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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

『徳碩管理咨詢(上海)有限公司 中野 洋輔 董事長兼総経理 インタビュー!』2021/6/29

<strong><font style="font-size:19px">事業改革を成功に導くには、現地社員の協力が不可欠 </font></strong>

事業改革を成功に導くには、現地社員の協力が不可欠

<strong><font style="font-size:19px">——徳碩管理咨詢(上海)有限公司 董事長兼総経理 中野 洋輔 氏</font></strong>

——徳碩管理咨詢(上海)有限公司 董事長兼総経理 中野 洋輔 氏


 
徳碩管理咨詢(上海)有限公司
董事長兼総経理 中野 洋輔 氏

 

慶應義塾大学経済学部卒。公認会計士二次試験合格後、アビームコンサルティングに入社。入社後は、製造業の他、金融・流通・公共機関などにおいて、財務会計・管理会計・連結会計に関する業務改革、システム構築、ERP導入に関するコンサルティングならびにプロジェクトリーダー、プロジェクト総責任者としての実績を多数持つ。2015年に徳碩管理咨詢(上海)有限公司の董事長兼総経理に就任し、事業改革を実施し業績を改善させる。現在、大中華区の責任者として艾宾信息技術開発(上海)有限公司など子会社8社の董事長及び総経理を兼務する。

 

◆◆◆ 日本発のグローバル・コンサルティングファーム ◆◆◆

アビームコンサルティングの前身は、世界四大会計事務所のひとつ、デロイト トウシュ トーマツ(監査法人トーマツ)傘下のコンサルティング会社として誕生した。その後、2003年に独立し、社名を現在のアビームコンサルティング株式会社に変更する。

「アビームコンサルティングは、創業以来、約40年間にわたり、日本発、アジア発のグローバルコンサルティング会社として、お客様の変革実現への挑戦を、経営戦略立案から、戦略実現のための業務コンサルティング、IT導入・運用までの一気通貫のサービス提供を通じご支援しています」と中野大中華区董事長兼総経理(以下、董事長)は日本本社の事業内容について説明してくれた。

 

◆◆◆ 自社の特徴を活かしたマーケティング戦略で業績を立て直す ◆◆◆

徳碩管理咨詢(上海)有限公司は2004年に上海で設立され、コンサルティング業務を柱にローカル企業を中心に開拓し、順調に業積を伸ばしてきた。しかし、コスト競争の激化から不採算案件やサービス品質の低下が生じ、しだいに収益性が悪化する。「15年に私が董事長兼総経理として赴任した当時、中国法人は米国に次ぐ大きな赤字を出しており、中国事業の立て直しが急務でした」

日本本社は事業改革に大ナタを振るう。その後を受けて中国事業のトップに就任した中野董事長は当時を振り返りこう話す。「当時コンサルティング部門だけで約250人の従業員がいましたが、これを100人以下まで削減しました。同時に、これまでローカル企業に偏っていた顧客層を見直し、まずは日系企業を中心にリスタートを図ることにしました」

日系コンサルティングファームであり、多くの日系企業の顧客を抱える同社であるが、当時、中国で事業を展開していることを知らない日系企業は少なくなかったという。

「非日系ビジネスでは、ローカル系を含む多くのコンサルティングファームと競合しますが、日系企業向けのビジネスは競合が少なく、日系コンサルティングファームとしての当社の特徴が、他社との差別する要因として活かせるのではないかと考えました」と中野董事長は話す。

「そこで、日本人ビジネスマンがよく利用する上海虹橋国際空港に大型看板を掲載するなど、日系企業への認知度を高めるための積極的なマーケティングを展開しました」これらの取り組みが実を結び、日系企業からの引き合いが増加、わずか2年という短期間で黒字化を達成する。

「現在、社内的には『One China, One ABeam』を掲げて、大中華圏でのグループ間での整合を取る戦略をベースに成長を継続しています。中国には、德硕と艾宾という二つの名前の会社が混在している事もあり、以前は同じクライアントに競合として提案したり、同じ人材を獲り合ったりといった、可笑しな事が横行していました。現在は、大中華圏を見据えた経営体制の元、アビームグループとしてのビジネス展開を可能としています。」

また、同社はESG活動を経営戦略の重要な軸に位置づけ、積極的に推進している。「当社では、ESGを経営活動の一環として捉え、お客様のグローバルな成長や、より良い地域社会・地球環境の実現に貢献し、持続可能な社会を構築するため、積極的なCSR 活動を推進しています。さらに、社員一人ひとりがビジネスの上でのアスリートのように活動していこうという『ABeam Business Athlete』というコンセプトのもと、社会課題を自分の事としてとらえ持続可能な社会実現に貢献するための意識改革を行う取り組みを始めています」


 

◆◆◆ 日本人とは異なる中国人の会社観、家族観を理解する ◆◆◆

中野董事長は、公認会計士二次試験合格後、アビームコンサルティングに入社する。「入社後は、主に会計領域を中心にコンサルタントとして活動し、早い時期からプロジェクトのマネジメントを担当し、大規模プロジェクトも手掛けてきました。中国へ赴任する前は、会計部門のリーダーとして、多いときは900人の部隊を率いて業務を行っていました」と中野董事長は語る。

その後、経営不振の中国事業を立て直すため、中野董事長が数名の日本人と共に中国へ赴任する。

「事業改革を成功に導くには、現地社員の協力が不可欠です。そのため、日本人だけで仕事をしていると思われないように気を遣いました。例えば、毎日のように中国人社員たちと会話をしたり、食事をしたり、できるだけオープンに接することで、皆さんと一緒に会社を立て直すのだという姿勢を示しました」

現地社員とのコミュニケーションは大切だが、リーダーの話す言葉が現地社員の心に刺さらなければ意味をなさない。「中国へ赴任して感じているのは、中国人の会社に対する概念、家族や個人との関係性や距離感が日本人とは異なっており、この会社で働くことの意味や目的を共有するためには、日本人に対するものとは異なる話し方をする必要があるということです」と中野董事長はいう。


 

◆◆◆ 中国のスピード感に遅れることなく、我々自身も成長し、変革を遂げる ◆◆◆

インタビューの最後に、今後の中国ビジネスの展望を中野董事長に尋ねた。「中国は、アビームの重要な拠点、成長を支える拠点であり続けたい。中国のマーケットにおいてもさらに、今まで以上に存在感を示せるようになっていきたい。”Client Centric”(クライアントを思う心) は当社のコアバリューの一つです。クライアントが企業変革、成長を遂げていくため、我々は最良な道を考え、的確にサポートし、実現可能なソリューションを提供してまいります。そのためには、中国のスピード感に遅れることなく、我々自身も成長し、変革を遂げ、変化するクライアントのニーズに、いつも応えられるようにしていかなければなりません。今後中国において、更に進化したDX(Digital Transformation)のニーズが増えていくと思われ、我々はそれを実現するソリューションを提供していきたいと思います」


中智の感想:

日本品質×中国スピード…知的で実務的な中野董事長は、自らの言葉とハードワークで中国グループの複数の企業とそこで働く従業員を率いて、ともに発展してこられました。暖かなオフィスの雰囲気と従業員の心からの笑顔に、皆さんの中野董事長に対する尊敬の気持ちが感じられました。

徳碩管理咨詢(上海)は2004年に中国へ進出した際、主にローカル企業を顧客として業績を伸ばしてきました。ところが市場環境の変化から徐々に収益が悪化します。経営立て直しのため、2015年に中野董事長は、本社から数名の日本人と共に赴任しました。その際、日本人だけではなく、現地の事情をよく理解する中国人社員と一緒に事業改革を進めたことが、短期間での経営立て直しに成功した重要な要因であると感じました。中国スピードの下では、ビジネス環境は常に変化しています。企業も常に、それに合わせたビジネスモデルや人材、人事制度の変革が求められています。