生産するという『市場最寄化生産戦略』をとっており、中国の消費者に貢献することを方針として、最初から中国市場向け製品の生産を目的に上海で工場を設立しました」。それ以来、ダイキンはグローバル企業として成長を続けており、現在では海外での売上高は全体の8割を超え、そのうち中国市場がもっとも事業貢献が大きい。



 

◆◆◆ 世界同一大金品質の実現に向け、「道場」で技術者を育成 ◆◆◆

ダイキンは、積極的にモノづくりを支える技能者の育成に取り組んでいる。「世界同一大金品質の実現に向け、中国でも日本と同様に技術の継承や育成に取り組んでいます。教育の場として『道場』を整備し、認定トレーナーによる評価を経て、従業員を技能者から卓越技能者までの5階層に分けて評価しています。卓越技能者の前段階である高度熟練技能者になると、部下を指導することが認められ、そのため日本の専用研修所で研修を受け指導力の評価が行われます」卓越技能者になるには10年は要すると乾総経理は話す。

「以前は、工場内に新しいラインを立ち上げる際には、日本から技術者の支援を仰いでいましたが、今では日本からの技術者に頼らなくても、中国の技術者だけで対応できるようになりました」と誇らしげに乾総経理は語る。



 

◆◆◆ あえて制度を固く作らず、その時々に適した人材を管理職に登用 ◆◆◆

技術者だけではなく、管理職の現地化も着実に進んでいる。「現在、大金空調(上海)には約2300名の従業員が在籍しています。そのうち日本人駐在員は董事長や総経理等7名のみで、副総経理以下の経営層及び管理職は、ほぼ中国人社員が務めています」と乾総経理は説明しながら、沈継紅副総経理を紹介してくれた。

沈副総経理は、工場の立ち上げ間もない96年にワーカーとして同社に入社し、その後の努力と能力が認められ昇進を重ねる。2011年には副総経理に就任し、現在は乾総経理の右腕として主に人事総務部門を支えている。

それではどの様にして管理職を選抜しているのかを乾総経理に尋ねた。「実は、当社では管理職試験がありません。時代に応じて必要とされる人材は変化します。ところが制度を作ってしまうと、固定化されてしまい柔軟な対応が出来なくなってしまいます。ずっと同じ評価基準では企業は成長しないと当社は考えており、あえて管理職への昇進試験を設けていません」と乾総経理はその理由を説明する。



 

◆◆◆ コストだけでは語れない「made in 上海」の価値 ◆◆◆

毎年のように上昇を続けるコストとワーカー不足が深刻化する中、上海で製造業を続けることは容易ではない。「よりコストの安い地域へ移転するという考え方もありますが、コストの高い上海で生産し続ける事ができるのは、それ自体価値ある事だと思います。我々は『made in上海』に誇りを持ち、守り続けたいと考えています」と乾総経理は話す。

コストや環境規制の厳しい上海から、多くの製造業が移転を計画しています。しかしその難しい課題から逃げず、匠の精神で上海製造を守り続ける同社の姿勢に感動しました。

生産現場の人材確保に関しては、「地方の専門学校と提携してダイキンクラスを作り、事前に企業文化や職業訓練を行う事で、必要な人材を確保しています」と乾総経理は話す。

同社は、上海市品質金賞、全国品質信用先進企業、閔行区経済突出貢献企業など、毎年多くの表彰を受けている。



 

◆◆◆ 率直に話し合い、価値観を合わせなければ良い結果は生まれない ◆◆◆

長年中国人社員と仕事をする中で意識していることを、乾総経理に尋ねた。「部下に対しては、言葉の表現に気をつけています。例えば、頭ごなしにこれが悪いと叱っても、相手は聞く耳を持たなくなります。それに対し、『私はこの事で困っています。あなたの力が必要なのです』と言えば、聞く気になるでしょう。表現を変えるだけで相手の受け止め方は180°変わります」

乾総経理の部下に対する接し方について、沈副総経理はとにかく部下の話をよく聞いてくれると話す。これについて乾総経理は、「マネージャーとして仕事で結果を出すにはどうすれば良いかを考えると、部下に気持ちよく仕事をしてもらう方が良い結果が出るに決まっています。そこで部下の話をよく聞くようにしており、私も言いたい事があれば率直に話すようにしています。率直に話し合い、お互いの価値観を合わせなければ良い結果は生まれません」と話す。

最後に、今後の抱負について乾総経理に尋ねた。「コストが上昇する中で、より少人数で<生産能力>を上げることが求められています。そのためには、工場の<自働化>を一層進めるとともに、社員の育成にも力を入れて参ります。社員達には、自ら課題を考え、発見し、解決できる人材に成長し、将来は中国国内だけではなく、世界中の工場を支援し活躍してくれる事を願っています」


中智からの感想:近年、コストの高い上海から地方都市へ工場を移転する企業が少なくありません。その様な中でも、上海製造にこだわり続ける日系企業があります。  今回インタビューを行った大金空調(上海)様もそのうちの一社です。
乾総経理は、インタビューの中で「企業は利益の追求だけではなく、地域社会に貢献するという重要な使命がある」と述べられました。同社は、中国人技術者に対しても惜しみなく最新技術を教え、今では日本人技術者に劣らない中国人技術者が数多く育っています。また、積極的に障害者を雇用するだけではなく、健常者の従業員と同じ様に働き、同一労働同一賃金を実現しています。さらには地域の方や取引先の関係者を招き、夏には納涼祭、年末にはコンサートを開催し、地域社会に多大な貢献をされています。