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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

『横河測量技術(上海)有限公司 折橋 朋幸 董事総経理 インタビュー!』2021/6/29

<strong><font style="font-size:19px">計測機器で中国製造の品質を支える </font></strong>

計測機器で中国製造の品質を支える

<strong><font style="font-size:19px">——横河測量技術(上海)有限公司 折橋 朋幸 董事総経理 氏</font></strong>

——横河測量技術(上海)有限公司 折橋 朋幸 董事総経理 氏


 
横河測量技術(上海)有限公司
董事総経理 折橋 朋幸 氏

 

1987年に慶應義塾大学経済学部を卒業後、横河電機株式会社へ入社。入社後は主に測量機器の国内営業を担当する。大阪、横浜等での勤務を経て2019年に横河測量技術(上海)有限公司の董事総経理に就任し現在に至る。

 

◆◆◆ 顧客の9割が中国企業、中国製品の品質向上に貢献 ◆◆◆

日本本社である横河計測株式会社は、YOKOGAWAグループにおける計測事業の中核会社として1954年に設立され、計測ビジネスを展開している。

「1915年に計測機器の国産化のために設立された横河電機製作所(現在の横河電機)がYOKOGAWAグループのルーツであり、計測事業は、100年以上の歴史を有します」と折橋董事総経理は話す。

現在、グループの中核企業である横河電機では、世界60カ国でビジネスを展開しており、1万7000人以上の従業員が働いている。

現地法人である横河測量技術(上海)有限公司は、2000年8月に設立され、昨年設立20周年を迎えた。「当社は計測機器というニッチな分野でビジネスを展開しており、主に企業の研究開発部門や品質保証部門、生産技術部門等で使用していただいています」と折橋董事総経理は話す。

現在、同社の顧客の9割は中国企業である。中国企業は価格に対する要求が厳しいと言われている。しかし、折橋総経理は、中国企業は決断が速いこともあり、自然に割合が増えてきたという。「計測機器は製品の品質を左右する非常に重要な機器であり、価格が高くても高品質な製品を選ばれるように思います」横河の精確な計測機器が中国製造を縁の下で支えている。

疫病の流行によるビジネスへの影響について「中国では政府の適切な対応のおかげで、疫病の流行が早期に収束し、幸いにも事業への大きな悪影響は受けませんでした。現在は、光通信や再生可能エネルギー、EV等の分野への投資が拡大していることから、当社の製品もプラスの影響を受けています」と、折橋董事総経理は話す。

今回の疫病流行を経験し、BCPの整備が今後の課題であると折橋董事総経理はいう。「これまで、日本本社のBCPを参考にしていましたが、日本本社のBCPは、主に大規模地震や台風等を想定しており、必ずしも中国の状況にあっているとはいえず、ましてや今回のような疫病流行は想定外でした。今後は、疫病の流行も想定した中国の状況に合うBCPの策定を検討する必要があると考えています」

YOKOGAWAグループでは、中国においてもCSR活動へ積極的に取り組んでいる。「これまでグループをあげて、貧困地域の学生への寄付や、中国計量事業への貢献活動として中国計量科学研究院(NIM)、中国測試技術研究院(NIMTT)に対する計測機器の寄贈等を実施してきました。また、横河電機は、蘇州に初めて進出した日系企業として、日系企業の交流の場である蘇州日商倶楽部の設立や、在上海日本国総領事館および蘇州政府と共同で蘇州日本人学校の前身となる補習校を設立し、日本人が家族帯同で赴任しやすい環境を整備するなど、日中友好関係構築と在蘇州日系企業のビジネス環境改善に尽くしてきました」と、折橋董事総経理は話す。


 

◆◆◆ 一般的に知られていないBtoB企業が、如何に優秀な新卒生を確保する ◆◆◆

折橋董事総経理は大学を卒業後、横河電機株式会社へ入社し、入社後は一貫して国内営業を担当してきた。「中国へ赴任するまでは、ずっと日本国内の営業を担当しており、中国へは出張で年に2、3回訪れる程度でした」

中国へ赴任して「ビジネス環境の変化のスピード、企業の決断のスピードに驚かされました。政府が5ヶ年計画を立て、計画に沿った投資を行い必ず実現するため、企業は迷うことなく素早い経営判断ができるのだと思います」と、折橋董事総経理は話す。

人財面において、優秀な若手人財の確保が課題であると、折橋董事総経理は話す。「中国は優秀な人財が多く、当社には清華大学や上海交通大学等の一流大学出身者も在籍しています。この様な優秀な人財は、転職の際に当社を選んでくれる場合は多いのですが、優秀な新卒生の採用が難しく感じています」

これについて、企業の学生採用を支援している中智預材網の管堃最高マーケティング責任者はこう話す。「在中日系企業はBtoB企業が比較的多く、世界的な優良企業であっても、学生の間での知名度があまり高いとは言えません。例えば、智櫻会会員企業のある日系優良医療機器メーカーでは、優秀な学生を採用するため、北京大学、清華大学、復旦大学、上海交通大学等で企業説明会を開催したり、大学の研究室と提携したりしています。そのほか、大学の教授を講演に招き交流を深めるのも良いでしょう」

同社の人事アウトソーシング業務を担当する鄭豈凡センター経理からは、中智のサービスに対する要望を尋ねた。

それに対し、折橋董事総経理は、人事管理の面で非常によくサポートしてもらい、従業員の満足度が高く感謝していると話し、今後の要望として、「継続的な新人管理職研修は、自社で行う事が難しく、この方面でのサポートが得られるとありがたい」と語った。


 

◆◆◆ 十四五計画にマッチした経営戦略で更なるビジネス発展を目指す ◆◆◆

インタビューの最後に、今後の中国ビジネスの展望を尋ねた。「YOKOGAWAグループでは、15年に国連でSDGsが採択されたことを受け、サステナビリティ目標を設定し、未来世代のより豊かな人間社会のために「Net-zero Emissions」「Well-being」「Circular Economy」を3つのゴールとしました。そして、今年はちょうど中期経営計画をまとめる年にあたり、3つのゴールの実現に向けた取り組みを意識した計画を策定しました。中国における計測ビジネスにおいても、3つのゴールを意識し、電気自動車等のカーボンニュートラルに関係するセグメント、光通信などのコミュニケーションに関係するセグメント、そして健康と福祉に関係するセグメントに重点を置いて取り組んでまいります。これは、十四五計画(第14次五カ年計画)により策定された、中国が小康社会を全面的に完成させ、1番目の百年奮闘目標を実現させた後、社会主義現代化国家の全面的建設を目指すという新たな目標とも一致していると考えています」


中智の感想:折橋董事総経理は、インタビューの中で、「当社はその設立以来、現地社員が経営の中心を担う企業文化を育ててきた」と述べられました。現在、同社の現地化は順調に進展しており、115名の従業員のうち、日本人駐在員は折橋董事総経理を含め2名のみで、既に経営の中心を中国人社員が担っています。そのおかげで、コロナ流行下でも経営管理面への悪影響を最小限に止めることができました。

また、中国ビジネスにおいては、中央政府の方針を正しく理解し、それに沿った経営計画を策定することの大切さを強調していたのが印象に残りました。

今回の折橋董事総経理へのインタビューは、計測機器の生産、開発拠点である横河電機(蘇州)有限公司にて行いました。インタビューの後、同工場で日本式の効率的な生産現場を見学し、隣接する展示エリア内の横河ショールームでは、社員の方から製品の特徴と役割について解説していただきました。最後に、今回のインタビューと工場見学にご協力いただいた横河電機(蘇州)有限公司の皆様にお礼申し上げます。